鈴木 秀世 氏|フリーランスエンジニア
製造業・保険・エンタメ・物流・中古車業界など、幅広い分野での開発経験を持つエンジニア。主にC#を中心に設計から実装・保守までを一貫して担い、クラウドやDB(Oracle・MySQL・SQL Server)にも精通。丁寧で着実な開発スタイルと、リモート環境でも信頼される対応力が特長。現在は本業に加え、AIやPythonを活用した個人開発にも取り組みながら、副業領域での可能性も模索している。
鈴木さんのキャリアについて
「弁護士志望」から「エンジニア」へ──挑戦の末に見つけた自分のフィールド
── まずは、エンジニアとしてのご経歴について伺えますか?
エンジニア歴は15年になります。フリーランスとしては4年ほど活動しています。
── ありがとうございます。ここからは少し遡って、エンジニアになるまでのご経歴をお伺いしたいと思います。大学以前のことも含めて、どのようなキャリアの変遷を辿られてきたのでしょうか?
ちょっと人と違うのは、大学に入るまでに4年間浪人しているんです。中央大学の法学部に進学し、弁護士を目指していました。学部時代は司法試験の勉強に集中していて、正直なところ授業は必要最低限でなんとか単位を取って卒業したという感じです。
卒業後も試験には合格できず、制度が変わって法科大学院が設置されたタイミングで、そちらにも進学しました。ただ、精神的にも体力的にもかなり消耗していて、最終的には中退しました。
── 目指していた弁護士の道を離れる決断は、非常に大きかったのではないでしょうか。
はい。当時は本当に燃え尽きてしまって、目標を失ったような状態でした。一時は鬱っぽくなってしまい、短期のアルバイトをしながら、少しずつ社会復帰していきました。そして、29歳のときに最初の就職先であるテクセル株式会社に入社したんです。
── そこがエンジニアとしてのキャリアのスタートだったのですね。
実は、その会社は父が経営していた会社で、もともと私を法務担当として採用するつもりだったようです。でも入社してみると、IT事業部のトップの方から「ソフトウェアをやらせたい」と言われまして。正直まったく予期していなかったんですが、気づいたらプログラミングを教わって、簡単な電卓アプリのようなものをつくるところから始まりました。
── エンジニアリングに対して、もともと関心があったわけではなかったのですね。
全くなかったです。家庭内でもITやプログラミングの話題は一切ありませんでした。父もIT技術者ではなく経営者という立場だったので。
── 実際にプログラミングに取り組んでみて、いかがでしたか?
意外と自分に合っているなと感じました。頭の中で構造を組み立てて、それをコードに落とし込んで実行してみる。その繰り返しが楽しかったんです。熱中できるものに出会えたという感覚でした。
── その後、ネクストウィン株式会社に転職されていますね。
はい。テクセルには5年ほど在籍していたんですが、やはり父の会社ということで、社内外からも気を遣われている感覚がありました。このままでは自分自身が成長できないと感じて、思い切って父に転職の意思を伝えました。
── 転職先としてネクストウィンを選んだ決め手は何だったのでしょう?
ハローワークでいろいろな求人を見たのですが、ネクストウィンは「こういう人材を求めています」という内容ではなく、「こういう職場です」という会社紹介が丁寧に書かれていて、信頼感がありました。それが決め手になって面接を受け、入社を決めました。
── 実際に入ってみて、いかがでしたか?
社員8人ほどの小さな会社で、みんな仲が良くて雰囲気も良かったですね。初めて数十人規模のプロジェクトに参加したのもこの会社でした。保険会社向けのシステムだったので、ドキュメント管理や進め方もすごくしっかりしていて、これが世の中の“ちゃんとしたプロジェクト”なんだなと実感しました。とても勉強になりましたし、今のフリーランスとしての土台にもなっています。
そして、フリーランスへの挑戦
── フリーランスへの転向はどのような背景からだったのでしょうか?
理由は大きく2つあります。1つ目は、単純に報酬を上げたかったこと。周囲の話を聞いていて、フリーランスであれば収入アップが期待できると知ったのがきっかけです。2つ目は、当時の会社では長年の取引先との案件が多く、自分の伸ばしたいスキルやキャリアの方向性とマッチしないこともありました。もっと選択肢を広げたくて、フリーランスという道を選びました。
── 実際にフリーランスとしてのキャリアは、どのようなスタートだったのでしょうか?
まずはSES会社に相談して、紹介されたカラオケ業者向けのC#のシステム開発に参画しました。そこに2年ほど関わっていましたね。
── フリーランスとして働いてみて、いかがでしたか?
初月から報酬が大幅にアップして、「もっと早く動いておけばよかったな」と思いました。感覚的には前職の2倍くらいになったと思います。収入面での安心感があると、心理的にもかなり楽になりました。
ハード/ソフト面に関する質問
── ここからは少しハードスキル・ソフトスキルやご趣味の部分も伺っていきたいと思います。まずは、仕事以外での趣味・関心について何かありますか?
趣味と呼べるものは、少し前までスキューバダイビングをやっていました。1年くらい集中して取り組んでいた時期があって、月1ぐらいで潜りに行っていました。
── おお、本格的ですね。どういったきっかけだったのでしょう?
子供の頃からNHKの自然系ドキュメンタリーが好きで、特に海の中に潜って撮影するような映像をよく観ていたんです。そういうダイバーに憧れがあって、大人になって少し余裕が出てきたタイミングで、「そうだ、やってみよう」と思い始めました。実際にやってみたら本当に面白くて、非日常の世界に没入できる感じが最高でしたね。
── 最近はどうですか?
今は少し趣味が変わって、ヨガを始めました。心身のバランスを整えるために通い始めて、今はときどき瞑想会にも参加しています。
── 瞑想。難しくないですか?
最初は難しかったですが、呼吸法や体を使ったポーズから少しずつ慣れていきました。続けていくうちに、「あ、これは効くな」って実感できる瞬間が増えてきて。疲労感が解けていくような感じがあって、そのまま寝てしまうと、翌日ものすごくスッキリしているんですよ。
── なるほど、他にも関心のあることはありますか?
高校時代はラグビー部に所属していたんですけど、今はプレイはしないものの、プロラグビーの観戦だけはずっと続けています。
── では、業務に関連する技術領域での興味関心についても教えていただけますか?
これまで10年ほどC#をメインにキャリアを積んできたんですが、最近はより先進的な技術にも興味があって、Python、Next.js、TypeScriptなどにも手を出しています。特にAIを組み込んだアプリケーションなどには関心がありますね。
── 具体的に、最近はどんな個人開発をされているんでしょうか?
最近は、AIを活用した株の自動売買Botを開発しています。海外の証券会社で仮想口座を開設して、PythonでAPIを叩いて自動売買を行う仕組みを構築しました。売買の判断も自動化して、GitHubのActionsで定期実行し、その結果をGoogleスプレッドシートに記録しています。さらに、毎朝8時にSlack通知が届くようにもしています。
── かなり本格的ですね!株取引はもともとやられていたんですか?
いえ、実は全然やっていなかったんです(笑)。ただ、「こういうものがあったら便利だな」というイメージがあって、学習目的も兼ねて開発しました。今は仮想口座でシミュレーション取引をしながらBotの精度を確かめている段階です。
── では、ここからは技術面や業務姿勢について少し掘り下げて伺っていきたいと思います。まずは、得意とされている技術領域や業界について教えてください。
技術的には、C#が最も経験が長く、メインスキルと言えると思います。それに加えて、Oracle、SQL、MySQLなどのデータベースも一貫して触ってきました。
業界で言うと、最も長く関わったのは保険業界ですね。プロジェクトの規模も大きく、継続的に参画していた期間が長かったです。
また、自分自身の特性としては、構造を組み立てるような思考が得意なので、要件定義も多少はありますが、設計以降のフェーズを任されることが多く、そこに強みを感じています。
── プロジェクトを進める際に意識していることやこだわっている点があれば教えてください。
やはり認識合わせを徹底することですね。顧客ともチーム内でも、認識がずれたまま進めると「そういうことじゃなかった」といった齟齬が発生してしまう。そうなると、チーム全体の工数を無駄にしてしまうことにもなります。
ですので、「自分はこう理解して進めようと思っているんですが、認識合っていますか?」と、少しくどいと思われるぐらいに確認するようにしています。相手が無意識のうちに持っている前提と、自分の前提がズレていることは往々にしてあるので、最初の段階で丁寧にすり合わせるようにしています。
── 確認のコミュニケーションは、チャットが中心でしょうか?
基本はチャットですが、朝会などの定例で話すこともありますし、「ちょっと込み入っているな」と感じたときは、「今お時間ありますか?」と声をかけてその場で口頭で確認するようにしています。
── フリーランスとして現場に参画する際、その現場の雰囲気や方針などはどのように把握されていますか?
特に意識しているわけではないんですが、会話の中から自然と相手の考え方や価値観を汲み取るようにしていると思います。
たとえば、「このリーダーはメンバー一人ひとりがプロジェクトに愛着を持ってほしいと思っているんだな」とか、「この人はスピードを重視するタイプだな」とか。そうした部分を無意識に読み取って、相手が大事にしていることに合わせたコミュニケーションをとるようにしています。
── コミュニケーション面で特に苦労された現場などはありましたか?
そうですね、直近で担当したオンプレからクラウドへの移行プロジェクトはかなり難易度が高かったです。私は技術検証フェーズを担当したのですが、そもそも既存システムについて詳しく把握できている人がいない。さらに移行先でどう実現するかも明確になっていない、という状態でした。
たとえば、「DBの設定情報を一覧にまとめてください」と依頼があったとしても、それを単純にまとめるだけでは意図とズレる可能性が高いんです。
── 確かに、背景によって求められる情報の粒度が変わりますよね。
おっしゃる通りです。「これは設計資料として使いたいのか?」「デプロイ時に自動変換する処理のベースにしたいのか?」「単純に可視化しておきたいだけなのか?」──目的が違えば、盛り込むべき情報も変わりますよね。
ですので、作業に入る前に徹底的に“何のためにやるのか”を確認するようにしていました。あの現場はとにかく、「確認>作業」の意識で丁寧に進めることが大切だったと思います。
── では、どのような環境でやりがいやモチベーションを感じることが多いでしょうか?
そうですね、まずは自分の得意分野でバリューを発揮できる環境ですね。チームの一員としてしっかりと貢献できていると感じられると、非常にやりがいがあります。
もうひとつは、キャリアアップにつながる環境。たとえば、未経験の技術や新しいタスクにチャレンジできて、「自分が成長している」と実感できる瞬間にも強いモチベーションを感じますね。
── 今後チャレンジしてみたい業界や取り組みたいテーマなどはありますか?
業界としては、特定の領域にこだわりはあまりないんです。実際に案件を選ぶときも、「どんな技術が使われているか」とか「どういう工程に関われるか」といった技術的な視点で判断することが多いですね。
新しい技術に触れながら、自分が力を発揮できるポジションで貢献できる──そういった環境であれば、どの業界でも前向きに取り組みたいと考えています。
PR・今後について
── ご自身をPRするうえで伝えたいポイントがあれば教えてください。
そうですね、まず自分の仕事の進め方として、丁寧に確認しながら着実に進めていくというスタイルを、これまでの現場でも評価していただいてきました。
「安心して任せられる」「リモートでもしっかり対応してくれる」といった言葉を、チームメンバーやリーダーの方からいただくことも多く、そういった信頼感の部分は自分の強みだと感じています。
── スキル面ではいかがでしょうか?
スキルとしては、やはりC#を中心に10年以上の経験があり、新規開発・改修ともに多数の案件を手がけてきました。
また、SQLやクラウド関連の技術にも長く触れており、DBまわりやクラウド環境での設計・構築にも問題なく対応できます。
── ありがとうございます。では最後に、今後の目標や取り組みたいことについてお聞かせください。
はい。本業では、これまでのC#を軸にしつつ、より先進的な技術へのスキル拡張を進めていきたいと思っています。新しい技術にも積極的に触れていきながら、自分のバリューを広げていくことが目標です。
また、副業では、これまで取り組んできた個人開発や情報発信などの活動を、ゆくゆくはマネタイズにつなげていけたらと考えています。自分の知識や経験を活かしながら、複数のチャネルで価値を生み出していけるよう、チャレンジを続けていきたいですね。