「挑戦と成長をリードする」──執行役員CPOが語る、プロダクト開発の未来と組織の進化

山村 文人 氏|株式会社バトンズ 執行役員CPO

日本ユニシス(現BIPROGY)にて、多数のシステム開発プロジェクトに参画し、上流工程~開発・保守を経験。2018年4月にアンドビズ株式会社(現バトンズ)に参画し、バトンズのローンチ・数多くの新機能開発に携わる。2022年4月にエンジニア組織のマネージャーに就任。2023年10月に執行役員に就任、プロダクトを担当。

株式会社バトンズ について

そうですね、端的に申し上げると、私たちはM&Aプラットフォーム「BATONZ」を提供しています。特徴としては、単なるマッチングにとどまらず、入口から成約までの全プロセスを一貫して支援する「総合支援型」であることです。システム的な支援体制も充実しており、利用者がスムーズに取引を進められるようなプラットフォームを構築しています。

山村さんのキャリア

小学生や中学生の頃は、いわゆるスポーツ少年で、毎日サッカーに打ち込んでいました。放課後はサッカー部の友達と一緒に練習し、その後は『ドラゴンクエスト』や『ポケモン』、任天堂64で『スマブラ』などのゲームを楽しむのが日常でしたね。高校に入ってもサッカーは続けたものの、次第にサッカーからはフェードアウトしていきました。その後も特に勉強に集中するわけでもなく、友達とカラオケに行くなど自由に過ごすことが多かったです。

高校時代、理系か文系かを意識し始めた頃に、自分は理系の考え方が合っていると感じていました。そして、学校でコンピュータに触れる機会があり、「コンピュータって面白いかも」と興味を持ったのが、情報系の学部に進むきっかけでした。ただ、高校生の時は深く将来を考えていたわけではなく、大学時代も友人と遊ぶことを中心に過ごし、典型的な大学生らしい生活を送っていましたね。

日本ユニシス(現BIPROGY)はSIerとして、主に金融系や官公庁のクライアント向けに受託開発を行っていました。私は社内のフレームワーク開発や生産性向上のためのツール開発を担うチームに所属し、社内で利用できるツールの提供や技術支援を行っていました。若手の頃には、設計書から自動でコードを生成する「ジェネレーター」の開発にも携わり、現場への適用支援も行っていましたね。

入社後最初の5年間は、主に社内のツール開発や技術サポートがメインで現場に出ることは少なかったのですが、その後、非常に大きなプロジェクトに参画する機会が訪れました。プロジェクトは困難を極め、協力企業のメンバーが体調不良で休むことも多く、顧客からも厳しい要求が絶えない状況でした。ハードな環境でしたが、その中で150%の力を注いで働くことで、仕事のやりがいを強く感じることができました。

プロジェクトが一段落した後、社内に戻り、新しい技術を調査し、どのように適用できるかを検討する業務を担当しました。最新技術が次々と登場しているのを実感しつつも、すぐに社内に導入できないもどかしさも感じることが多かったです。

その一方で、スタートアップの働き方に触れる機会があり、“おしゃれなカフェで私服で仕事をする”といった自由な雰囲気の中で自由な発想を持って新しい技術を活用して働くことに魅力を感じるようになりました。そうしたフレキシブルで自分らしい働き方への憧れも強くなり、転職を意識し始めましたね。

当時、特にM&A自体に強い関心があったわけではなかったのですが、創業メンバーの方々に直接お会いする機会があり、その熱意やビジョンに強く惹かれました。正直、最初は「M&A」という言葉に対してややネガティブな印象があったものの、彼らの話を聞く中で、それが単なる会社の売り買いにとどまらず、社会貢献の一環として過去のM&Aの流れにおける課題をDXしようとする姿勢に共感し、興味が湧きました。そうした考え方に魅力を感じ、入社を決意しました。

株式会社バトンズ 入社後

いえ、応募した時点では「日本M&Aセンター」という社名と「アンドビズ」というサービス名で、その前提で入社しました。しかし、実際に入社してみると、会社がスピンオフして社名が変わっており、10月には大幅なリニューアルを経てサービス名も「バトンズ」に変更されました。短期間でこれほど多くの変化があったことで驚きつつも、スタートアップならではのスピード感を肌で感じることができました。

2018年7月に入社した時点で、社内のエンジニアは私を含めて3人だけという少数体制でした。社内は非常にカオスな状況で、10月までにシステムをリリースする必要がありましたが、残り3ヶ月という短期間では、まだ多くの部分が動作しておらず、品質を向上させるため全力を注がなければなりませんでした。もともとシステムの開発は外部ベンダーに委託されており、社内メンバーはそのやり取りに関与していなかったこともあって、入社当初は混乱を極めていましたね。

入社したばかりの頃は、「何が勝ち筋か」が見えない状態で進めていました。ユーザーの声も十分に集まらないまま、仮説に基づいてプロダクトを開発している状況で、社内でもサービスの方向性に確信が持てている人はほとんどいませんでした。さらに、スタートアップあるあるですが、開発中に仕様が変更されることが頻繁にあり、3か月かけて作ったものを直前で「リリースをやめよう」と決断することもありました。本当に大変な時期でしたね。

はい、神瀬がCMOとして入社してから、会社が大きく変わりました。当時、社内にはSEOやマーケティングの知識はありましたが、実践的なノウハウが不足していました。そこに事業推進やマーケティングのプロフェッショナルである神瀬が加わり、明確な方向性が定まり、「これで自分たちのプロダクトが進化していく」という確信を持つことができました。

そうですね、非常に良い経験でした。自分はもともとSIer出身で、主に基幹系システムの開発を担当していましたが、神瀬からプロダクトの成長方法やSEO等の知識を学び、多くのことをキャリアとして吸収できたと感じています。

リーダーとしての役割を持ち始めたのは2020年頃で、自然な流れで任される形でした。その後、2022年にGM、その後に執行役員CPOに就任しましたが、これは自分の実力というよりも、組織として成果を出してきたことが評価されたのだと思います。優秀なメンバーが集まっており、案件をスムーズに進められたことが大きかったですね。

実のところ、GMやCPOのようなポジションを特に目指していたわけではありません。ただ、プロダクトを良くしたいという思いは強く、任されたからには全力で取り組みたいという気持ちは常に持っていました。

そうですね、ざっくり申し上げると、現在の業務はCPOとしてのプロダクトマネジメント、GMとしての運営やピープルマネジメントが中心です。今年度は特に組織力強化に重点を置き、将来的にもリソースを割いていく予定です。具体的には、採用活動に全体の約1割を、そして中長期の組織戦略策定にも1〜2割を割いています。自身の開発業務には約1割、プロダクトマネジメントとして仕様検討や他のエンジニアとの調整に約3割を使っています。

さらに、組織における各種プロセスの改善や方針策定も担当しており、今年度は特にセキュリティ強化にも注力しています。

事業の魅力は、「正しいことを胸を張ってできる」という点が大きいと感じています。社会に貢献し、お客様を第一に考えた事業展開をしていることに誇りを持っています。特に、後継者不在が課題となっている127万社もの企業がある現状で、私たちのサービスがその市場にアプローチできるのは大きな強みですし、困っている方に手を差し伸べられている実感があります。

また、お客様から感謝の言葉をいただくことが多く、そのたびに日々の仕事に対する誇りを感じます。こうしたフィードバックをいただけることは、働く上で非常に大切であり、結果的に事業の強みになると考えています。

現在のエンジニア組織について

現在、開発組織は「プロダクトユニット」として一つのユニットを形成しています。プロダクトユニットは、プロダクト開発及び社内ITを統括する「プロダクト・IT統括グループ」とプロダクト開発における各種ベース環境を整備する「プラットフォームグループ」の2グループに分かれており、合計で15名の体制です。プロダクト・IT統括グループでは企画や営業と密にコミュニケーションを取りながら日々機能開発や改善を行い、顧客への提供価値向上に取り組んでいます。プラットフォームGは特定の技術領域において高いスキル・知識を持つメンバーが集まっており、プロダクトエンジニアが効率よく安全に開発できるような環境を整備したり、技術的な相談に乗ったりしています。

開発組織の良い点は、スタートアップならではの前向きな姿勢や素直さを持つメンバーが多く、事業への関心や活発なコミュニケーションが特徴です。プロダクト開発や技術に対する情熱や一体感が強く、非常に優秀で人格者の人材が揃っている点が魅力です。

一方、課題としては、スピード優先で進めてきたことで技術的負債が溜まっている点です。リファクタリングや技術的負債の解消の必要性は認識しつつも、これまでは新機能開発の優先度が高く、リソースも不足している状況であったのでこちらに注力できてない状況でした。今年度は仲間も増え、機能開発と並行して技術的負債の解消にも注力しています。技術的な部分には私も関わりますが、CTOの鈴木が中心となり、組織全体で取り組んでいます。

組織マネジメントやプロダクトマネジメント全般を私が担っています。

一方、CTOの鈴木はアプリケーションからインフラに至るまで技術領域全般と品質保証(QA)をリードしています。広く深い知識・スキルを持っており、技術的に困ったことがあれば最終的に彼に相談すれば何とかなる、とても頼りになる存在です。

今後の目標

現在の開発組織は15名ですが、今後3年で50名規模にまで成長させ、より強固な開発体制を構築したいと考えています。組織全体の技術力とプロダクトの進化を目指し、社内におけるエンジニアの割合を現在の10%から30〜40%程度まで引き上げ、テックカンパニーへの昇華を目指したいですね。

現在の組織には、EQ診断で言う2番や3番タイプのメンバーが多く、これまでのフェーズで成果を上げてきました。しかし、今後は6番タイプのように柔軟性と成長意欲を持ち、組織やプロダクトの進化に貢献できる人材がさらに必要だと考えています。4番タイプの慎重な方は、将来的に会社が大きくなった際には貴重な存在になるかもしれませんが、今のような成長フェーズには適応が難しいかもしれません。

現在の開発組織は15名ですが、今後3年で50名規模にまで成長させ、より強固な開発体制を構築したいと考えています。組織全体の技術力とプロダクトの進化を目指し、社内におけるエンジニアの割合を現在の10%から30〜40%程度まで引き上げ、テックカンパニーへの昇華を目指したいですね。

前向きでプロダクトの成長に関心を持ち、協力し合いながら仕事を進められる方と一緒に働きたいですね。現在の組織には、技術的負債の解消やプロダクトの改善に真剣に取り組む姿勢を持つメンバーが多いので、同じようにその姿勢を共有できる仲間を迎えたいと考えています。