福本 朋哉 氏| 売れるネット広告社株式会社 執行役員
幼少期からゲームやデジタルメディアに興味を持ち、高校では新聞部での“ものづくり”を通じて創作活動に惹かれる。早稲田大学在学中は映画制作に没頭し、卒業後はテレビ番組やCMのディレクターとして映像業界でキャリアをスタート。その後、Web業界に転身し、複数の制作会社で大規模サイトのリニューアルや運用を手がける。
D2Cのネット広告支援を行うチームに参画したのち、創業間もない売れるネット広告社へジョイン。ディレクションから開発、管理部門の立ち上げまで幅広い業務を担い、開発責任者・COO・CFOを歴任。現在は「マーケティングAIデータ部」の最高責任者として、AIを活用した新規事業を推進している。
売れるネット広告社株式会社について
── 御社の事業内容を教えて下さい。
弊社は「売れるネット広告社」と申しまして、社名の通り、D2C(ネット通販)企業様がネット広告を出稿する際に「商品をいかに“売れる”ようにするか」を支援している会社です。
具体的には、ネット広告を活用している通販企業様向けのコンサルティングや広告運用はもちろん、LP(ランディングページ)の制作なども行っています。
特に、これまでに2,600回以上のA/Bテストを実施して培ったノウハウを余すことなく組み込んだ仕組みをご提供している点が、大きな特徴といえます。
福本さんのキャリア
── 当時はどんな子供(小学校〜高校)でしたか。
こういう話は少し照れくさいのですが(笑)。私はいわゆる“ファミコン世代”で、小学生の頃にちょうど『ドラゴンクエストⅠ』が発売されたんです。同世代の方ならお分かりになるかもしれませんが、本当にみんなでゲームに熱中していましたね。子どもの頃は「将来はゲームを作る人になりたいな」と考えていたこともあり、インタラクティブなデジタルメディアに興味を持ち始めたのも、そのころが最初だったと思います。
完全に“オタク”気質でしたね(笑)。
── 中学から高校はいかがでしたか?
高校時代は新聞部に所属していました。学校新聞を作る部活だったのですが、全国大会に出場するような比較的レベルの高いチームだったんです。もともとゲームの延長線上かもしれませんが、「何か創作がしたい」という気持ちが強くあって、「では新聞を作るのは面白そうだな」と思い、新聞部に入ったんです。
── そこから早稲田大学の教育学部に進学されましたが、その背景を教えてください。
元々文系で数学は苦手でした。第一志望は文学部だったのですが、残念ながらそちらには合格できず、教育学部へ進むことになりました。とはいえ早稲田大学を選んだ理由としては、寺山修司さんのような作家や演劇の文化など、クリエイティブな雰囲気がある大学というイメージを持っていたからです。創作系やクリエイター志望の方々が多い印象があり、そこに魅力を感じて受験しました。
── 大学卒業後、映像制作系の会社に入社してテレビ番組やCMなどのディレクションを手がけられていたそうですね。幼少期に思い描いていたゲーム開発の道に進まなかった理由や、テレビ業界へ進んだ経緯を教えてください。
「将来ゲームを作りたい」という思いはずっとありましたが、理系的な要素やプログラミング技術は持ち合わせておらず、数学が苦手だったこともあって「ゲーム開発は難しいかもしれない」と感じるようになりました。ただ、“何かを作りたい”という気持ちは強かったので、大学では映画制作のサークルに入っていました。
そこでお世話になった役者さんからテレビ業界のディレクターの方を紹介していただき、「アシスタントディレクター(AD)のアルバイトをしてみないか?」というお誘いを受けたんです。それがきっかけで自然とテレビの現場に関わるようになり、そのままADとして就職しました。
── そこからWeb業界へ転身したのはどういう理由だったのでしょう?
当時のテレビ業界は労働環境が非常にハードで、家になかなか帰れない日々が続きました。さらにプロデューサーとの折り合いが合わなくなり、結果的に退社という道を選んだんです。
その後、しばらくはニート状態に近い形になっていましたが、知り合いの映像制作会社の社長から「住み込みでいいからウチで働いてみないか」と声をかけてもらい、編集作業をしながら過ごす生活をしていました。
ただ、その働き方も将来的に厳しい面が多く、「別の道を探さないと」と考えるようになったんです。
ちょうどWeb制作やWebサービス開発が盛り上がってきた時期でもあったので、映像ディレクションの経験を活かせるのではと思い、制作会社へ転職してWebディレクターとして働くようになりました。
その後、もっと大規模なプロジェクトにも関わりたいと考え、イー・エージェンシーへ転職。大手クライアントのサイトリニューアルや運用、年間1億円単位のプロジェクトを提案するような仕事に携わりました。
── イー・エージェンシーでのご経験後、今の「売れるネット広告社」に入られた経緯を教えてください。
イー・エージェンシーでは大手クライアントの案件を担当していましたが、運用案件の打ち切りなどのタイミングも重なり、別のポジションを探していたところ、九州の株式会社ADKで当時、現在の会社の代表の加藤が立ち上げたチームに常駐する話をいただきました。そこでは通販の広告支援をしていて、私がLPのディレクターとして関わったことがきっかけです。
その後、あちこちの案件を担当するうちに最終的に「売れるネット広告社」で一緒に仕事をすることになった、という流れです。
── 最終的に売れるネット広告社に入社を決めた理由は何だったのでしょうか?
当時、売れるネット広告社は創業から1年半ほどしか経っておらず、社内にディレクションができる人がいなかったんです。「自社サービスをもっと改善したいので、一緒にやってほしい」というお話をいただき、私自身もずっと下請け的な立場から脱却して「自社サービスに深く携わりたい」という思いが強かったため、入社を決めました。
売れるネット広告社株式会社 入社後
※2025年1月1日付で「売れるネット広告社グループ株式会社」へ商号を変更し、ホールディングス体制に移行
── 入社後はどのような業務に取り組んだのですか?
自社サービス開発にも携わりましたが、当時はまだ従業員が少ないベンチャー企業でした。私が3人目の社員だったので、業務は多岐にわたり、実際に開発に割ける時間は全体の2割ほど。残り8割はクライアント向けのLP制作や広告キャンペーンの制作業務が中心でしたね。
その後、徐々に組織が拡大していく中で、人員を増やしながら私の業務も開発やディレクションにシフトしていった形です。
── 当時はどのような大変さややりがいがあったのでしょう?
まだベンチャー色が強く、非常にハードな働き方をしていました。社長を含め、深夜までオフィスにいるような状況で、週末に徹夜してようやく日曜日だけは休む……といったサイクルです。大変ではありましたが、その分「やるべきことは全部やる」という姿勢や、とにかくやり抜くメンタルが身に付いたのは、今でも大きな財産になっています。
── これまで開発責任者、COO、CFOなど様々なポジションに就かれてきましたが、その経緯と担当された業務内容をお聞かせください。
まず開発責任者になったのは、弊社のメインプロダクト「売れるD2Cつくーる」の開発体制を整備するためです。当時はLP制作などを兼務していて、“がっつり”開発に取り組む時間がなかったので、私が主導して体制を作り直しました。
その後、COO(最高執行責任者)に就任したのは、会社が設立から4〜5年目くらいで経営的に大きな山場を迎えた時期です。社長は強力なリーダーシップを持つ一方で、組織の成長が追いついておらずうまく回らない状況になっていました。
そこから営業部門長と協力しながら、組織の建て直しや新たな取り組みを行い、V字回復を目指す立場として動きました。
会社が成長し、「上場」を視野に入れるようになると、今度は管理部門を本格的に整えなければなりません。もともと経理は社長の奥様が担当しているような状態でしたから、財務・経理の専門家を採用するなど、体制を固める必要が出てきたんです。そこでCFO(最高財務責任者)として、半年ほどかけて財務・経理部門を整備した後、引き継ぎをして別の業務に移りました。
── 現在は「マーケティングAIデータ部」の最高責任者を務めていらっしゃいますが、具体的にどのような業務を担当されているのですか?
上場後のタイミングで「新規事業をやりたい」と社内に提案し、一人部署で新規事業を推進しています。部署名は「マーケティングAIデータ部」で、AIやデータを活用した新しいサービスの開発・展開がミッションです。
たとえば、D2C向けのAIコールセンターサービスや、AIアパレル試着、バーチャルヒューマン(AIで動き喋るデジタルヒューマン)、ショート動画やLPを簡単に作成できるサービスなどを展開しています。必ずしも自社でゼロから開発するのではなく、外部ベンダーの優れた技術を組み合わせて最適なソリューションを提供することも多いです。
現状、私自身がベンダーとの交渉から営業活動までを一手に担っている段階ですが、近い将来にはチームを整備していく予定です。
── 「売れるネット広告社」らしい特徴としては、やはり「売り上げに繋がるAI」という点でしょうか?
はい。弊社の社名「売れるネット広告社」が示すように、“売り上げを伸ばす”という観点は一貫して大切にしています。一般的にAIというと業務効率化に注目されがちですが、弊社の場合はD2CやECを中心に「どうすれば売り上げや受注件数に繋がるか」を重視したAIサービスを設計しています。
例えば、コールセンターのAI化では注文対応をAIが代行し、予約対応にも活かせる仕組みを提供しています。アパレル向けには“いかに商品を魅力的に見せるか”に特化した画像生成や試着AIなどを導入し、ショート動画や記事LPといった広告クリエイティブもAIで効率よく制作しています。実際の運用現場で成果に直結できるツールを提供することが、弊社の強みだと思います。
── 売れるネット広告社の魅力や強みを、会社として・事業としてそれぞれお聞かせください。
まず会社としては、D2C向けコンサルティングを10年以上行ってきた実績と知名度が大きいですね。通販業界に精通していることや、大手から中小まで幅広いクライアントと築いてきた繋がりが強みです。代表の加藤自身、通販業界ではかなり知られた存在なので、営業機会に恵まれていますし、クライアントとの情報交換もしやすい環境があります。
事業面では、私が担当しているAI領域が今非常に注目を集めている点が魅力だと感じています。弊社が長年培ってきた“売れる”ためのノウハウとAIの技術を掛け合わせることで、面白いサービスを次々と生み出せる可能性があります。クライアントの声を素早くフィードバックできる土壌もあり、“試してみる→改善する”というサイクルをスピーディに回せることも大きいと考えています。
現在の組織について
── 現状の開発組織について教えていただけますか?
現在、全社員はおよそ35名ほどです。大きくは営業部門、CS(カスタマーサクセス)部門、メディア運用チーム、制作チームに分かれています。もともと広告代理店的なスタイルでビジネスを展開してきましたから、いわゆる代理店の営業スタイルを重視しており、CS部門が“アカウントエグゼクティブ”的な動きをしながらクライアントをサポートしています。
これらの部門が中核を成し、新規開拓を担当するチームとメディア運用チームが横並びで協力し合うイメージです。また、弊社はSaaSのプロダクトでもある「売れるD2Cつくーる」を扱っている関係から、新規開拓においては“ザ・モデル型”の営業プロセスを導入し、専任チームが動いています。
── 現在の組織の良い点(特徴や魅力的なところ)と課題点(ここを改善すればもっと良くなるなど)があれば、お聞かせください。
良い点としては、若いメンバーが多く、会社の文化を理解し、勢いをもって成長しているという点です。「クライアントを成功に導く」という理念に共感する人材が多く、実際に成果へ向けて真摯に取り組んでくれているのは素晴らしいです。
一方の課題としては、専門性を持つ人材がまだまだ不足しがちというところでしょうか。特にエンジニアリングやバックオフィス系の管理部門では、経験豊富なプロフェッショナルの数が少ない現状があります。広告代理店型のビジネスを中心にしてきたため、専門領域の方々が入りにくいイメージがあるのかもしれません。今後のさらなる成長には、これらの専門領域を強化していく必要があると思います。
── 専門職の採用や組織拡大は、今後どのように進めていく予定ですか?
私の部署であるAIデータ部の売上をしっかり伸ばし、「今後ここに投資をすれば事業として大きく成長できる」と示していきたいですね。まだ代理販売的なモデルを中心にしているので利幅が小さい部分もありますが、今後は自社開発へのシフトで収益性が高まれば、エンジニアのような専門領域の人材を採用し、チームを広げることが可能になります。
今後の目標
── 今後の目標を教えてください。
個人としても会社としても、グループ全体の時価総額をさらに上げることを目標にしています。そのためには、どのような組織構造でどのような人材を確保するかという逆算的な発想が欠かせません。今期はまず、AI事業で掲げた売上目標を達成し、その成果を足がかりにして組織を拡大していく計画です。
── どのような人と一緒に働きたいですか?
弊社には「クライアントの売り上げを伸ばす」「課題を解決する」というビジネスゴールありきの文化があります。したがって、エンジニアであってもバックオフィスであっても、“自分の専門領域だけを追求する”というより、「どうすればクライアントと会社の成長に繋がるか」を常に考えられる方に来ていただきたいです。
もちろん、学びやすい環境や新しい技術への挑戦機会も提供できますが、何よりも「一緒にビジネスを創り上げていく」という意識を持った方がより活躍できると思います。