「学びに卒業はない」──Schoo CTO・加藤彰宏氏が描く、社会人学習の未来図

まず一つ目が、法人向けの「Schoo for Business」です。これは、企業の社員研修や自己啓発を支援するオンライン学習サービスで、組織の学びを継続的に促進する仕組みを提供しています。

二つ目は、個人向けの「Schoo for Personal」です。こちらは生放送形式で学べる学習コミュニティに近く、ビジネススキルからライフスタイルまで幅広いジャンルのコンテンツを提供しています。生放送は無料で視聴でき、過去の授業は録画でいつでも振り返ることが可能です。

三つ目に、高等教育機関向けの「Schoo Swing」があります。大学や専門学校といった教育機関のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するプラットフォームで、高等教育現場のオンライン化を後押ししています。

そうですね。そしてもう一つ大きかったのは、「店舗運営」という視点を持てたことです。アルバイトながら、現場の全体を見渡して動かす経験をしたことで、「これはある意味、小さな会社経営だ」と感じるようになりました。この経験が、自分のキャリアの原点になっていると思います。

その考え方は、社会人になってからも自分の働き方に大きく影響を与えています。単に技術を磨くことに終始するのではなく、「そのサービスを使う人がどう感じるのか」を常に意識しながら設計・開発に取り組むようになりました。

1000万人、1億人といった規模のユーザーを対象にした開発経験はなく、そのノウハウを得るには「実際にその環境に飛び込むしかない」と思ったんです。

その当時、パフォーマンスに関する課題が表面化し、改善が急務となる中で、私はシステム全体の再構成に着手しました。ちょうど三連休を使ってサーバーの構成を見直し、ボトルネックの解消や処理速度の向上に取り組みました。結果的に、週明けには対応を完了させ、サービス品質の改善につなげることができました。

はい、そうです。取締役COOの古瀬とはテニスを通じて知り合いました。もともとキュービックさんや助太刀さんと同様に、技術顧問としての支援をご依頼いただいたのが最初の関わりです。

はい。一度お話をいただいた後、しばらくやり取りが途絶えた時期もありました。その後、何度か対話を重ねる中で、「まずは顧問という形で関わるのはどうか」とご提案をいただき、2023年の秋ごろに再び接点が復活しました。

古瀬の本気度が強く伝わってきたこと、そして自分としても「これは解決できる領域だ」と感じたことが大きかったです。自身が運営する会社Plus10Percentとして支援をお引き受けする際は、常に「相手の本気度」と「自分が成果を出せるか」を大切にしています。

スクーからは当初から多くのインプットをいただいており、それらを通じて「この課題は自分が貢献できる」と確信を持てたため、「まずは技術顧問として入りましょう」と、2024年1月から正式に関わり始めました。

参画当初は、すでに別の技術顧問の方がいらっしゃったので、“ダブル技術顧問”のような体制でスタートしました。まずはその方と領域を明確に分けるところから始め、私はプロダクト開発を、もう一方は情報システム部門を担当するという形に整理しました。

そのうえで、プロダクト開発における課題抽出のために、社内の関係者へヒアリングを実施しました。最初から網羅的にというよりは、事前にいただいていた情報をもとに「この辺りに課題があるのではないか」という仮説を立て、それを検証する形で進めていきました。結果として、仮説と実際の課題がほぼ一致しており、スムーズに本質的な論点にたどり着くことができました。

noteにも書いたとおり、やはり代表の森との出会いが大きかったですね。それに加えて、自分自身のキャリアに対する内省も大きく影響しています。

私はこれまで基本的に、自分の“経験”をもとに業務に取り組んできました。たとえば書籍を読んでも、「これは自分が現場で実践してきたことと同じだな」と感じながら読み進めるようなタイプで、20代から40代中盤くらいまでは、そうした“経験ベース”で判断し行動することがほとんどでした。

ところが独立後、複数の経営者や企業と関わる中で、「自分の語彙や知識には限界がある」と痛感する場面が増えてきたんです。経営的な視座での対話や意思決定が求められる場面も増え、より広く、より深く学び直す必要性を強く感じるようになりました。

そこで、研修や読書、事例研究などを通じて、経験と理論の両輪で自分をアップデートすることに注力しました。その結果、明らかにアウトプットの質が高まり、「学び続けること」そのものが、いかに重要かを再確認しました。

そうなんです。ちょうどそんな実感を持っていた時期に森と出会い、スクーのミッションやビジョンを聞いて、強く共感しました。スクーは「社会人が学び続ける意味」を体現するサービスです。これまでの自分の経験と、学び直しを通じて得た知見──その両方を重ねられる場として、CTOとしてジョインする決断をしました。

よく聞かれるのですが、ポイントは「脳の使い分け」にあります。

私の中では“脳内にフォルダがある”ような感覚があって、会議中に話題が出ると「これはこのカテゴリのこのトピックだな」と分類して記憶しておくんです。次に同じ話題が出たときには、そのフォルダをパッと開いて、必要な情報をすぐに取り出すイメージです。

ですので、複数のプロジェクトを同時に進めること自体は、あまり苦ではありません。あとは時間の使い方さえしっかり管理すれば、無理なくやっていけるという感覚ですね。

その分、「よかったこと」はしっかり覚えていて、たくさん話せます。スクーで特に感じるのは、「温かくて、協力的な人が本当に多い」ということですね。

何かを提案したとき、すぐに「やりましょう」と前向きに動いてくれる。この推進力は、プロダクト開発を進めるうえで非常に大きな強みだと思っています。

私自身、これまでのキャリアで「経験」と「学び」を通じて多くのことを得てきましたし、それが仕事や人生に与える影響は計り知れないと実感しています。だからこそ、社会人が継続して学び続ける場として、Schooのようなサービスには大きな意義があると思っています。

特に、生放送の授業が無料で視聴できる仕組みは非常にユニークです。金銭的なハードルが低く、多くの人に「学びの体験」を届けられるのは、他にはない強みです。

また、生放送ならではの“インタラクティブな学習体験”があるのもポイントです。たとえば、授業中にチャットで質問すれば、講師がその場で拾って答えてくれることもあります。録画視聴とは違う、「その場のやり取り」を通じた理解の深まりがあるんですね。

現在、開発組織は40名強の体制で運営しています。

組織としては「開発本部」があり、その中に大きく2つの部門が存在しています。開発と開発支援という形で分けていますが、人数の構成でいうと、プロダクト開発を担う部門の方がやや多く、組織の中核を担っています。

はい。今は大きなテーマとして2つのプロジェクトに注力しています。一つは「APIの開発」、もう一つは「リアーキテクト(システム再設計)」です。いずれも中長期で見たときに、Schooのプロダクトや事業成長の基盤となる非常に重要な取り組みだと位置づけており、リソースを集中させて進めています。

もう一つの特徴としては、「学習意欲の高さ」があります。これはスクーならではの文化だと思っていて、メンバーの多くがインプットだけでなく、その学びをどうアウトプットするかまで意識して動いているんです。

今後の目標・採用

まず、大前提として「素直で正直な人」と一緒に働きたいという思いがあります。これは職種にかかわらず、あらゆる場面で信頼関係を築くうえで欠かせない要素だと考えています。

そのうえで、私が特に重視しているのは「物事に本気で熱中できる人」。自分が取り組んでいることに対して、“本気を出している”と堂々と言える人。そしてその熱量を、チームや周囲に良いかたちで伝播できる人ですね。そういった仲間と一緒に、サービスを育てていきたいと思っています。