宮下 尚之 氏|株式会社集英社アーツ&デジタル 開発グループ マネジメントチームリーダー
前職では大規模SIerで旅行会社の案件に従事。その後、集英社アーツ&デジタルに入社後、女性誌媒体の改修、データマネジメント案件、他チームとの折衝など幅広く経験。現在は技術・運用・制作の橋渡しを担い、組織体制の整備に力を注いでいる。
上田 耕太 氏|株式会社集英社アーツ&デジタル 開発グループ 開発運用チームリーダー
新卒でITベンチャーに入社し、SESとして多数のプロジェクトに携わる。集英社案件のリニューアル開発でリーダーを経験したことをきっかけに、より深くメディアに関わりたいと同社へ転職。現在は媒体横断の開発支援・進行管理・組織運営を担う。
株式会社集英社アーツ&デジタル

事業内容について
── 御社の事業内容から伺ってもよろしいでしょうか。
宮下:弊社は、集英社のコンテンツ制作部門におけるデジタル事業のパートナーとして、メディア・EC・マンガコンテンツなどの運営・業務支援を行っています。私たちが所属しているのはメディア事業領域で、メディア事業の運営支援が中心です。
具体的には、集英社公式女性誌ポータル「HAPPY PLUS」や公式ファッションECサイト「HAPPY PLUS STORE」の運営、少年誌・青年誌・少女誌それぞれの公式マンガアプリのディレクション〜運営までを幅広く担当しています。
また、集英社以外の企業に対しても、サイト制作やデジタルコンテンツの開発支援を提供しています。
キャリアの原点|幼少期から学生時代まで

── ここからは、お二人のキャリアについて伺えればと思います。まず上田さんは、どのような幼少期を過ごされましたか。
上田:小さい頃は、野球・水泳・ソフトテニス・柔道・油絵・ボランティアなど、本当にいろいろなことを経験しました。ただ、自分からガツガツ行くタイプというよりは、親や周囲に勧められて「なんとなくやっていた」感覚でしたね。
中学生以降は写真部・軽音楽部など、自分の「やりたい」を自分で選ぶようになりました。ライブやイベントを企画・運営する中で、「目的を考え、人を巻き込み、形にしていく」経験を積めたことは、今の仕事にも大きくつながっていると感じます。写真も音楽も、今でも続いている大切な趣味です。
── 大学時代はいかがでしたか。
上田:地元の町田を一度離れてみたい、でも都内にはいたい──という理由で、吉祥寺周辺の大学を選びました。専攻へのこだわりよりも「どんな人たちと、どんな活動をするか」を重視していて、軽音楽部の活動を通じて多様な人と関わる経験を積みました。歴史あるサークルで部長も務め、先輩・後輩・OB・他大学のサークルと連携しながらイベントをつくっていく過程は、社会人さながらの場数だったと思います。メディアへの興味もこの頃からあり、マイナーなサブカル雑誌の編集部でインターンもしました。
── 現在はエンジニアとしてご活躍されていますが、どこでITに進まれたのでしょうか。
上田:大学時代までは完全に「ITとは無縁」でした。就職活動中に、文系出身の先輩がIT業界で働いているという話を聞き、「自分も選択肢に入れてみようかな」と思ったのがきっかけです。説明会などを通じて業界への興味が高まり、新卒ではIT企業に入社しました。
── 続いて、宮下さんの幼少期・学生時代について教えてください。
宮下:小中学校の頃は「楽しいかどうか」を基準に動くマイペースなタイプでした。勉強も運動も一定以上はこなすものの、ストイックに結果を求めるというより「楽しいから続ける」感覚が強かったですね。
その姿勢が大きく揺さぶられたのが高校です。特進クラスに入ったものの、周囲は医師や有名私大を目指すような優秀な同級生ばかりで、マイペースでいるとあっという間にクラス最下位に。そこで初めて「努力して勉強する」ことに正面から向き合いました。結果として浪人も経験しましたが、勉強のやり方を学び直すきっかけになりました。
── そこから大学は情報学部に進まれた経緯を教えてください。
宮下:浪人中は派遣アルバイトとして、コンサート会場の設営や倉庫整理など、さまざまな現場を経験しました。その経験を通じて、自分自身がどのような働き方にやりがいを感じるのかを考えるようになりました。
将来は、変化があり、学び続けられる環境で価値を発揮したいと考えるようになり、成長産業であるIT・情報分野を志しました。大学では、プログラミングやポリゴンモデル制作、生物の細胞分裂を可視化する教育モデルの研究、ゲーム制作など、幅広い開発に挑戦していました。
新卒時代について
── 新卒時代について伺います。まず上田さん、新卒で入社された会社について教えてください。
上田:企業説明会で「設立6年目のIT企業・新卒一期生募集」というワードを見たのがきっかけでした。まだ若い会社で、自分も一から力になれるかもしれないという期待感がありましたし、犬好きの自分には、会社紹介資料に犬の写真が載っていたことや、社長が「ギターが大好き」と話していたカルチャー面も魅力でした。
結果的に、その会社には今の会社に入るまで長くお世話になり、社会人としての立ち振る舞いやITエンジニアとしての基礎は、ほとんどそこで培われました。
── IT未経験からのスタートだったと思いますが、最初の1〜2年はいかがでしたか。
上田:最初の1〜2年は本当に苦労しました。現場には先輩もいましたが別業務担当で、実質的には他社の上長のもとで一人で仕事を覚えていくような状況でした。プログラミングにも不慣れで、資料作成や文章も得意ではなく、エクセルやソースコードが夢に出てくるような日々でした。それでも「諦めたくない」という思いで、一から勉強を続けていました。
── 続いて宮下さんにも、新卒で入社された会社について伺いたいです。
宮下:最初は「ゲームが好き」という理由からゲーム業界のプログラマ職を中心に受けていましたが、高校時代からプログラミングをしてきた人との実力差を痛感し、「この土俵で戦うのは難しい」と感じるようになりました。
そこで、「情報系の知識を生かしながら、大きな経験を積める場所」を軸に企業を探し、大企業と多く取引のある大規模SIerを選びました。大手旅行会社のリニューアルプロジェクトで宿泊予約システムや料金計算システムなどに携わり、「普段使っているサービスの裏側がどう動いているのか」を知れたのはとても面白かったですね。
一方で、実務の多くはテスト要員や設計書・資料の更新、新卒のフォローといった役割で、頭をひねってものづくりをする機会は限られていました。2年ほど続けるなかで「これが本当に自分の成長やスキルにつながっているのか」というモヤモヤが大きくなり、転職を考えるきっかけになりました。
集英社アーツ&デジタルに転職した理由
── 集英社アーツ&デジタルへ入社された経緯について教えてください。
宮下:「もっとスキルを身につけたい」「自分の成長を実感できる環境に行きたい」という思いから、知人の紹介を通じて転職活動を始めました。そのなかで出会ったのが、現在の前身にあたる「Project8」です。
Project8では、二次新卒のようなポジションで「既存メンバーの育成や教育スキルの向上」「次世代人材の育成」を目的とした募集を行っており、自分としてもさまざまな経験を積ませてもらえる環境を求めていました。お互いのニーズが一致し、入社を決めました。
上田:私は、小さい頃からメディア業界に興味があり、集英社のコンテンツも大好きでした。SESとして集英社のプロジェクトに関わる中で、仕事自体がとても楽しく、「もっと近い立場で関わりたい」という思いが強くなっていきました。
外部のSESではなく、グループの一員としてより深く事業に関わりたい。その思いから転職を決断し、前職にも早めに相談したうえで円満退社という形で送り出してもらいました。そして2025年4月、集英社アーツ&デジタルへ入社しています。
入社後の取り組みと変化
── 正社員として入社してからの変化について教えてください。
上田:転職後もコードを書く開発業務は継続していますが、徐々にプロジェクトのバックアップや支援など、俯瞰した立場で動くことを意識するようになりました。協力会社も含めて「チーム全体をどう見るか」という視点が強くなったのは大きな変化です。
また、フルリモート中心だった前職から一転し、出社機会が増えたことで、編集・運用・企画など、これまで画面越しには見えていなかった職種の人たちの存在を肌で感じられるようになりました。「こんなに多くの人が事業を支えているんだ」と実感できたのは、オフィスで働くからこそ得られた気づきだと思います。
宮下:今まで経験し得なかった、バックエンド・フロントエンド・インフラなど、各分野のプロフェッショナルから多くのことを学び、女性誌媒体の改修案件やデータウェアハウス構築など、前職では得られなかった経験を一気にさせてもらいました。
当時は業界の前提知識も足りず、後から「あの時の説明はこういう意味だったのか」と理解が追いつくことも多く、悔しさや申し訳なさも感じましたが、その分、今の自分の土台になっていると感じています。
現在の役割と、開発組織のかたち
── 現在のお二人の役割と、業務の比重について教えてください。
宮下:開発チームは「技術チーム」「運用チーム」「マネジメントチーム」の三つに分かれており、私はマネジメントチームのリーダーを務めています。他部署との窓口としての折衝や、エンジニアが参加する定例会での情報共有・整理といった「組織がうまく機能するためのマネジメント業務」が、仕事の約六割を占めています。
残りの時間は、女性誌媒体の横断的な課題対応や、他部署からのスポット相談に対して自ら動いたり、エンジニアと協力して形にしたりする役割を担っています。
上田:私は、媒体ごとの案件調整や、新規開発プロジェクトの進捗管理・リソース調整・課題抽出と解決策の検討など、「プロジェクトが円滑に進むための支援」が業務の中心です。イメージとしては、プロジェクトマネジメント寄りの業務が全体の約七割。残り二割程度で組織体制や予算調整などのマネジメント業務を行い、一割ほどは自分自身でもコーディングをしています。
エンジニア出身として現場感覚を持ち続けることは大事だと思っているので、「完全に手を動かさなくなる」のではなく、あえてコーディングの時間を確保するようにしています。
集英社アーツ&デジタルで働く魅力
── 御社で働く魅力について教えてください。
上田:一番は、集英社という大きなコンテンツホルダーの近くで、多様な分野に関われる点です。私たちはメディア開発を担っていますが、アーツ全体を見ると、編集サポートをする人、Webディレクターやデザイナー、リアルショップの運営に携わるメンバーなど、本当に多様な職種が存在します。
集英社の強力なIPやコンテンツを、技術や体験として世の中に届けていく過程の一部を担えることは、大きなやりがいです。出版という伝統的なビジネスとデジタル技術が融合していく現場で、新しい価値をつくる挑戦ができる環境だと感じています。
宮下:「集英社のコンテンツに関われる」というのはやはり大きいですし、さまざまな業界から集まったプロフェッショナルと一緒に仕事ができるのも魅力です。一つの案件を完遂するには、単一のスキルだけでなく複数の専門性が必要になるため、互いの強みを持ち寄りながらチームで成果を出していく感覚があります。
エンジニアとしては、技術選定の裁量を大きく任せてもらえることもポイントです。エンジニアが「これがやりやすい」と感じる技術・環境を自ら選び、そのうえで集英社からの要望をどう実現するかを考えられる。技術者としての楽しさと責任を両立できる現場だと思います。
技術選定とAI活用の具体例
── 技術選定やAI活用について、直近の取り組みを教えてください。
上田:組織全体として、AIを活用したソフトウェア開発に積極的に取り組んでいます。開発現場では GitHub Copilot、Claude Code、Devin、エージェント型AIなどを導入し、開発効率や品質の向上を図っています。
象徴的な事例として、集英社の創業100周年記念企画プロジェクトの一環として立ち上がった「集英社OTOコンテンツ」というサイトがあります。集英社のオーディオブックや音声コンテンツを紹介するサイトなのですが、ここではサイトデザイン以降の工程をエージェント型AIをフル活用して進めました。従来のようにすべてを人手でコーディングするのではなく、AIを前提にした開発プロセスにチャレンジしたプロジェクトです。
企画自体は集英社からいただきますが、「どういう技術で実現するか」「どこまでAIを活用するか」は、基本的に私たち側で決めています。IPやコンテンツの魅力を最大限に引き出すための実装方法を、チームで議論しながら形にしていけるところに、大きなやりがいを感じています。
組織の強みと、改善に向けた課題意識
── 現在の組織の良いところと、課題と感じている点を教えてください。
上田:良いところは、「横のつながりが非常に強い組織」である点です。媒体ごとの保守やプロジェクトごとの開発など、チームは分かれているものの、チーム間に壁のようなものはほとんどありません。困りごとがあれば、媒体や担当をまたいで気軽に相談できます。
協力会社も含めると、開発メンバーは五十名近く。WorkAdventureというバーチャルオフィスを使って日常的にコミュニケーションを取りつつ、リアル出社のメンバー同士はその場でも話ができます。半期に一度の技術勉強会では三〜四十人が集まり、社員と協力会社の垣根なく知見共有や懇親を行っています。
また、「振られたタスクだけをこなす」のではなく、「もっと良くするには?」を自分たちで考え、AI活用などの新しい取り組みを提案・実行してくれるメンバーが多いのも特徴です。
宮下:課題として感じているのは、業界全体にも言えることですが「属人化」がどうしても発生しやすい点です。媒体ごとに特色があり、要望に応えていく中でシステムや仕組みが増えていくと、「このシステムは〇〇さんしかメインで触れない」といった状態が生まれやすくなります。
「自分たちで技術選定できる」という良さも、裏を返せば属人化の要因になり得ます。そこで、トラブルや課題が発生した際には、チケットやイシューに経緯・対応内容を残し、他のエンジニアからも見える状態にすることを徹底しようとしています。
うまくいった話だけでなく、「どこでつまずいたか」「どんな失敗があったか」も含めて記録に残し、同じ問題が起きたときに別のメンバーでも対処できる状態にしていく。属人化をゼロにすることは難しいですが、「組織の資産」に変えていく取り組みを進めているところです。
今後の目標と、求める人物像
── 今後の目標について教えてください。
上田:一つ目は、ウェブセキュリティ意識の向上です。メディアを扱う立場として、情報セキュリティは事業の信頼性に直結します。エンジニアだけでなく、編集部・制作ディレクター・普段ウェブに直接関わらない方々・協力会社など、「関係者全員」がセキュリティの重要性を理解し、日々の業務で意識できる状態をつくっていきたいです。
中長期的には、現在メインで担当しているファッション誌関連だけでなく、マンガ・アニメ・スポーツなど、集英社が持つ多様なコンテンツ領域にも技術・ノウハウを広げ、デジタル領域の価値創造に貢献したいと考えています。AIを活用した開発の知見も、集英社グループ全体の成長に還元していければと思っています。
また、「エンジニアが継続的に成長できる組織」をつくることも大きなテーマです。アプリ・インフラなど各自の強みを生かしつつ、役割を固定し過ぎず、フルスタックに活躍できるような環境を整えていきたいです。
── どのような方と一緒に働きたいか、教えてください。
上田:メディア業界に興味があり、集英社のコンテンツやIPに触れながら開発することを楽しめる方と働きたいです。指示されたタスクをこなすだけでなく、「もっと良くするには?」を一緒に考え、提案しながら取り組める方。新しい技術やAIにも積極的にチャレンジし、技術的な好奇心を持って行動できる姿勢は、チームにとって非常に心強いです。
開発チームは五十名近くのメンバーで構成されているので、コミュニケーションを大切にし、助け合える関係を築ける方とは、きっと相性が良いと思います。
宮下:私は「プロフェッショナルとして仕事に向き合える方」と一緒に働きたいと考えています。どれだけ努力しても成果に結びつかなければ評価にはつながりませんが、一方で、成果の可否に関わらず、完成に近づけるために全力を尽くす姿勢も非常に重要だと思っています。
途中で諦めることなく、最後までやり切る。自分のサービスや担う役割に誇りを持って向き合える。その姿勢を持つ方は、プロフェッショナルとしてとても魅力的です。
そのうえで、集英社のコンテンツに興味や愛着を持ち、開発者として成長意欲を持って取り組める方とは、より良いものづくりができると感じています。現在はポテンシャル採用の枠も設けており、「メディア×テックの現場で挑戦してみたい」と思ってくださる方には、ぜひ応募していただきたいです。



