白川 洸陽氏|株式会社CAMPFIRE 執行役員CTO兼Livefor株式会社 代表取締役
大卒でWEB事業を起業後、CyberAgent America inc、ヤフー株式会社にて複数サービスを指揮する。その後VIVITA株式会社など複数のスタートアップを経て株式会社フィナンシェにリードエンジニアとして参画。2023年株式会社CAMPFIREの子会社であるLivefor株式会社の代表取締役に就任。同年10月、株式会社CAMPFIREの執行役員CTOに就任。
株式会社CAMPFIREについて
── 御社の事業内容を教えて下さい。
弊社は、ジャンルや規模を問わず、誰でも挑戦できる国内最大のクラウドファンディングプラットフォーム『CAMPFIRE』を運営しています。
白川さんのキャリア
── 当時はどんな子供(小学校〜高校)でしたか。
そうですね、なかなか聞かれない質問ですね。多分、やんちゃだったと思います。特に小学生の頃は、自分の楽しいことを優先していたように思います。宿題はあまりやらず、外で元気に遊ぶのが好きでした。
一方で、今にも通じることですが、モノづくりが大好きだった記憶があります。当時、家にはファミコンなどがなかったので、段ボールなどを使って自分で作ったものを父親に見せ、それで遊んでいました。モノづくりが好きで、よくやっていたと思います。
── 大学ではどんなことをされていたのですか?
情報工学系だったので、プログラミングを多く学びました。教育用のPascalから始まり、CやJavaも学びましたし、ハードウェアや機械語に近い記述言語も扱いました。
一方で、ロボット製作にも取り組んでいました。しかし、途中からWebサイトに非常に興味を持つようになりました。学校には公開できるスペースがあり、それを活用していたのは多分4人くらいで、私はその一人として非常に熱中していました。
夏休みなどはほぼ毎日大学に行き、コンピュータールームで作業していました。当時、独学でDHTMLを学び、学校のWebサイトにいろいろと公開していました。最終的には、ある企業からオファーをいただくこともありました。
── 起業のきっかけはありましたか?
そうですね。初めてパソコンに触れたのは高校生のときで、大学のサイトを閲覧するためでした。ギークの人たちとは違って、これがきっかけでパソコンに興味を持ち、大学では情報関係を学ぶことにしました。パソコンを使ってモノづくりができることに魅力を感じました。特にWebサイトは作ってすぐに反映されるので、自分が作ったものをすぐに人に見せたり、遊んでもらったりできるのが面白かったです。
また、私は映像系の活動も行っていて、俳優や映画監督としての活動もしていました。そのため、最初から就職するという選択肢は全く考えておらず、自分で何かをやってみようという気持ちから起業しました。
── その後、複数のキャリアを歩まれておりますがそれぞれの経緯と取り組みを教えてください。
起業した後も常に10数件の案件を抱えて仕事をしていました。その中で、大きなオファーが来ました。当時、ソフトバンクがまだiPhoneを扱っていないガラケーの時代に、ソフトバンクウィジェットというプロジェクトが立ち上がりました。そのウィジェットを引き受ける会社からオファーが来たので、ジョインすることにしました。それが会社にジョインした初めてのきっかけだったと思います。
当時扱っていた技術としては、Googleマップの登場に伴うAjaxや、まだFlashがあった時代のFlash Liteなどがありました。モバイル化が進む中で、各キャリアの公式サイトもできてきた時代でしたね。その会社で幅広く技術に取り組んでいました。
その後、技術の流れがソーシャルゲームに移行しました。そのタイミングでジョインしていた会社にもソーシャルゲームの案件が来ました。某有名なアニメの案件で、年末から年始にかけて数週間でほぼ全てを作り上げました。これが私のソーシャルゲームの初めのきっかけでした。
その実績が評価され、ミクシィの子会社であるコミュニティファクトリー社の当時の代表の松本さんからオファーをいただき、そこにジョインしました。そこでソーシャルゲームを続けていました。
さらに、そのタイミングでCAMPFIREのCOOの藤﨑とも初めて出会いました。
起業していたとはいえ、会社組織の中でプロジェクトマネージャーを担ったのは初めてで、藤﨑から数値の見方などを教わりました。その後、ソーシャル要素はスマホゲームに移り、当時世界戦略としてグリーなどのソーシャルゲームプラットフォーマーが海外で立ち上げをしているなか、サイバーエージェントアメリカにジョインし、サンフランシスコ現地でゲームの開発を行っていました。
その後も、ヤフーやVIVITA、スタートアップ企業の立ち上げフェーズに関わりました。
── 株式会社CAMPFIREのグループ会社であるLivefor株式会社の代表取締役に就任し、同年10月には株式会社CAMPFIREの執行役員CTOに就任されましたが、その経緯を教えてください。
VIVITAの後、自分で会社を立ち上げました。これまでいろんなモノづくりを経験し、企業に参画する中で、働くことや生きること、モノづくりの環境について深く考えてきました。自分はやりたいことをやりたい、モノづくりがしたいという思いが強く、現代社会でそれが本当にできるのか疑問に感じていました。個人でやれることはツールも整ってきて可能になりましたが、大きなことを複数人でやりたいと思った時には、やりづらい社会だと感じました。そこで、自分でどうにかしたいという思いから起業しました。
その後、その会社を離れることになりましたが、家入と話すきっかけがあり、そこでCAMPFIREの目指す未来がアプローチは違うけれども、自分の目指す未来と近しいことを知りました。最初はお断りしましたが、プロダクト作りに集中できる環境を整えるので「一緒にやりたい」という提案を受けました。これまでの起業経験で、資金調達や事務作業がモノづくりに集中する上での障壁になると感じていたので、この提案は魅力的でした。また、エンタメ領域でコミュニティを作りたいという思いがあり、クラウドファンディングはコミュニティ作りの一環だと思っていました。情熱を持った人々がプロジェクトを立ち上げ、それに対して支援者が集まるコミュニティを支えるのがコミュニティマネージャーのスキルであり、CAMPFIREと一緒にやることが近道だと思い、ジョインすることにしました。
株式会社CAMPFIRE 入社
── 就任後、どのようなことに取り組みましたか。
私が入社したのは昨年2023年の4月で、グループ会社設立が6月、CTO就任が10月です。立ち上がった時点ではLiveforはまだ始まっていませんでした。まずはCAMPFIREの現状をフラットに見たいと思い、エンジニアとしてコードを含めて全般的に見ていきました。その結果、CAMPFIREはクラウドファンディングを築き上げてきたマーケティング面が強い一方で、技術的な負債やエンジニア組織としての課題が見えてきました。
一番目についたのは技術的な負債です。これまではマーケティング主導でタスクが進められてきましたが、その結果、開発の品質に課題が生じていました。具体的には、Railsで全部やっていたため、競合や作業の重複が発生していました。そこで、フロントエンドとバックエンドを分離することから着手しました。
また、CTOに就任する際にはテクノロジー推進部を設立し、全社的なセキュリティや技術の俯瞰的な管理を強化しました。
── 現在の白川さんの業務内容を教えてください。
そうですね、業務の割合はフェーズによって変わってきています。就任当初は、業務の8割がCAMPFIRE、2割が子会社のLiveforという感じでした。現在はLiveforのプロダクトローンチが控えているため、Liveforの割合が増え、逆転し始めています。
CAMPFIREのCTOとしての業務は、大きく3つの軸で進めています。技術戦略、セキュリティ戦略、技術組織戦略です。
技術戦略では、技術的負債の解消、予算の策定、業務効率の向上などを担当しています。セキュリティ戦略では、セキュリティ文化の醸成、インシデント対応、セキュリティ技術の導入を行っています。技術組織戦略では、技術文化の醸成や人材育成に力を入れています。具体的には、技術ブログの発信、社内外の技術イベントの開催、技術コミュニティの構築などを通じて技術文化を高めています。また、採用戦略やオンボーディング、スキル開発のトレーニング、キャリアパスの整備、公平な評価制度の構築なども行っています。
── 株式会社CAMPFIREとLivefor株式会社の事業の魅力をお聞かせください。
CAMPFIREは既にしっかりと成り立っているプラットフォームですが、その魅力の一つは、個人や団体が情熱を持って挑戦することをしっかりとサポートする人たちが集まっている点です。情熱を持った人たちが集まり、その挑戦を支援するコミュニティが形成されています。このようなプラットフォームは社会にも大きく貢献しており、従業員の方々もその理念に共感しています。その結果、プロダクトもどんどん改良され、技術的なフォローアップによってさらに進化しています。
一方、Liveforについてですが、私が以前やっていた会社のように、やりたいことを実現できる社会を作りたいという思いがあります。クラウドファンディングと同様に、複数人でコミュニティとして取り組むことが重要だと考えています。現在の社会は営利法人が主流ですが、経済成長だけを考えると、社会問題や環境問題、地域の問題、クリエイティブな活動に対して十分に対応できないことがあります。
Liveforは、みんなで支えるコミュニティが立ち上がり、経済だけでなく社会や地域の課題を改善していくことも目指しています。コミュニティを構成しているのは人です。コミュニティの中で輝き、自分たちの生き方を誇らしく思えるような社会を作りたいと考えています。会社に所属する以外の生き方の選択肢を提供し、人々が自分の生き方を誇りに思える社会を目指しています。Liveforの魅力は、コミュニティベースで社会を作り、人々が輝いて生きていけるような新しい選択肢を提供することにあります。
現在のエンジニア組織について
── 現時点の組織体制や人数を教えて下さい。
私が見ている範囲でお話しますと、大きく二つのユニットがあります。一つはプロダクト開発ユニット、もう一つはテクノロジー推進ユニットです。
プロダクト開発ユニットは、クラウドファンディングのオーナー向けのサービスを強化するチームや、支援者側をサポートするチーム、CAMPFIREコミュニティの開発を担当するチームなど、プロダクトに直接関わる部分を担当しています。
テクノロジー推進ユニットは、私が立ち上げた部門で、情シス的な技術サポート、内部統制、SREチームなど、全社的に横断するような役割を担っています。
── 現在の開発組織の良い点(特徴や魅力的なところ)と課題点(ここを改善すればもっと良くなるなど)があれば、お聞かせください。
まず、良い点としては、人が素晴らしいというのが一番です。共感してくれる人たちが集まっているのは非常に良いことです。もう少し業務的な話をすると、技術的な負債に向き合う姿勢がエンジニアだけでなく会社全体に浸透してきています。具体的には、エンジニアたちが積極的に「こういう施策をやりたい」と提案し、それを実行に移している点が素晴らしいと思います。また、採用も順調で、新しく入ってきた方々がスムーズに業務に順応できるように、オンボーディングのプロセスがしっかりしています。これを組織として良くしていこうと自主的に動ける方が多いのは弊社の魅力ですね。
課題についてですが、メンバーの問題というよりは、誰がリードするかという点が重要だと思っています。これまではCTOがいなかったため、この部分が課題だと感じています。そこで、私はこの役割を担っていきたいと考えています。
組織があるときに、どこに向かっていくのかというビジョンが事業サイドだけで見えていなかった部分を、エンジニア組織として明確にしていきたいと思っています。私は、日本を代表するテックカンパニーを作りたいという目標を掲げています。何度もこの言葉を繰り返すことで、その理念が浸透し、文化が築かれていくと思います。
まずは旗を立てて、そのビジョンに対して共感を得ることが大切です。テックカンパニーとは何か、その意義について話し合い、各メンバーの思いを共有することが重要です。来年度には、オフサイトで全体会議を開き、60人ほどのメンバーが集まる予定です。この会議でビジョンを共有し、一致団結して技術ビジョンや技術ロードマップを策定することができれば、より一層の加速が期待できると考えています。
── 既にコミュニケーションの面で何か具体的な取り組みをされていますか?
テクノロジー推進ユニットについては、ユニット長やプロダクト開発ユニットの長も含め、グループマネージャーやリーダー全員が入っています。私がこのユニットの中で何度も「テックカンパニー」としてのビジョンを強調しています。
全体で情報共有を行う際にも、その都度テックカンパニーとしての方向性を強調しています。
今後の目標
そうですね、目標といえばやはりクラウドファンディングの進化かなと思っています。現在のクラウドファンディングは、プロジェクトが立ち上がるときに支援を集めるという点で捉えられがちです。しかし、プロジェクトが成功した後も継続して支援や活動が必要な場合があります。
そのため、クラウドファンディングを単なる資金調達の手段ではなく、持続的なコミュニティとして見なすことが重要だと思っています。プロジェクト終了後も活動が続けられるような仕組みを作ることで、社会全体に対して良い影響を与え、みんながハッピーになると信じています。
この目標を達成するためには、テクノロジーを活用して進化させていくことが重要だと考えています。テックドリブンのアプローチで、クラウドファンディングをより持続可能で影響力のあるものにしていきたいと思っています。
── グロースウェル社のEQ診断でいうとどのコンピテンシーに当てはまる方と一緒に働きたいですか?もしくは今の開発組織に必要なタイプはどれにあたりますでしょうか?(図の中からお選びください)もちろん、全てのタイプが必要だとは思いますが、お答えください。
合わないタイプとしては、上司の指示通りに行動するガーディアンのようなタイプは、当社の文化にはあまり合わないと感じています。セージやストラテジストも今の組織にはマッチしないと感じています。
優先順位としては、サイエンティストのように実際に手を動かすことが好きな人や、新しいことにチャレンジする意欲があるインベンターの人が必要です。
── 最後にどのような人と一緒に働きたいか教えてください。
まず、CAMPFIREの情熱を持っている人たちに共感できる方と一緒に働きたいです。自分が直接実行できなかったとしても、他の人を応援したいという気持ちを持っている人、自分の持っているスキルや知識を活かして一緒にプロジェクトを進めていきたいという思いを持つ人は特に歓迎します。
また、テックドリブンの観点からは、Web3やAIなどの新しい技術に対して貪欲であることが重要です。これらの技術がどのようにコミュニティベースの社会を作っていくのか、その手段はまだ確立されていません。そのため、新しい技術に対して貪欲であり、興味を持って取り組める人が求められます。
特にWeb3に関しては、技術だけでなく、文化や宗教、法律など様々な分野を考慮しなければなりません。これは非常に面白い分野であり、社会を変えたいという強い意欲を持つ方にとっては大きな挑戦であり、やりがいのある仕事だと思います。そういった意欲を持つ方と一緒に働きたいです。