山口 徹 氏|株式会社タイミー 執行役員CPO

東京工業大学中退後、2003年にWeb制作会社でエンジニアキャリアを開始。2005年にガイアックスに入社し、リードエンジニア、マネージャーを務める。2007年にサイボウズ・ラボでR&Dエンジニアとして研究に従事。2009年にディー・エヌ・エーに入社し、Mobageやスマートフォンアプリの開発を推進。2015年に事業副本部長、2016年に専門役員に就任。2018年にスポーツ事業本部システム部部長に。2020年にベルフェイス入社、CTO兼CPOを兼務し、2021年に取締役執行役員就任。個人として、マギステル代表取締役で複数の技術顧問を兼任。現在は株式会社タイミー執行役員 CPO。

株式会社タイミーについて

── 御社の事業内容を教えて下さい。

当社は、「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするスキマバイトサービス『Timee』を運営しています。働き手は、働きたい仕事を選ぶだけで、履歴書や面接なしで即座に働くことができ、勤務後すぐに報酬を受け取ることができます。事業者は、欲しい時間や求めるスキルを設定するだけで、条件に適した働き手が自動的にマッチングします。また、事業者向けのシステムでは、労務管理、給与管理、税金面などのサービスをパッケージで提供しています。他にも、『Timeeトラベル』や『タイミーキャリアプラス』など、複数の事業も展開しています。

山口さんのキャリア

──  当時はどんな子供(小学校〜高校)でしたか。

小学校の頃は、サッカーや他のスポーツも楽しんでいましたが、同世代の友人たちがゲームをすることが多かったので、私もゲームに興味を持ちました。その中で自分でもゲームを作ってみたいと思い、MSXを手に入れてプログラミングを始めたのが最初のきっかけでした。中学時代は、プログラミングに触れる機会はあまりありませんでした。バスケットボール部に所属して部活動に取り組んだり、進学のために勉強に励んだりして、普通の中学生活を送っていました。高校時代は、バンド活動がメインでしたね。

── 東京工業大学工学部電気電子工学科中退〜ソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートするまでの経緯を教えてください。

東京工業大学工学部電気電子工学科に進学しましたが、あまり勉強はせずに軽音サークルでの活動や家庭教師や塾講師などのアルバイトが主な活動でした。大学2年生頃からバーテンダーに興味を持ち、約7年間、バーテンダーとして働きました。結果的に大学は中退することになりましたが、その後、独学でプログラミングを学び、ソフトウェアエンジニアとしてのキャリアをスタートしました。

── その後、株式会社ガイアックス、サイボウズ・ラボ株式会社、株式会社ディー・エヌ・エー、ベルフェイス株式会社へのキャリアを歩んでおりますが、それぞれの入社の経緯とどのような業務を行ったか教えてください。

当時、エンジニアコミュニティで知り合ったガイアックスの方に誘われ、転職を検討していたこともあり、興味を持って転職しました。ガイアックスでは約2年間、さまざまなプロジェクトに携わりながら、オープンソースコミュニティなどとも交流する機会がありました。自らも発表する機会があり、ギークな環境での仕事に魅力を感じ、記念受験のつもりでサイボウズ・ラボを受験しました。最初は受からないと思っていましたが、合格したことに驚きました。サイボウズ・ラボではR&Dに2年間従事しましたが、事業やユーザーとの関わりを持ちたいという思いが再確認され、その後、ディー・エヌ・エーに入社しました。

私は元々SNSが大好きであり、当時未開拓のゲームプラットフォームであるモバゲーを作ることに興味を持ち、入社を決意しました。実際にはモバゲーのオープンプラットフォームやソーシャルゲームの基盤システムを構築しました。また、任天堂との資本業務提携の中で、ワールドワイドなプラットフォームを構築するプロジェクトにも関わりました。これらのプロジェクトを経て、スタートアップに挑戦する機会が訪れたと感じ、ディー・エヌ・エー時代に役員で一緒だった小林賢治さんが設立したファンドの投資先であるベルフェイスを助けてくれないかとお声をいただき参画しました。最初はCTOとして入社しましたが、途中からCPOの役割も担うことになりました。ベルフェイスでの経験は非常に貴重であり、卒業してしまいましたが、今でも応援しています。

── これまでで一番印象に残った出来事はありますでしょうか。

個人的に大好きな任天堂さんが一番思い入れがありますね。まさか自分のキャリア上でこんなに大きな取り組みをさせてもらえるとは思いもしませんでした。かなり根幹の部分も一緒に開発することもでき、非常に貴重な体験ができたことは私にとっては大きかったです。

── 山口さんは複数社の技術顧問を行っておりますが、きっかけや活動目的はありますでしょうか。

ディー・エヌ・エー在籍時に副業が解禁になったことが元々のきっかけでした。当時からスタートアップに興味があったのと自分が外でどれだけ通用するのか力試し的な要素も含め始めましたね。ちょっとした技術のサポートから組織作りやプロダクト戦略に関わっています。最近では、技術顧問というよりも、カウンターパートが社長などの役職になるケースも増えています。最終的には、スタートアップを支援する立場になりたいと考えており、事業に集中できるようにするために、やらなくても良いことを見極め、支援できるよう努めています。

── その後、株式会社タイミーの執行役員VPoTとしてジョインしておりますが、ジョインまでの経緯を教えて下さい。

元々タイミーは転職先の候補には入っていませんでした。とあるきっかけでCTOの亀田と知り合ったこと、その後に社外取締役の渡辺さんと繋がったり、既に退任されていますが社外取締役だった内河さんとも元々知り合いで(内河さんが社外取締役に就任していくことは知りませんでしたが)、そういったご縁がありましたね。色々と話を聞いていると非常に社会的意義があると感じました。なので入社を決めました。

株式会社タイミー 入社後

── ジョイン当時VPoTとしてどのようなことに取り組みましたか。

VPoTとして、組織課題に取り組む中で、ミドルマネジメントの不在やプロジェクト組織の小規模さなどに直面しました。そのため、CTOと協力してミドルマネジメントの役割を分担し、組織の改革とエンジニアの採用に集中しました。特にエンジニアの採用は最大の課題であり、急速な改革と改善が必要でした。

個人的に苦労したのは、ドメイン理解や既存メンバーの理解です。どの業界への転職でもそうですが、HR業界の一般的な知識も身に付けなければいけませんでしたし、その中でスポットワーク事業も新しいことなので、一からキャッチアップする必要がありました。既存メンバーの把握は、本名とは別にハンドルネームがあり、ハンドルネーム文化で誰が誰だかよくわからず、対応関係付けは最初非常に苦労しました。未達で終わってしまいましたが、当時のプロダクトメンバー全員と1on1を行い、6割ほどやりました。最近ではNotionやSlackのディスプレイネームの箇所に本名+ハンドルネームの書き方に統一したので、可視化できて良い世界になったと感じます。

── キャッチアップ方法はどうされてますか?

全体像や根幹をどう抑えるかが一番肝だと思っています。表層的に上から下までなめるようなキャッチアップの仕方にすると、途端にラビリンスに入ってしまうと思ったんです。なので、HR業界の場合、4つの種類に分けられるので、それぞれがどういったニーズを満たしているか、どのような契約形態で誰がどう関わっているかの違いを比較してみると、「なるほど。こういうふうになっているんだ」とわかりやすいので、大元の構造を理解することをいつも心がけています。また、タイミーへの入り方は、CTOの亀田がかなり手厚くオンボーディングしてくれたことでスムーズに入れましたね。すごく感謝しています。役職者に対しても手厚くオンボーディングした方が立ち上がり速いよねと思いましたね。

── その後、VPoTからCPOに就任しておりますが、就任までの経緯を教えて下さい。

当時、CPOが不在だったため、社長の小川がCPOも兼務している特殊な状況でした。1年前の状況でも、事業サイズで言えば社長がCPOを兼任しているような規模ではありませんでした。各プロダクトマネージャーはタレント性が強く自立はしているもののまとまりがない状態でした。さらに、組織全体の戦略が不在だったため、組織化することで伸び代を感じました。亀田と私でフォーメーションを検討した結果、テック領域をCTOの亀田に、CPOを私にすることが最適解だろうという結論に至り、今のポジションに就任しました。

── 半年ほど経過しましたが実際どうでしたか?

役割を分けたことは、やはり良かったと思います。考え方やアプローチもお互いに密にシンクしていますし、仕組み化自体も進行しています。また、プロダクトマネージャーも増えて明らかに以前よりもできることが広がっているので、純粋に良かったと思いますね。

── 現在の山口さんの業務内容を教えて下さい。

時期によって変動はありますが、執行役員や本部長の仕事内容が結構な割合を占めており、CPOと同じぐらいの割合ですね。CPOとしては、DoPの大歳と一緒に仕事を分解して組織作りや短期的な戦術を遂行しています。それ以外の中長期の戦略や単年の戦略や各戦術における評価も対応しています。

元々は、VPoTという立場でしたが、現在はテック面は亀田に任せており、エンジニアリングも最近VPoEとして赤澤が入り、組織もだいぶ整ってきましたので、完全に切り分けることになりました。

現在のエンジニア組織について

── 現時点のエンジニアの組織体制や人数を教えて下さい。

70名ほどの開発組織です。マトリックス組織になっていますね。チームトポロジーの本に書かれているようなコンセプトがベースです。また、名前が便利なので、Spotifyのモデルにおけるネーミングを借用していますが、実際にはSpotifyモデルを採用しているわけではありません。あくまで組織のカットの仕方でラベル付けしています。基本的には、それぞれのチームがディスカバリーから開発、そしてデリバリーまでを自己完結して進めるようになっています。

── 現在のエンジニア組織の良い点(特徴や魅力的なところ)と課題点(ここを改善すればもっと良くなるなど)がありますか。

学習文化は非常に浸透していますね。各所で輪読会などがゲリラ的に行われており、先ほどお話ししたSpotifyモデルにおけるギルドがサークルのような活動を活発に行っています。学ぶことが本当に根付いていますね。課題としては、プロダクトの体験をさらに向上させたいと思っていますが、開発のリソースが限られているところがあります。例えば、ユーザーのサイクルが複雑で、アプリインストールから勤務後のレビューの書き込みまでに多くのプロセスがあります。このようなプロセスを効果的に設計して、ユーザーのリテンションを高めていかなければなりません。また、マッチングの部分には相性の要素が多く含まれているため、チューニングの余地が大きいです。さらに、事業者側にはまだまだ拡大の余地がありますが、価値がうまく伝わっていない部分もあるので、そこも改善していきたいと考えています。現在はプロダクトのUXを改善するチームはありませんが、メンバーの善意によって細かい指摘された箇所に対応しています。フィードバックチャンネルからの要望やアイディアを適切に評価し、組織全体で取り組むかどうかを判断していく必要があります。

 

今後の目標

短期的な目標は、タイミーの事業をさらに拡大することです。そのためには、私たちの事業がどのような人々にどのような価値を提供しているのかを明確に把握する必要があります。また、ボトルネックが存在する場合は、適切なソリューションを提供することを目指します。さらに、フィードバックサイクルを確立するために、情報収集や評価制度などの仕組みを構築することも重要です。

中長期的には、現在の事業のみならず、持続的な成長を遂げられるように新しい事業を展開したいと考えています。戦略的に新たな事業を立ち上げることは容易ではないため、他社にはない独自のアプローチを模索し、既存事業との関連性を考慮した事業ポートフォリオを構築していきます。

── グロースウェル社のEQ診断でいうとどのコンピテンシーに当てはまる方と一緒に働きたいですか?もしくは今の開発組織に必要なタイプはどれにあたりますでしょうか?(図の中からお選びください)

ダイバーシティの観点から、様々な人と一緒に働きたいと思います。その中でも、『6:スーパーヒーロー』のような方が入ってくれると良いと思います。ただし、『4:ガーディアン』や『8:セージ』のようなタイプとは相性が良くないかもしれません。保守的な傾向のある方は、弊社には合わない可能性もありますね。

(ちなみに私自身の特性は『ストラテジスト』と『7:デリバラー』の間ぐらいですね。)

── 最後にどのような人と一緒に働きたいか教えてください。

タイミーのミッション『「はたらく」を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる』、ビジョン『一人ひとりの時間を豊かに』、そしてバリュー『①理想ファースト②オールスクラム③バトンツナギ④やっていき』に共感してくれる方と一緒に働きたいです。また、自分のテリトリーを決めてしまうのではなく、どんどん染み出していけるような人を求めています。