未開拓の分野への挑戦!デジタル治療(DTx)とAI診断プロダクトを展開するヘッジホッグ・メドテックのCTOが語るエンジニア組織とは?

木村 正宏氏|株式会社ヘッジホッグ・メドテック CTO

2003年にSIerに入社してサーバ管理やSEを担当。2010年から楽天グループ株式会社にて、エンジニア、PM、PdM、テックリード・マネジャーとして新規事業の立ち上げや楽天市場で開発・運用に従事。2020年からDXのスタートアップにて、プレイングマネージャーとして従事。 

株式会社ヘッジホッグ・メドテックについて

弊社の事業は、テクノロジーを利用して医療を身近に提供することをテーマにしています。主に、プログラム医療機器の提供を目指しており、その中でもデジタル治療(DTx)とAI診断という領域に注力しています。

まず、片頭痛の治療用アプリや頭痛のAI診断を行う治療用アプリの開発に取り組んでいます。これらのプロダクトは生活に密着したサービスであり、日常生活を支えることを目的としています。

また、世の中には多くの片頭痛を抱える方々がいます。そういった方々に対して、我々のサービスが役立つようにと考えています。さらに、女性の活躍を支援するために、PMS(月経前症候群)症状の治療用アプリの開発も並行して進めています。

木村さんのキャリア

私は小さい頃から明るく、テンションが高い性格でした。クラスの盛り上げ役のようなポジションで、誰かに頼まれたり、煽られたりすると引き受けてしまうタイプでした。何事も「やってみよう」と前向きに挑戦する性格でしたね。

そうした性格は、今の仕事にも繋がっていると思います。また、私の父はエンジニアで、日立製作所の開発部に所属していました。新幹線の計測機械を開発したり、趣味でスピーカーを作ったりと、まさにエンジニアの鏡のような人でした。そんな父の姿を見て育ったことで、私もモノ作りへの興味が自然と芽生えました。

当時、パソコンやインターネットが急速に普及していくのを見て、自分も何か作りたいと思うようになりました。これらの技術は誰でも挑戦できる分野であり、その成長を目の当たりにして、「自分もプログラムを使ってモノを作りたい」と強く思うようになりました。これが、私がこの業界に入るきっかけとなりました。

大学では経営工学部という学科で経営に関する問題を工学的アプローチによって解決することを学びました。数学的分析で経営を分析する方法、工場のラインを効率よく配置して生産性を高める方法、人間工学に基づいたものづくりの方法などを、プログラムで計算する情報処理から機械工学を利用して解決するといった内容で幅広い範囲を学ぶことが出来て今でも役立っている事があります。

学科の多くの学生は情報処理系の仕事に進むことが多かったのですが、私が卒業した当時は就職氷河期で、仕事を見つけるのが非常に難しい時期でした。プログラムを書ける仕事を希望していましたが、多くの会社から不採用となりました。やっと内定をもらったのが菱友システムビジネスでした。運よく採用され、そこでITエンジニアとしてのキャリアが始まりました。

最初に働いた会社は、主な業務形態がプリンタの保守業務やIBMのコア・パートナーとして運用系の業務が多かったのですが、ちょうど事業の幅を広げるタイミングで新しいITエンジニアを育成して事業を拡大していくタイミングで参画することができました。最初の仕事はサーバー管理者として働くことでした。

ゼロックスの基幹システムのサーバー管理者として、何千台ものサーバーを毎日目視でチェックし、ディスク交換やバックアップを取り、バッチ処理の管理や基幹システムの入れ替えなどを行いました。最初はプログラムを書く仕事を希望していましたが、サーバー管理者としての経験も非常に有益だったと感じています。スタートアップでは得られない経験を積むことができました。

やはりプログラミングをしたいという思いが強くありましたので、友人がいた小さな受託のスタートアップに入りました。「給与も安くていいから、プログラミングを存分にやらせてくれ」とお願いして、そこでプログラミングを本格的に開始しました。

私は大学も二浪しており、他の人に遅れを取っていると感じていました。そのため、一時期はほぼ寝ずにプログラミングに没頭し、スキルを高めました。小さな会社でしたのでフルスタックエンジニアとして、インフラのOSインストールやサーバー構築など、幅広い業務を経験しました。この経験が現在の私につながっています。プログラミングだけでなく、上流工程の要件定義やプロジェクトマネジメントも担当するようになりました。

途中からヤフー(現LINEヤフー株式会社)に常駐するようになり、日中はヤフーで働き、夜は会社に戻り、請負開発を行うという生活をしていました。ヤフーでは、当時日本No.1のポータルサイトの運営に関わり、不動産サービスの開発を担当しました。地図を使った不動産探しのページをゼロから作りました。

その後、自身のスキルも上がってきたこともあり、楽天に入りました。楽天では、新しいサービスの立ち上げチームに所属し、後に楽天市場のフロントエンドのマネージャーとして働きました。ここで、メガベンチャー企業の環境で多くの経験を積むことができました。

特にテストや設計の重要性を学び、細部にわたる設計や要件調整の経験を積みました。また、マネージングのスキルや成長のために頑張るマインドも培いました。

一通りの経験を積んだ後、自分でサービスを作りたいという思いが強くなり、次にスタートアップの経験をしようと考え、楽天の友人が立ち上げたCO-NECTという会社に入りました。しかし、入ってから「自分で会社を立ち上げたほうが良い」という思いが強くなり自分の会社を立ち上げました。

自分の会社を立ち上げた理由は、自分の考えたサービスやプロダクトを提供したいという思いと、アイデアはあるけれどIT技術がない情熱を持った人たちをサポートしたいという思いでした。

この業界に入って「この業界はいいな」と本当に思ったのは、2社目のときです。プログラミングをやりたいという思いで入った会社で、O2O(オンライン・ツー・オフライン)のサービスを連携させるプロジェクトに関わりました。Web上でのサービスとAPIのデータベースを連携し、物理的なものと繋げるというものでした。私はバックエンドを担当しましたが、そのシステムが完成して実際に使われているのを見たとき、ものすごく感動しました。

自分が作ったものが実際に使われていて、お客様と話してそのデータが役立っていると実感したとき、非常に感動しました。これが、この業界で頑張っていこうと決意するきっかけになりました。

株式会社ヘッジホッグ・メドテック 参画

ちょうど私が会社を辞めたタイミングとヘッジホッグの立ち上げのタイミングが重なっていたんです。そのタイミングで業務委託の仕事を始めようと思っていたところ、共通の知り合いを通じてヘッジホッグから連絡がありました。最初は業務委託として要件定義を手伝うつもりでしたが、徐々にプロジェクトに深く関わるようになり、また経営陣の川田さんや石坂さんとの相性も良く、この会社に正式に入社することを決めました。

プロダクトに惹かれた理由は、治療用アプリが医療機器として薬事承認を受け保険適用され、病気を治す薬と同じように提供できるという点でした。これが非常に画期的だと感じました。また、川田さんや石坂さんと話していると、非常に前向きで相性が良さそうだと感じ、一緒に働くのが楽しいと思ったのも大きな理由です。

最初は業務委託として要件定義と開発を手伝っていましたが、やがて責任を持ってプロジェクトを進めるようになり、CTOとして正式に就任しました。業務委託と社員の違いは責任の重さだと思います。業務委託の立場では、プロジェクトリーダーとしても限界がありますが、正式なポジションであれば、チームを引っ張る責任を持てます。

CTOとして徐々にチームを作り上げ、誰が抜けても同じクオリティで仕事を続けられるようにすることを目指して取り組んでおります。これは非常に重要なポイントで、組織の安定性を確保するための基盤となります。

業務は主にプロジェクトマネジメントが20%、開発が30%、PdM(要件調整など)が30%、組織作りや開発計画が15%、そして薬事対応が5%という割合で行っています。薬事対応に関しては、製品を市場に出すための準備が必要で、品質管理システム(QMS)などの要件を満たすための開発体制を整える必要があります。これらの業務は今後増えていく見込みです。また、ミーティングの時間も含めて、業務には波があり、現在は要件定義や組織作りに重点を置いている時期です。

私たちの事業の一番の魅力は、未開拓の分野に挑戦していることです。2014年に薬事法が改正され、ソフトウェアのアプリも薬と同じように薬事承認を取れるようになりました。しかし、この分野はまだ新しく、法律改正から約10年しか経っていません。その間に薬事承認を取得したプロダクトはわずか3つしかありません。各社がこの分野に参入しているものの、ゴールに到達したサービスは非常に少なく、まさに未開拓の領域です。これまでアプリやサービスが治療用として認定されることはなかったため、この分野での取り組みは非常にやりがいがあります。ヘルスケア系のアプリは多く存在しますが、私たちの事業は命題をもって人々の役に立つという大きな意義があります。これが他のサービスとは全く異なる点であり、私たちの事業の魅力だと感じています。

現在のエンジニア組織について

現時点では、PdMが2人、PMが1人、デザイナーが2人、アプリエンジニアが2人、Webエンジニアが1人、バックエンドエンジニアが1人、インフラエンジニアが1人という構成です。ただし、多くのメンバーが兼務しているため、実数では6〜7人ほどです。

私自身もPdM、PM、バックエンドエンジニアとして兼務しています。私たちは基本的にフルスタックエンジニアを中心に採用しており、幅広いスキルを持った優秀なエンジニアが状況に応じてカバーできる体制を目指しています。このように柔軟に対応できるメンバーで構成されていることが、私たちの組織の特徴です。

これは順番に話すのが難しいですね。たくさんのことに取り組んでいるので。ただ、まずはフルリモートを基本とし、コアタイムを設けないようにしています。最初はコアタイムの取り組みを考えていましたが、夜勤を避けたいという声が上がり、昼間にシフトすることになりました。そういったメンバーの意見を取り入れながら、柔軟なチーム作りをしています。現時点では週に2回の定例ミーティングを行い、そこでコミュニケーションを図っています。

フルリモートでコアタイムを設けないためには、量とスピード、品質の認識を合わせてコミットしてもらうことが重要です。そういうメンバーを選んでいるからこそ、柔軟な働き方が可能になっています。

社員と業務委託の区別をなくし、同じように扱うことで、互いにハッピーな関係を築けるようにしています。今の時代、社員も業務委託もリスクが変わらないので、垣根を越えて協力する形にしています。

さらに、全社の情報をフルオープンにすることも取り組みの一環です。業務委託の方にも全ての情報を共有し、透明性を持たせることで、安心して働ける環境を提供しています。ドキュメントに残しておくことで、情報格差をなくし、みんなが平等に情報を共有できるようにしています。

重複してしまいますが、開発組織の良い点としては、フルリモートやコアタイムなしの働き方が非常に魅力的です。

課題としては、私自身の役割も変化してきており、マネジメントに専念するために、メンバーを増やしたり、組織体制を改善したりしています。プロジェクトマネジメントに特化した新しい人材を育てることや、現在のメンバーにそのスキルを身につけてもらうことが課題です。みんなでチャレンジし、良いプロダクトを作り上げるために努力しています。最終的には、誰が入っても誰が抜けても同じクオリティを保てるチームを目指しています。

今後の目標

私たちの今後の目標は、まず第一に頭痛で困っている患者さんにサービスを届けることです。これが一歩目であり、私たちの主軸となる目標です。

弊社の場合、どのタイプの方も合うと思いますが、その中でもしっかりと自分で新しいことにチャレンジし、その分野にコミットしていくタイプの人を求めているので『2:ビジョナリー』と『3:インベンター』を求めています。

明るくてチャレンジ精神がある人と一緒に働きたいと考えています。常に前向きな姿勢で新しいことに挑戦できる人が理想です。また、各自の役割に応じて責任を持って仕事を遂行できる人も求めています。