柔軟性と革新性で挑むエンジニアリング――NoSchool CTO丸山氏の挑戦

丸山 裕介 氏|株式会社NoSchool CTO

高等専門学校を卒業後、LIFULL(当時: 株式会社ネクスト)に入社。エンジニアとしてのキャリアをスタートし、主にホームズの開発や新規事業の立ち上げに従事。2019年にNoSchoolへCTOとして正式にジョイン。現在はオンライン家庭教師サービス「マナリンク」の技術基盤を構築しながら、柔軟性と革新性を兼ね備えたエンジニアリング組織の構築に注力している。

株式会社NoSchoolについて

弊社では、「マナリンク」というオンライン家庭教師サービスを運営しています。簡単に言うと、受験期を控えたお子さんをお持ちの親御さんや、学業に課題を感じている親御さんがネット検索を通じて弊社のサイトを見つけてくださいます。そこで先生にお問い合わせをいただき、その後、ZoomやGoogle Meetなどを使ってオンラインで指導を受けることができるというサービスです。

ビジネスモデルとしては、受講料を学びの対価として親御さんにお支払いいただき、弊社はその中から手数料をいただく形になっています。そのため、たくさんの受講が行われれば行われるほど、弊社のビジネスが成長するという形のモデルになっていますね。

一つ大きな特徴は、親御さんが先生を直接探すことができる仕組みを提供している点です。従来の家庭教師サービス、例えば「家庭教師のトライ」さんのようなところでは、資料請求をすると運営側が先生を割り当てる形式が一般的です。これはリソースを効率的に管理するためで、合理的な理由があるのですが、私たちのサービスでは、先生をすべてサイト上で自由に探せるようにしています。

例えば、自分が学生時代に戻って考えてみても、自分で受講する先生を選べる経験なんてほとんどなかったと思います。塾でも先生を選べることは稀でした。それが当たり前だと思われている中で、私たちは親御さんや生徒が自分に合った先生を自由に選べるという点で差別化を図っています。

はい、先生には登録時に厳格な審査を行っています。本人確認書類の提出はもちろん、過去に先生としての経験がある方を中心に選考しています。また、必要に応じて経歴の確認を行い、さらに数回の面接を実施して、教育に対して本気で取り組む覚悟があるかどうかを確認しています。

また、1分半程度の自己紹介動画を作成してもらい、それをサイト上に公開しています。これによって、保護者の方が先生の雰囲気や人柄を直感的に感じられるようにしています。さらに、認定制度や評価システムを導入し、保護者の方から授業の内容について評価をいただいて、それを反映させています。このように、先生の質を高めながら、生徒や親御さんにとって選びやすい環境を整えています。

基本的には先生ご自身の個性が重要ですが、その個性を引き出すために私たちもサポートを行っています。先生が応募されてからサイトに掲載されるまでのプロセスでは、3回ほど面接の機会があります。

1回目の面接ではヒアリングを通じて、先生の教え方や指導スタイルを深掘りします。例えば、「自分のスタイルが厳しすぎるかもしれない」という懸念をお持ちの先生がいれば、それをどう伝えれば良いかを一緒に考えます。その内容をもとに、自己紹介動画の原稿を作成していただきます。

2回目の段階では撮影サポートを行います。先生によっては、慣れていないと目線が定まらなかったり、カンペを見ながら話してしまうことがあります。そこで、「画面を見ながら話しましょう」などアドバイスをしながら、良い動画を撮影できるようサポートします。

3回目では、サービス全体の説明や立ち位置を確認し、先生がどのようにサイト上で表現されるかを最終的に調整します。また、登録後も他の先生の成功事例を共有する勉強会を開催し、ノウハウのシェアを行っています。これによって、先生たちがより良い指導を提供できる環境を整えています。

丸山さんのキャリア

そうですね、小学校や中学校の頃は、勉強と将棋ばかりしていた記憶があります。小学校3年生から将棋を始めて、今でも続けているんですよね。もう20年以上になります。当時はあまりアウトドアな感じではなく、基本的にインドア派でした。友達と遊ぶときも家の中でスマブラをやったりして、ずっと屋内で過ごすタイプでしたね。

最初は「将棋のプロになれたらいいな」と思ったこともありました。ただ、実際にやってみると自分よりすごい将棋指しがたくさんいることを知って、「これは厳しいな」と思いました。その後、中学校くらいになると将棋から少し離れて、文房具の企画をやりたいと思うようになりました。勉強している中で文房具ってすごく身近な存在で、ついこだわりたくなるんですよね。ノートやルーズリーフも少し高価なものを選んでみたり、テープのりに感動したりしていました。「こういうアイデアで勝負できる業界って面白そうだな」と思ったのがきっかけです。

そうかもしれません。当時から「ちょっと工夫するだけで全然使い方が変わる」ということに魅力を感じていました。それが現在の教育事業で、「仕組みを少し変えるだけで学びの環境が大きく変わる」という発想に繋がっているのかなと思います。

プログラミングという概念自体を知ったのは高専に入ってからで、それ以前は全く知らなかったんです。高専を選んだ理由は、親からの勧めが大きかったですね。「高専なら一度受験すれば20歳まで進学できるからコスパがいい」と言われて、「確かに」と思いました。当時、関西では高校無償化が進んでいて、高専もその恩恵を受けて学費が非常に安かったんです。それが魅力的で、お得感があると感じました。

入学前は家にパソコンすらなく、プログラミングのことも全く知りませんでした。高専に入れば、自分と同じような初心者が多いだろうと勝手に思い込んでいたんですが、実際には違いました。同級生たちは中学時代から「ITに詳しい人」として知られているような子ばかりで、「これはやばい」と思いましたね。授業もそのレベルで進むんじゃないかと不安になり、置いていかれないように必死でした。

1年生の夏休みに、学年を横断したプログラミング講座があったんです。それに同級生が参加すると聞いて、「自分も行かなきゃ」と参加しました。そのときに初めて、「プログラミングってめちゃくちゃ面白いな」と感じたんです。

1年生の通常授業では基礎理論がメインで、フローチャートの書き方や分岐の概念を学ぶ程度でした。でも、その講座のおかげで実際にコードを書く楽しさに目覚めました。それからは学校のパソコン室に入り浸りでしたね。

正直に言うと、最初はプログラミングを仕事にするという発想自体があまりありませんでした。趣味としてすごく面白いというくらいの感覚でした。ただ、4年生のときにスタートアップでインターンを経験して、「プログラミングを仕事にしている人がいるんだ」という現実を知り、それもありだなと思うようになりました。

就職活動では、学校に来ていた求人票の中に興味を引くような開発をしている会社がほとんどなかったので、それらをすべて無視して、リクナビを使って大学生に混ざって就活しました。その中で見つけたのがLIFULL(当時はネクスト)です。自社サービスを運営していることや、新規事業立案制度が整っていることが魅力的でした。また、エンジニアが技術課題に時間を割ける制度があるなど、ホワイトな働き方ができそうだと感じました。

はい、そうです。教育×ITに興味を持ったのは高専時代の経験がきっかけでした。当時、ゲームを作るのが趣味で、主人公が単位を集めて卒業するというゲームを1年間ほど作っていましたが、だんだん虚しさを感じてきました。それで、テスト勉強に使えるツールを作ってクラスメイトに配るようになり、「仕事にするならこういう方向がいいのでは」と思うようになりました。

ただ、新卒で教育系の会社に入ると、その会社特有の思想に染まってしまうのではないかと懸念していました。新卒のタイミングは一番影響を受けやすい時期だと思うので、フラットな視点で教育×ITを考えられる環境を選びたいと考えた結果、LIFULLのような新規事業制度がある会社に決めました。

1年目は顧客対応系の部署に配属されました。「何でもやります」と意気込んでいたら、本当に何でもやる部署に入ってしまったんです(笑)。主な業務は顧客からの問い合わせ対応で、過去のコードをひたすら探し、「この挙動が原因だと思います」と回答するような仕事でした。エンジニア歴ゼロの自分にはかなり厳しい仕事でしたが、良い経験になりました。

1年後、その部署が解散になり、各部署が問い合わせ対応の責任を持つ方針に変更されました。それで、LIFULLの主要収益源である「ホームズ」の開発を担当する部署に異動しました。そこではゴリゴリと開発を進める日々を過ごしましたね。

3年目に新規事業提案が通り、ホームズの開発を続けながら新規事業にも取り組むことになりました。その結果、3年間が本当に忙しすぎて、細かい記憶があまり残っていないくらいです(笑)。新規事業では、教育×ITに繋がるサービスを模索しながら、並行してホームズの開発にも全力で取り組みました。この経験が今のキャリアの基盤になっていると思います。

そうですね、一番印象に残っているのは新規事業を進めていたときの経験です。当時、私はWebサービスを作り、それをToC向けに展開しようとしていました。しかし、収益の予測が全然立たないという話になり、「ToB向けに切り替えて早くキャッシュを作ってほしい」と言われました。

私はエンジニアなので、正直ToB向けの営業には抵抗がありました。「営業なんてやりたくない」と思いつつも、新規事業ではそうも言っていられないので、「やるしかない」と腹をくくりました。それで営業の先輩を捕まえて、「メールの書き方や営業の進め方を教えてください」とお願いしました。業務後に会議室に集まり、メールの書き方からトークの進め方まで教えてもらいましたね。

自分で100通ほどメールを送り、そのうち10社ほどアポイントを取ることができました。訪問した際にはパソコンを開いて、「こういうツールを作っています」と説明する形で、3ヶ月ほど営業を続けました。この期間が人生の中で唯一、営業活動を本格的にやった時期ですね。

NoSchoolに来てからはToCサービスなので、法人様に直接お伺いすることはほとんどありません。そのため、あの経験はとても貴重だったと思います。ただ、振り返ると本当に大変でした。

当時はオンラインでブレスト(ブレインストーミング)を行うサービスを開発していました。例えば、Miro(当時RealtimeBoard)のようなツールを参考にしていたのですが、日本ではまだその概念が浸透していない時期でした。訪問先で「普段アイデア出しはどうされていますか?」と質問しても、「うちには何の関係があるの?」と返されることが多かったです。不動産サービスの会社を訪問する中で、ブレストツールの価値を1時間の中で伝えるのは非常に難しかったですね。

営業活動を通じて、ToOB向けのビジネスが決して簡単ではないことを肌で感じました。この経験があるからこそ、現在の事業で「ToOB向けにシフトしたらどう?」と軽く言われても、「そんな簡単な話ではない」と実感を持って説明できます。また、営業の視点や解像度を持てたことで、事業全体を俯瞰する力が養われたと思います。

あの経験がなければ、現在のようなバランス感覚で事業を進めるのは難しかったかもしれませんね。

きっかけは代表の徃西からTwitter(現:X)経由で連絡をいただいたことです。当時、私はLIFULLで新規事業を進めながら、ホームズの開発や営業、さらには副業でNoSchoolに関わるという生活を送っていました。その結果、体調を崩すこともあり、「どこかで区切りをつけないと持たないな」と感じていました。

ちょうど良いタイミングでNoSchoolからオファーを受けたんです。タイミング的に重なったことと、もともと教育事業に対する想いもあったため、正式にジョインすることを決めました。

実はこれ、自分でもよくわからないんです(笑)。本当に謎で、当時の自分の日記や記録を見返しても、なぜCTOを目指すと書いたのか理由が全く見つからないんですよね。

新卒1年目に「キャリアデザインシート」というものを会社で書かされる機会がありました。「何年以内にこうなりたい」と書くシートなんですが、そこに「教育事業のCTOになる」と書いていたんです。でも、当時の私は「CTO」という言葉自体をほとんど知らなかったはずなんです。

CTOという言葉を初めて知ったのは、LIFULLの選考過程で、CTOの長沢さんにお会いしたときでした。3次面接の後に30分ほどお話しさせていただいたのですが、その場で初めて「CTO」という役職があることを知りました。それにもかかわらず、その1年後にはキャリアデザインシートに「教育事業のCTOになる」と書いていた理由が、自分でも全然わからなくて(笑)。

おそらく、エンジニアリングの世界で「エンジニアのトップ=CTO」という漠然としたイメージがあったのだと思います。それと、自分の性格的に「一度言ったからにはやらないと」という気持ちも大きかったと思います。

実際、新卒1年目のころから「PMを任せてもらいたい」と上司にお願いして、プロジェクトを回す経験を積ませてもらったり、高い目標を掲げることで周囲がそれに合わせてサポートしてくれる環境ができた実感もありました。

最初はロジカルに考えたわけではなく、勢いで目標を掲げた部分もあったと思いますが、そのおかげで得られた経験や結果は大きかったと思います。結果的にCTOになれたのは、自分が掲げた目標に周囲が応じてくれたおかげだと感じています。

株式会社NoSchool 入社後

そうですね、就任してから最初の2年くらいは本当に大変でした。正社員が2人目として入社したのが2022年くらいのタイミングで、それまでは私と業務委託の方たちだけで運営していました。業務委託の方々も、週1や週3といった関わり方だったり、特定の領域だけ担当されていることが多かったんです。

その結果、インフラの維持や重要な実装作業はすべて自分でやらなければいけない状況でした。一言でいうと「エンジニアリング全般を全部やる」ような状態で、デザインもSEO対策もすべて自分で手を動かしていました。

ウェブサービスとして動かすために必要なことを、全部自分でやるしかないという状況でした。逆に言えば、その当時はマネジメントらしいマネジメントはほとんどやっていませんでしたね。とにかく手を動かして技術的な課題を解決することがメインでした。

そうですね、月並みな話ではありますが、エンジニアとして3年やっていると、なんとなく全体の仕組みが見えてくるんです。Webサービスというのは基本的にフロントエンドがあって、バックエンドがあって、その間をつなぐ仕組みがある、というグラデーションのようなものですよね。

ただ、いざ自分が「最終意思決定者」になった瞬間、その重さを身をもって実感しました。それまではフロントエンドの実装をしていても、誰かがレビューしてくれたり、万が一ミスをしても誰かが気づいて直してくれる環境でした。しかし、最終的な責任を持つ立場になると、誰もミスを指摘してくれない。すべてが自分の判断にかかってくるんです。この違いは思った以上に大きかったですね。

例えば、インフラの選定、フロントエンドの実装、デザインの優先度付けなど、大きなことから小さなことまで全てを自分で決めなければならない。特に最初の半年間は、「本当にこれでいいのか?」という迷いが常にありました。前職の「ホームズ」は非常に大きなサービスだったので、そのまま同じやり方を小規模なスタートアップに適用することはできません。それでも、そこで得た知識や経験を活用しながら、この規模の会社ではどの選定が最適なのか、一つひとつ決めていく必要がありました。そのたびに孤独を感じることも多かったですね。

一番大きかったのは、情報発信を始めたことですね。CTOになった当初はTwitterのフォロワーが600人程度でしたが、現在では4800人を超えるまでになりました。また、技術記事も最初の頃は数本しか書いていませんでしたが、今では150記事以上公開しています。

これが結果的に、自分の周りに技術的に助けてくれるネットワークを築くきっかけになりました。業務委託の方を見つけたり、新しい知見を得たりする機会にもつながりました。情報を発信することで、自分が困ったときに相談できる相手を作ることができたんです。

例えば、Twitterで「土日に一緒に勉強しましょうよ」と声をかけてもらって、一緒にキャッチアップするような関係が作れました。また、インフラやシステムの話をする際も、最強のエキスパートに相談するのではなく、自分より少し詳しい人と気軽に話せる関係を作ることで、実践的な知識を得る機会が増えました。

発信を続けることで、「あなたの技術記事を参考にしています」と言われる機会も増え、それがさらに僕自身が質問をしやすい関係を築くきっかけにもなりました。お互いに情報を共有し合うことで、ただ孤立して業務を進めるだけでなく、ネットワークの力を借りながら進められるようになったことは、本当に良かったと思っています。

現在は正社員5人のチームで開発を進めています。この少人数でどれだけ成果を出せるかが、現時点での注力ポイントですね。ビジネスサイドの重要度が高い時期なので、開発チームとしても優先度の高い部分に集中しています。

私自身、開発作業に多くの時間を割いていて、全体の60%ほどは手を動かしている感じです。それに加えて、ソースコードのレビューやリファクタリング、再発防止策の設計も行っています。最近の例では、表示条件を逆に実装してしまうという単純なミスがありました。この種のミスはサービスが複雑化してくると見逃されやすく、運用にも影響が出てきます。

このまま放置すると、近い将来に同様のミスが頻発する可能性が高いと感じたため、臨界点を超える前に対応することにしました。具体的には、テストコードを充実させ、メンバーが簡単にセットアップできる仕組みを整えました。さらに、それをドキュメント化して共有し、開発の中でスムーズに使えるようにしました。

メンバーの反応は非常に良く、すぐにテストコードを導入してくれました。「意外と簡単に書けました」と言ってもらえたのは嬉しかったですね。ただ、その背景には私が事前に仕組みを整えたことが大きいのですが(笑)。

私の役割は、重要度は高いが優先度が低くなりがちな課題に着手し、再発防止や効率化のための土台を作ることだと思っています。それができることで、チーム全体がスムーズに動ける環境を整えられていると感じます。

マネジメントに関しては、特別な取り組みはあまりしていません。朝会や週1回の定例会で進捗や問題点を共有する程度です。現在のメンバーが非常に優秀で、各自が自律的に動けるので、細かな指示をする必要がありません。その分、開発や改善作業に集中できています。

そうですね、会社と事業の魅力は表裏一体だと思っていますが、一番強く感じるのは、「先生の人生に対して非常に大きなウェイトを持つサービスを展開している」という点です。

例えば、「マナリンク」では年間600万円を稼いでいる先生がいらっしゃいます。もちろん一部のケースですが、こうした事例を増やしていきたいと考えています。このサービスがなくなると、そういった先生はその収入を失うことになります。それだけ影響力のあるサービスを提供しているというのは、なかなか特別なことだと思います。

また、私たちのサービスの特徴として、単に家庭教師サービスに登録して案件を待つだけではなく、先生自身が自分のページを作り、指導内容を公開し、生徒を探して授業を進めていくという、自律的な仕組みを提供している点があります。この基盤をエンジニアとして作り上げることに、大きな価値を感じています。

自分たちが作った仕組みが、直接先生の生活やキャリアを支えるだけでなく、生徒やその家庭にも良い影響を与えられる点が大きなやりがいですね。たとえば、受験はご家庭にとって一生に一度の大切なイベントです。その準備をサポートするサービスを提供する以上、真摯に向き合う姿勢が求められます。社内全体に「先生やご家庭のためになることをしよう」という意識が根付いているのも、この事業の魅力だと思います。

私自身、今後どんなキャリアを歩んでも、これほど特定の個人に大きなインパクトを与えられるサービスに関わることは稀なんじゃないかと思っています。このサービスが与える影響力の大きさ、それを直接支える基盤作りに携われることが、この会社や事業に関わる大きな魅力だと感じています。

現在のエンジニア組織について

正直に言うと、「この体制にしました」というよりは、「このメンバーが揃ったことでこの体制になりました」という表現のほうが正しいですね。私自身、会社に入ってから5年が経ちますが、そもそも数名規模の会社にジョインすること自体がすごいことだと思っています。そのため、意図的にこの体制を作ったというよりも、柔軟に対応してきた結果こうなったという感じです。

はい。2〜3年前に業務委託を活用するのをきっぱりやめました。もちろん、過去には業務委託の方々にサポートしていただいた時期もありましたし、現在でも「正社員を目指したい」という意思を持つ方には積極的にチャレンジしてもらっています。しかし、正社員のみの体制に切り替えることで、責任の所在が明確になり、組織の安定性が高まったと感じています。

最近の例だと、テストが得意なメンバーがいて、バグを見つけるのが非常に上手なんです。そのため、その方にテスト関連の作業を中心にお願いすることにしました。さらに、テスト環境で使いにくい部分があれば、その改善も担当してもらっています。

また、組織運営において「EM(エンジニアリングマネージャー)」という役割も設けています。ただ、弊社でいうEMは一般的な意味合いとは少し異なるかもしれません。抽象度の高いタスクを任せた際に、自分で具体的なやり方を考え、進められる方を指しています。こういった柔軟な対応が、組織運営の特徴ですね。

他のメンバーには、抽象度の高いタスクを求めるわけではありませんが、例えばフローチャートを書いたり、プロセスを明確化する形でタスクを渡しています。メンバーごとにプロファイリングを行い、その人に合ったやり方でタスクを振り分けています。その結果、齟齬があった場合でもメンバー自身がセルフ検知できるように仕掛けることを意識しています。

決して一律的に「こうする」と決め込むのではなく、メンバーそれぞれの特徴や状況に応じて体制を調整しています。その柔軟さが、結果的にチーム全体の効率や成果につながっていると感じています。

そうですね、まだ具体的な形にはなっていない部分もありますが、直近では弊社の収益モデルをスリムにする取り組みを考えています。現状、先生が指導コースをサイト上に公開し、それを親御さんが選んでお問い合わせをし、支払いが発生した時点で指導義務が発生するという流れになっています。

たとえば、月4回の授業を2万円で契約した場合、その契約に基づいて弊社のシステム上で授業データを管理します。その後、保護者の承認フェーズがあり、実際に授業が行われたかを確認した上で、先生への支払いを行うというプロセスです。この一連の流れが弊社の収益エンジンの中核となっていますが、複雑なロジックが絡んでいるため、これを整理しようとしている段階です。

まず、契約の履行を検知するために、データを過去にさかのぼって追跡する必要がある点が課題です。また、同じ先生と親御さんの組み合わせで複数の契約が発生するケースもあります。たとえば、英語の授業を契約した後に「化学も教えられる」ということで新たにコースを追加する場合です。

さらに、授業だけでなく、チャットでの質問対応やメンタリングといった追加オプションもあるため、契約の種類が多様化しています。これらをすべて管理し、先生の収益を正確に計算するためには、システム側で膨大なロジックを組む必要があります。しかし、この柔軟性が弊社の強みでもあり、先生や親御さんにとっての大きな魅力になっています。

まず、設計や管理のアプローチについてチーム内で意見を出し合っています。たとえば、「設計をガチガチに固めて安定性を重視しよう」という意見と、「それでは他のメンバーが設計を理解できず、共通化が進まない」といった意見がぶつかり合っています。

私自身は少し引いた立場で議論を見守りつつ、「どの方向がチーム全体にとって最適か」を考えています。最終的には、この複雑な仕様をスリム化することで、ビジネス側が安心して運用できる環境を整えることを目指しています。

開発組織の良い点は、柔軟性が高いところですね。たとえば、「テストコードを増やしていこう」や「手動テストの戦略を立てて進めてほしい」といった提案に対して、「自分はそういうのしない派です」と拒否するような人がいません。みんな、状況に応じて柔軟に対応してくれるんです。個性はもちろんありますが、行動面では変化に適応してくれる点が魅力的だと思います。

課題としては、個性が強いメンバーが多い分、チーム全体での「温度感の調整」が難しいところですね。たとえば、ソースレビューの際に、あるメンバーが「これは直しても直さなくてもいい」と判断すると、基本的に直さないことが多いんです。悪意があるわけではなく、必要以上に手を加えない合理的な考え方だと思います。

ただ、他のメンバーはそういう場合でもしっかり直してくれることが多いので、全体の水準をもう少し揃えられたら、もっと良くなると感じています。この温度感の違いをどう調整するかは、現在の課題ですね。

今はある意味、それぞれの個性がユニークな形で活かされていますが、それを「おもしろいね」で終わらせるのではなく、一定の基準や温度感を共有することで、より円滑に回せる組織になるのではないかと思います。今後もそのバランスを意識しながら改善していきたいと考えています。

今後の目標

短期的な目標としては、課題の発見から解決までが自律的に回るような風土を築くことですね。現状では、課題の発見はメンバー全員ができているのですが、その解決方法の立案や実行は、経験のある層に偏りがちです。例えば、課題を見つけた際に、「これは大きすぎて自分には解決できない」と感じてしまう場合があります。でも、実際には解決が1行の修正で済むことも少なくありません。

各メンバーが自分の得意不得意に応じて、自分なりの解決策を見つけられるようになると、もっと気楽で前向きな組織になると思います。そうした風土を目指したいです。

会社としては、「先生を指名できる」という仕組みをもっと当たり前のものにしていきたいです。まだ業界全体では、「お問い合わせをして会社から先生を割り当ててもらう」という形式が主流です。しかし、弊社では、先生を自由に選べるという仕組みを大切にしています。それをより広く浸透させ、オンライン家庭教師の新しいスタンダードを作りたいと思っています。

私が考えるに、「インベンター」と「デリバラー」のタイプが必要だと思います。現在、弊社には「保守」タイプのメンバーがある程度揃っています。そのため、次に加わる6人目のメンバーとしては、「革新」の要素を持つ方が必要だと感じています。

EQ診断の八つのコンピテンシーを見たとき、「感情」と「理性」のどちらを重視すべきか悩みました。ただ、現状では「理性」に近い方が、組織全体を進化させる上でフィットするのではないかと考えています。

また、理性と感情のバランスも非常に重要だと思っています。感情だけで突っ走る「ビジョナリー」や「スーパーヒーロー」のタイプでは、意思決定や議論の場で軋轢が生じる可能性があります。そのため、理性を持ちながら革新を推進できる方が理想的です。

組織が進化するためには、現状をしっかり保守しつつ、新しい挑戦を進めていくバランスが不可欠です。革新の視点を持ちながらも、実行力を兼ね備えた方と一緒に働けることを期待しています。

やはり柔軟な人や変化に適応できる人が理想的だと思います。さらに少し深掘りすると、意外と前職や過去の経験に引きずられることが多いと感じています。弊社のメンバーも中途入社が多いのですが、最初のうちは前職での当たり前がこちらの前提に持ち込まれることがあります。それには良い面もあれば、悪い面もあります。

そうしたバイアスに自分で気づき、学習しながらアップデートできる人がいいですね。例えば、私自身も前職で150人規模の環境にいたとき、何でもかんでもトゥーマッチにしようとした経験があります。でも、それが必ずしも現状にフィットしないと気づいて調整していくことが大切だと思っています。

別に「弊社の色に染めたい」というわけではなく、その都度、その状況で何が正しいのかを考えられる人と一緒に働きたいですね。そういう適度な柔軟さと学習意欲を持つ方が、組織にとっても良い影響を与えてくれると思います。