稲井 学 氏|株式会社Housmart   CPO

日本大学芸術学部放送学科卒業後、映像編集スタジオ、音楽制作スタジオ勤務を経て、WEB制作のスターティアラボ株式会社(現:クラウドサーカス株式会社)に入社。スターティアラボにて、受託のWEB制作から自社のCMSのUIデザイン制作を経験。以後、UI/UXデザイナーとして年数本のSaaSサービスの立ち上げに携わる。自身のマンション購入体験をもとに不動産の購入体験をもっと良くしたいという思いから、Housmartに参画。現在CPOとしてPropoCloudや新規プロダクトの推進を担う。

株式会社Housmart について

── 御社の事業内容を教えて下さい。

Housmartは不動産仲介会社向けの営業支援システム『PropoCloud(プロポクラウド)』を提供しています。特に不動産売買仲介に特化した独自の物件データベースを保有し、その中から顧客の希望条件に合った物件を自動的に提案する営業支援システムです。

稲井さんのキャリア

──  当時はどんな子供(小学校〜高校)でしたか。

元々は京都に住んでいましたが、両親が家を購入するタイミングで滋賀県に引っ越すことになり、小学校から高校までは滋賀県で過ごしました。小学校の頃は、落ち着きがなく活発なタイプで、よく先生に注意されていましたね。引っ越した先が学校から遠く、一旦帰宅すると遊びに出られないので、学校帰りによく友達と野球をしたり遊んでいました。中学時代は野球部に所属し、高校時代はバンドブームの時代で音楽も好きでしたので友達とバンドを組んでその活動に打ち込んでいました。

── 大学時代〜1社目の映像制作スタジオに入社するまでの経緯を教えてください。〜1社目の会社に入社するまでの経緯を教えてください。

高校時代からバンド活動を行っていましたが、その他に映画も好きで映画の映像制作に携われる大学かつ、国語と英語は得意だったので2科目で受験できる大学を選択し、日本大学芸術学部に進学しました。また、単純に都会に早く出たいという気持ちもありましたね。大学に入学してからは日々音響技術の勉強をしつつ、映像制作スタジオでアルバイトをしていました。映像制作スタジオでは、編集の下準備やテープをデジタル化する仕事から始まりました。実は、仕事に慣れてきた頃にアルバイトしていた会社から編集を本格的に学んでみないかと誘われ、見習いのような形で大学卒業後に本格的に関わることになりました。

── 1社目の会社を退職し、音楽活動に専念したとWantedlyの記事を拝読しました。当時についてお話しお聞かせください。

今ではないと思いますが、私が勤めていた制作の仕事は拘束時間も非常に長く、1本の制作が全て完了するまで部分的に対応している方も終われずにずっと待ち続けるような環境でした。勿論、それを好む方もいますが、私はプライベートの時間でバンド活動もしていたのでその時間が取れないことがわかり、映像制作の仕事に区切りをつけ、音楽活動を本格的に始めることにしました。

── その後、Web制作、デジタルデザインを独学で身につけ、スターティアラボ株式会社(現:クラウドサーカス株式会社)のWeb制作部門にて第二のキャリアをスタートされていますが、その経緯や独学の方法等も当時のことを教えてください。 

バンド活動の中でホームページやLPを自分で作成していました。元々、大学時代から映像編集で複雑なソフトも扱っていたため、画像編集ソフトにもすぐに慣れました。さらに、興味が湧いてきたことから、専門学校に入校しました。アカデミーで学びながら、知り合いの音楽スタジオの社長からサイトの制作依頼もいただき、実務を通してスキルを磨いていきました。これらの経験を積み重ねる中で、Web制作会社にアピールできるだけの成果物が作れるようになり、仕事として本格的に始めるためにスターティアラボ株式会社(現:クラウドサーカス株式会社)にアルバイトとして加わりました。

── 当時を振り返っていかがでしょうか。またアルバイトから正社員になったタイミングも伺えますか。

そうですね。最初はデザインを評価されるよりもコーディング面を評価いただきました。当時、テーブルコーディングで複雑な組み方が必要でしたが、私はその性質に合っており、細かい対応を効率的に行い、他の方よりも多くの結果を残すことができました。ある時、コーディングのスキルも評価されたため、自社CMSの開発のリニューアルプロジェクトに任命され、UIデザインも担当することになりました。実際に取り組み始めると、パズル的な要素もあり、面白く結構ハマりましたね。UIデザインもiPhoneが発売し始めてから急速に認知されるようになり、iPhone用のアプリのデザインなども担当するようになりました。業界の成長に合わせて、私も最先端のトレンドに関わることができたのは非常に幸運でした。正社員に至った経緯は、Web制作のコーディングのリードと自社CMSのUIデザインの両方を対応していましたが、キャリアパスを考えた時にUIUX部門に優先的に関わる方が良いと考え、UIデザインを担当していた部署に席を置くことを打診されました。そのタイミングでアルバイトから正社員に切り替わりました。最終的にはデジタルプロダクトの開発部門のUI/UXデザインを統括する立場にまで任せていただけるようになりました。色々と経験させていただいたスターティアラボ株式会社(現:クラウドサーカス株式会社)には今でも感謝しております。

── その後、現職のHousmartに入社されておりますが、入社までの経緯を教えて下さい。また代表や経営メンバーとのエピソードがありましたら教えてください。

昔から音楽活動も映像制作においても社会に影響を与えられる人になりたいという思いは一貫して持ち続けており、よりその思いを実現させるために転職活動を始めました。Housmartとの出会いは、Wantedly上で代表の針山から連絡をいただいたことがきっかけです。実は、スターティアラボ株式会社(現:クラウドサーカス株式会社)に在籍している際に家を購入し、その過程の中で代表の針山の「中古マンション本当にかしこい買い方・選び方」を読んで参考にしていたこともあり、連絡をいただいた時に「あれ?どこかで聞き覚えがある名前」と思いました。「あの本の針山さんですか?」と驚きました。日程設定から面接まであっという間に調整が進み、有難いことに面接の場でオファーもいただき、その場でオファー承諾に至りました。その流れのまま飲みにいきましたね(笑)。元々、オファーいただいたら入社する気で面接に挑んだのですが、代表の針山と馬が合ったこと、また事業領域としてとても魅力的でしたので入社を決意しました。不動産の購入体験は人生の中で大きな影響を与えるので、その購入までのプロセスを良くしていくというのは非常にシンプルで、私自身の実体験もあるので一緒にやっていきたいと思ったのが大きかったです。

株式会社Housmart 入社後

── 入社した当時はどのようなことに取り組みましたか。

入社当時は、カウル(2024年4月にクローズ)のリニューアルに取り組みました。元々エンジニア中心で進められていたプロダクトであり、デザイナー目線から基本的なユースケースの部分から作り直すことになりました。私が入社した時点でのカウルのデザインは、某恋愛マッチングサービスのような構成でした。ユーザーがより使いやすく、かつ検索もしやすいようにするために、不動産情報サイトのような設計にリファクタリングしました。IA設計もホワイトボードで書き出して全体のアプリ設計を見直し、UIデザインも行いました。

── ジョイン後、プロダクトデザイナー、UXデザイナー、PdM、CPOとポジションや役割に変化があったと思います。それぞれの経緯や具体的な業務内容を教えてください。

そうですね。共通していることは、突然に変遷したというわけではなく、必要に応じて変わっていきました。プロダクトデザイナーとしては、最初はUIデザイン設計とアプリのロゴ整形を主に行いました。UIデザインは、上流の部分から行わないと基本的に変わらないので、常に任された仕事の一歩先の意見を意識的に行っておりました。勿論、上層部の方々の希望も伺いながら、良い形を目指し取り組みました。このようなことを繰り返していくうちに、プロダクトデザイナーとしての立ち回りの役割が確立しました。UXデザイナーも同じような流れでUIデザインの対応依頼が入り、それがきっかけでした。要件の洗い出しをひたすら行い、実際のユーザーがどのように使うかを示してから初めて作り始める。これを繰り返していくうちに、上流の仕様を決める立場になり、エンジニアとの連携も増え、PdMを任されることになりました。CPOについては、タイミングですね。元々は宮永(現VPoE)が担っていましたが、エンジニアリングにリソースを充てなければいけない時期がきて、私にCPOの打診が来ました。ちょうど1つのプロダクトだけではなく、色々なプロダクトが必要であり、上流領域に対して意見を述べていたこともあり、CPOにチャレンジしてみることにしました。

── デザイナー出身の方ですと、取締役かCDOのポジションに就任される方も多いと思いますが、実際のところCPOに就任されてどう思われますか。

はい。恐らく通常は、取締役かCDOに就任する形が正しいと思います。就任してから感じますが、これまで経験した役割の中で一番ハードな内容だと思います。CPOになりたての頃は、開発技術の制約や技術的コスト、見積もり、また売上の見通しなどがあまりできておらず、できていないことが多い状態で大変な時期もありました。その状況の中でも、新しい価値を作るために、今まで私が経験し対応してきたことを同じように取り組んでいくしかないと自分に言い聞かせ、今はそれに取り組んでいます。

── 現在の稲井さんの業務内容を教えて下さい。

割合としては、PM業務とプロダクトデザイン業務が8割ほどを占めています。進捗管理や細かい仕様選定のための打ち合わせ、中長期的な開発計画などを行なっています。採用は、VPoEの宮永と分担して行なっているため、割合としては少なく1割ほどです。デザイナーの実際の採用フローについては、メンバーのデザイナーの方にお任せしています。

現在のエンジニア組織について

── 現時点のエンジニアの組織体制や人数を教えて下さい。

全体で25名ほどで、大きく6つのチームに分かれています。プロポクラウド内には、新機能チーム、改善チーム、データチーム、SREチームがあります。その他に、PdMチームと横断的なデザイナーチームが職能部隊として存在します。私は、PdMチームのデザインチームに所属し、新規プロダクトの推進や全体的なデザイン面を担当しています。

── 現在のエンジニア組織の良い点(特徴や魅力的なところ)と課題点(ここを改善すればもっと良くなるなど)がありますか。

事業のフェーズとしてまだまだ若い組織状態のため、常識に囚われずチャレンジできる組織というのは良いところでもあり特徴でもあります。事業が伸びていっても、バーティカルSaasの場合、お客様からの要望が多く、それを実現するには常にチャレンジしていく必要があります。また、そこに対してみんなで意見を持って話し合えるところは良い雰囲気だと思います。

 

今後の目標

プロポクラウドは、ありがたいことに利用していただく企業様が増えてきています。引き続きプロポクラウドの普及を進めることはもちろんですが、さらなる事業成長につながる新しい軸やプロダクトを開発することも重要です。現在、既にその取り組みを開始していますので、2年半ほどの期間でしっかりと成果を上げたいと考えています。

── グロースウェル社のEQ診断でいうとどのコンピテンシーに当てはまる方と一緒に働きたいですか?もしくは今の開発組織に必要なタイプはどれにあたりますでしょうか?(図の中からお選びください)

成果という観点から見ると、『3:インベンター』と『7:デリバリー』の人材が重要ですね。組織を効果的に運営するためには、『5:ストラテジスト』や『6:スーパーヒーロー』のような人材も必要です。

一方で、弊社には合わないタイプの人材としては、『8:セージ』が挙げられます。弊社では仮説を元にプロダクトを進めているため、理想を追求することは難しいからです。

── 最後にどのような人と一緒に働きたいか教えてください。

不動産にこだわりが強くて突き抜けた感じの方を採用したいと考えています。そのようなタイプの人材を組織に取り入れることにはリスクも伴いますが、新しいものを生み出す上で彼らの存在は必要不可欠です。また、忍耐力も必要な現場なので、やり切る力が強い方も求めております。逆に指示通りに動くことを良しとしておとなしい方だとちょっと難しいかもしれないですね。