富田 直 氏|株式会社eiicon(エイコン) 取締役副社長 COO・CDO
中央大学卒。2016年、eiicon 事業を代表中村と共に共同創業。サービス全体のマーケティング、プロモーションからWebサイト開発・デザイン~ディレクション含むモノづくり全般を担うプロダクトサイド責任者を務め、33,000社をこえる日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」、会員2万人を超える事業活性化メディア「TOMORUBA」等を設計・構築。
株式会社eiiconについて
![](https://cuval.jp/wp-content/uploads/2025/02/eiiconロゴデータ-1024x614.jpeg)
── 御社の事業内容を教えて下さい。
弊社は、オープンイノベーションを通じて、企業が自立して事業を展開できる基盤づくりを支援しています。具体的には、企業間連携や新規事業開発をサポートするプラットフォームの提供に加え、ハンズオン型のコンサルティングなど、多様なアプローチを活用しています。
富田さんのキャリア
![](https://cuval.jp/wp-content/uploads/2025/02/101DE6A7-05FD-413C-AA91-0A3C3489266E-scaled.jpg)
── eiiconを共同創業するまでのキャリアを簡単にお聞かせください。
中央大学情報工学科を卒業後、大手不動産会社に入社。IT部門で不動産ポータルサイトを担当し、SEとしてサイトの運営やリニューアルを手がける中で、プログラミングやサイトディレクション、SEO対策などにも携わりました。
その後、「ものづくり」の経験を「サービスづくり」に活かしたいと考え、パーソル(当時の社名:インテリジェンス)へ転職。サービス全体を俯瞰できるWebプロデューサーとして、アルバイト求人サイトの運営などに取り組みました。
── これまでの経験の中で(eiiconにジョインするまでの期間)、印象に残っている出来事や出会いはありますか?
大手不動産会社でもパーソルでも、「合理的なロジックがしっかりと成果につながる」という体験ができたことが大きかったですね。多くの施策がなんとなく立案・実行される中で、論理的に紐づけた施策が実際の成果を生むことを実感し、「意外と世の中は論理でつながっているものなんだ」と気づいたことが、特に印象に残っています。
── ではここから、eiiconについてお伺いします。最初は社内ベンチャーとして中村さんと共に事業を立ち上げられたかと思いますが、準備を始めるきっかけは何だったのでしょうか?
パーソルでは、人材サービスのWebプロデューサーとして、サービスの企画から実施までを担当していました。その中で、より多様な企業と連携できれば、求人媒体という枠を超えた新しい流れを生み出せるのではないかと感じていた時期でもありました。
ちょうどその頃、中村がパーソル内でオープンイノベーションに関する企画を立ち上げており、それを知った瞬間、「これだ!」と直感しました。私が求めていた“既存の枠組みからの脱却”と、社会に必要だと感じていたことが重なり、「これこそが自分のやりたいことだ」と確信し、ジョインを決意しました。
eiicon ジョイン後
![](https://cuval.jp/wp-content/uploads/2025/02/AUBAサービス画像-1024x314.jpg)
── eiiconにジョイン後、どのようなことに取り組みましたか?
本当に、あらゆることをやらなければならなかったと感じています。私はエンジニアのバックグラウンドがあるため、共同創業時も「基本的にはプロダクト側の人間だ」という認識でしたが、スタートアップではアナログな作業も含め、あらゆる業務をこなす必要がありました。
具体的には、大手企業やスタートアップとの名刺交換を通じて関係を構築したり、Facebookで積極的に友達申請を行ったりと、自らの手でネットワークを広げる活動に力を入れていました。
── ジョイン後、活動を進める中で苦労したことや良かったことはありますか?
やはり、「文化がないものをつくる」ことの大変さを痛感しました。現在では「オープンイノベーションのプラットフォームです」と説明すれば理解してもらえますが、立ち上げ当初は、企業が自社の事業戦略や課題を公開することなど「絶対に無理だ」と言われる状況でした。経営課題を公にするなんてありえない、というのが当時の実態だったのです。まだ文化を完全に根付かせたとは言えませんが、今では多くの企業が自社のリソースを積極的に公開するようになり、大きな変化を感じています。
また、「オープンイノベーション」という言葉自体がバズワード化しやすく、怪しまれたり、本来の経営手法としての意義が正しく伝わらなかったりすることも多くありました。
── その課題はどのように解消、もしくは取り組んでいったのでしょうか?
本当に、一つひとつ地道に解決していくしかありませんでした。我々はOKRを活用しながら、ミッションの遂行に取り組んできました。
しかし、事業を生み出すことは決して簡単ではありません。「素敵な経営者と出会えて良かった」と感謝の言葉をいただくことは多いものの、それだけではオープンイノベーションの成果とは言えません。
オープンイノベーションはあくまで新規事業を生み出すための手段であり、単なる出会いにとどまってしまっては意味がありません。そのため、企業が実際に事業を創出できるようにするには何が必要なのか、一つひとつ丁寧に紐解きながら取り組んでいきました。
── 反対に、良かったことはありますか?
特に良かったのは、今、同じ船に乗ってくれているメンバーが、自分ごとのようにオープンイノベーションの意義を語ってくれるようになったことです。いわゆる「伝道者」が増えている状態ですね。
1周年記念のパーティーや、昨年から始めた「シーザーフォレストアワード」で各事例を発表する機会を設けた際にも、その意義を強く実感しました。例えば、4年前に同じことをやっていたら、受発注の枠を超えないような解釈をするメンバーもいたかもしれません。しかし今では、各メンバーが自分の言葉で「オープンイノベーションを通じてどのように事業創出をしているのか」を発表しています。
これを見ていると、本当に良かったと感じますし、この取り組みを続けていけば、オープンイノベーションが世の中に浸透し、当たり前の存在になっていくと確信しています。
── 株式会社eiiconの事業の魅力を教えてください。
エンジニアとしての視点では、「プロフェッショナルな集団がいる」ことが大きな魅力だと思います。そして、事業そのものの魅力としては、当社が「これまでにない価値を創造する」ことに取り組んでいる点が挙げられます。
例えば、HR分野における副業サービスの提供は、新しいセグメントを生み出しているものの、もともとHRという市場自体が存在しています。しかし、我々が取り組んでいる「新規事業」の分野は、市場そのものがまだ確立されていません。
この領域を文化として定着させることができれば、他では得られない大きな価値が生まれると考えています。そうした点が、当社の事業の最大の魅力だと感じています。
現在の組織について
── 会社全体や開発組織についてお伺いします。現時点の全社の組織体制について、人数なども含めて教えていただけますか?
現在、全体の社員数は約100名ですが、毎月のようにメンバーが増えています。月に8名ほど入社することもあり、組織は継続的に拡大しています。
開発部門は現在9名ほどの体制です。数十人規模の大所帯ではありませんが、この少人数ながらしっかりと体制を整え、スピード感を持って進めています。各メンバーはそれぞれの強みに応じて役割を分担しています。例えば、当社では基本的にRailsをベースに開発を行っているため、Railsに強みを持つメンバーはその領域を中心に担当しつつ、必要に応じて他の部分も柔軟にカバーしています。
── 開発の体制としてはどのようになっているのでしょうか?
eiiconの開発組織は、「Freedom and Professional」というスローガンを掲げています。CTOの池田は、GitHubアカウントを見れば分かるとおり、市場でも突出したプロフェッショナルです。そんな池田と共に開発組織を構築していることもあり、技術が好きなプロフェッショナルが集まるチームとなっています。
開発組織にとって最も重要なのは、開発に専念できる環境の整備だと考えています。そのため、明確な役割分担が機能していることが、当社の大きな強みです。例えば、メール配信システムを構築する場合、「Elixirを使おう」といった技術選定がスムーズに行われ、最適な担当者に迅速に任せられるような柔軟な体制を整えています。
また、新しい技術を積極的に取り入れ、スピード感を持って開発に取り組める環境があるのも、フロントと開発の役割をしっかり分けているからこそだと思います。言語に制約を設けず、自身のスキルを最大限に活かして成果を出せるメンバーが集まっており、このスピード感についていける人材で構成されていることも大きな強みです。
結果的に、技術に興味のある人材が自然と集まり、そうしたメンバーと共に成長できる開発組織が築けていると感じています。
── 現在、開発組織や全社として、どのようなことに注力されていますか?
我々は「Innovation as a Service」というコンセプトのもと、意図的に事業を創出できる場を提供しています。この仕組みは、大企業・中小企業・スタートアップなど、あらゆる規模の企業が利用できるように整備しています。
── 現在の開発組織・会社全体の良い点(特徴や魅力的なところ)と課題点(ここを改善すればもっと良くなる点)があれば、お聞かせください。
良い点としては、先ほどもお話ししたように、プロフェッショナルな集団が揃っていることです。このメンバーが事業面でもプロダクト面でも、「やろうと思えば何でもできる」という環境を築いている点は非常に魅力的であり、大きな強みだと考えています。
一方で、オープンイノベーションという概念が市場に十分に浸透しているとは言えません。そのため、認知をさらに広げ、より多くのプレイヤーを巻き込むことが今後の重要な課題です。
シリーズAの資金調達では、信用金庫や地方銀行、そしてゆうちょ銀行といった金融機関との連携を深めていますが、これは全国的にオープンイノベーションを普及させるための一環です。東京にはスタートアップが集まっていますが、その他の地域においても「イノベーション」の価値を理解してもらえるよう、体制を整えていきたいと考えています。
今後の目標
── 今後の目標を教えてください。
私たちは一貫して、「イノベーション後進国からオープンイノベーション先進国へ」という目標を掲げています。すべての企業が新規事業を生み出せる基盤を確立し、「新規事業を意図的に創出できることが当たり前」という文化を根付かせることを目指しています。
── どのような人と一緒に働きたいですか?
私たちのビジョンに共感し、同じ船に乗ってくれる方が活躍していると感じます。市場がまだ十分に確立されていないため、困難に直面することもありますが、それでもなお前に進めていかなければなりません。
そのため、「自分ごと」としてこの文化を創り上げるという意識を持ち、主体的に取り組んでくださる方と一緒に働きたいと思っています。そうでなければ、お互いにとって苦しいだけになってしまい、結果的に幸せにはなれないと考えています。
── ちなみに、開発部門では業務委託の方が多いかと思いますが、そういった方々が社員として関わる可能性についてはいかがでしょうか?
もちろんです。ビジョンに共感し、「ぜひ関わりたい」と思ってくださる方がいれば、こちらからぜひお願いしたいと考えています。
── 開発に特化した方が、サービスや事業全体の成長にもっと深く関わりたいと考える場合、そのようなキャリアの流れもあるのでしょうか?
はい、もちろんあります。結局のところ、大切なのは「何を目指したいか」です。私たちは事業目標に基づいたPR活動を進める一方で、個人目標としてMBO(目標管理制度)を導入しており、それぞれが自ら目標を設定できる仕組みを整えています。
会社のミッションを前提としつつ、その上で「こうしていきたい」という目標を設定し、達成すれば適切に評価される体制があります。現在は事例が少ないかもしれませんが、例えばアシスタントからカスタマーサクセス部門の部長に昇進したケースもあり、柔軟なキャリアパスが存在しています。
与えられたミッションを基盤にしながらも、自分の役割を主体的に広げていける方には、どんどん新しい領域に挑戦していただきたいと考えています。
── 最後に、eiiconに興味がある皆さまにひとことお願いします。
エンジニアは非常に重要な存在であり、そのスキルを持ったプロフェッショナルであることを尊重しています。私たちは、そうしたプロフェッショナルのスキルを大切にしながら、エンジニア自身が成長できる環境を提供している点が、他とは異なる強みだと考えています。
また、少数精鋭の規模で活動しているため、裁量が大きく、新しい技術を導入したいという意見にも柔軟に対応できるのが魅力です。そうした環境で、自らのスキルを活かしながら成長したい方には、ぜひ挑戦していただきたいと思っています。