Tonny Xu(小野 邦智)氏|株式会社Dashcomb 代表取締役
東南大学卒業。NECの中国子会社、株式会社VOYAGE GROUP、楽天グループ株式会社などを経てフリーランスエンジニアへ転身。 スマートニュース株式会社, 株式会社Fablicに参加した後に株式会社Gugritを設立。EC事業へ参入したが1年で撤退。その後、C Channel株式会社にジョイン。2019年1月同社CTOに就任。2022年2月株式会社Dashcombを設立。
株式会社Dashcombについて
── 御社の事業内容を教えて下さい。
現在の当社の事業について簡単に説明すると、さまざまなインターネットサービスを展開している企業向けに、迅速な社内PDCAの改善を可能にする管理画面『ダッシュコム』を提供しています。この事業の始まりは、前職C Channel 株式会社でCTOを務めていた際にオペレーションの効率化が求められたことです。他社でも同様のニーズがあると考え、ダッシュコムを立ち上げました。
Tonnyさんのキャリア
── 小学生〜中学生のころはどんな子供でしたか。またエンジニア(IT)に興味を持ったきっかけを教えてください。
私は2007年まで中国で過ごしました。5歳の頃、両親の仕事の都合で地元の上海付近からチベットに移り、小学校の5年生ごろまでそこで暮らしていたんです。その後、地元に戻って中学校、高校と進学し、大学では東南大学へ進学しました。
後に調べてみると、チベットはODAやIMFからの援助を受けていることもあり、私が通っていた小学校にはApple IIが導入されていました。小学校時代からコンピューターに触れる機会に恵まれてエンジニアリングに興味を持ち始めました。教科書を使ってプログラムを書き、そのプログラムはカセットテープに保存していました(笑)。そのときに書いたのが九九表のシステムでした。プログラムを入力して実行されるところを見た時は、本当に感動しましたね。
── 大学時代〜1社目の会社に入社するまでの経緯を教えてください。
大学時代は物理学を専攻しました。入学してすぐに、同級生の中では物理に向いていないと気づきました。高校までは物理が得意だと思っていましたが、大学に入学すると、周りには自分よりも優れた方がたくさんいたんです。クラスメイトの中には、大学教授になった方もいます。周りを見回すと、物理専攻に向いている方たちが多く、自分が物理に向いている可能性はほぼ無いと感じました。そこで、自分の好きなことを考え直すと、やはりコンピューターサイエンスに興味がありました。そのため、大学ではコンピューターサイエンスに特化して学びました。大学卒業後、NTTドコモのiモードの成長や時価総額の凄さに触れたことをきっかけに、NTTドコモ出身の人が立ち上げた会社に入社して、NTTドコモと関連した仕事に携わりました。
── その後、NECの中国子会社、小松製作所の子会社、知人の会社、株式会社VOYAGE GROUP、楽天グループ株式会社、婦人下着のEC事業の株式会社Gugritを立ち上げ、C Channel株式会社とキャリアを歩んでおりますがそれぞれの節目のタイミングや入社の経緯を教えてください。
2社目の転職は、地元の広州に戻りたいなあと思っていたときに偶然、NECの子会社が広州で立ち上がることを聞き、そこに応募して入社しました。2年ほど働いた後、日本への出向の内示を受けましたが、発表の当日、予想外に別の人が選ばれたため、会社を通じずに個人で日本に行くことを決意しましたね。日本に来てからは派遣会社に登録し、コマツの子会社でシステム管理開発等に関わりました。そこで仲良くなった日本人の方と2008年ごろにiPhoneの開発会社を立ち上げたんです。しかし事業を始めた時期が早すぎたこともあり、1年半ほどでVOYAGE GROUPに転職することになりました。VOYAGE GROUPが当時スマートフォンの領域にチャレンジしようとしていたタイミングで、私がやりたいことにもマッチしていました。その後、一緒に起業したい友人が楽天に在籍していたので、楽天に転職しました。その後は、自身の実力を試してみたいという思いがあり、フリーランスに転身。楽天での経験を通じてEC市場の大きさを実感していたことやサプライチェーンの関係者のサポートもあり、婦人下着のEC事業を自身で立ち上げました。事業を始めてから1年ほど経った頃、自己資金のみで運営していたこともあって、資金繰りの苦境に直面しました。そこで再び会社員として働く決断をしました。C ChannelでiOSエンジニアの募集をしていることを知り、私自身が元々iOSエンジニアであったこともあり、業務委託で関わることになりました。C Channelジョイン後は技術面以外にもビジネス側の設計やKPI設計などに積極的に関わっていたこともあり、CTOの打診を受けました。
── どの企業での取り組みもキャリアに良い影響があったと思います。その中でも最も印象的な出来事はありますでしょうか。
VOYAGE GROUPでの経験をお話しますね。当時はサイバーエージェントの連結子会社であったため、年に2回グループ全体の総会が開催されていました。その総会では、毎半期ごとにチームと個人の表彰が行われるのですが、私は「表彰されることを目標にする」と宣言しました。結果として、半年後の総会で『最優秀エンジニア賞』を受賞したことは、私にとって大きなインパクトを与えました。この経験は、総会があったからこそ可能となったものであり、企業文化の重要性を改めて感じました。今でも、当時の仲間たちとは繋がりを維持し、互いに協力し合っています。
── 2022年2月Dashcombを設立。再度起業を決めたきっかけや経緯を教えてください。
C Channelでの仕事が一区切りし、会社の上場を果たし、新しいプロダクトのリリースも完了したため、自分の役割としては一つの節目が終わったと感じました。次のステップを考えた際、C ChannelでCTOのポジションを継続する選択肢もありましたが、しかし、私の中には常に起業への強い願望がありました。C Channelでの経験や得た知見を踏まえ、他の会社も似たような課題を抱えているのではないかと思い、そのような課題を解決するソリューションを自分で提供したいという気持ちが強くなりました。投資家や周囲のCTOからのアドバイスを受けて、市場にニーズがあると確信したため、起業を決意しました。その時点で、約10社のVCの経営者と面談し、複数のオファーを受けました。シードラウンドの資金調達は比較的スムーズに進んだのです。
株式会社 Dashcomb設立〜現在まで
── Dashcomb設立後、どのような取り組みを行いましたか。
設立当初、プロダクトはまだ完成していませんでした。そのため、私はC Channel時代の経験を生かして、CTOとして、そして1人のユーザーとして、必要な機能を考慮しながら、CEO兼PdMとしてプロダクトの優先順位を設定し、開発を進めました。
── 直近CTOからCEOの責務に切り替わり、苦労したことや変化はありましたでしょうか。
CEO兼PdMとして業務を進める中で、プロダクト開発に集中するあまり、販売や営業活動が大変でしたね。元々はその役目を担う予定だったビジネスパーソンの女性と一緒に協働する計画でしたが、タイミングが合わず一緒に事業をすることができませんでした。結果として、ビジネス面も私一人で担当することになりました。ユーザーインタビューは行っていますが、セールスとしてのスキルが私には足りず、販売面では大変苦労しました。現在もプロダクト自体の販売は続けていますが、顧客からはダッシュコムのプロダクトを利用する前の段階の相談を多く受けており、この依頼に取り組んでいます。
── 現在のTonnyさんの業務内容を教えて下さい。
中長期の事業開発計画への投資が全体の6-7割を占めています。あとは既存開発のプルリクエスト対応が1割、採用活動が2割です。事業のピポットも含めて、今後の方向性の決定は、ダッシュコムの顧客数の増加に伴い、会社にとって非常に重要な課題です。
現在のエンジニア組織について
── 現時点のエンジニアの組織体制や人数を教えて下さい。
私を含むと、プロジェクトマネージャーが2名、エンジニアが2名、さらに外部リソースのエンジニアが数名という体制です。
── 現在のエンジニア組織の良い点(特徴や魅力的なところ)と課題点(ここを改善すればもっと良くなるなど)がありますか。
弊社の開発組織は、少数精鋭のエンジニアチームであり、お互いを尊重し合える関係性が築かれている点が大きな魅力です。女性のエンジニアやPMの積極的な活躍も特徴的です。さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが集まり、事業に向けて意見を出し合い、議論を深めることは非常に刺激的です。
今後の課題は、私以外のメンバーも顧客対応ができるようスキルを高めていくことです。そのためには、顧客対応をよりスムーズに行える仕組みを整えることが重要です。そうすることで、チーム全体が顧客ニーズに効率的に応え、サービス品質の向上に寄与できると考えています。
今後の目標
短期的には、次のAラウンドでの資金調達を最優先目標としています。しっかりとした事業計画を策定し、その計画を具体化することで私たちの可能性を示すことが必要です。
── どのような会社と協業したいか教えてください。
特にシードやアーリーフェーズのスタートアップ企業との協業に興味があります。そのようなフェーズの企業は、多くの場合エンジニアリングリソースを必要としており、技術面に長けているCTOなどを求める傾向にあります。私たちの強みは、私のCTOとしての経験と、チーム全体のエンジニアリング力にあります。このため、短期的に戦力として、中長期的にはプロジェクトを支えるサポートが可能です。