吉野 哲仁氏|WAmazing株式会社 CTO

SIer数社を経て2007年ヤフー株式会社入社。Yahoo!ショッピングのバックエンドエンジニアを努め、注文システムリニューアルなどのプロジェクトをリード。2013年、中国アリババ社に半年間出張し、淘宝・天猫のシステム/業務を学び、中国ビジネスのスピードと規模の大きさに刺激を受ける。その後、Yahoo!トラベル開発リーダー、アスクル株式会社への出向を経て、2016年に同社テクニカルディレクターに就任。ショッピング・トラベル・ダイニングサービスの技術責任者を務める。2019年、WAmazingのビジョンに共感し、VPoEとしてジョイン。現在はCTOとして「インバウンドx地方事業者」をテクノロジーで繋げるサービス作りに挑戦している。CTO室長を務める。

WAmazing株式会社 について

── 御社の事業内容を教えて下さい。

弊社は、日本に訪れる外国人旅行客、いわゆるインバウンド市場向けのオンライン旅行予約プラットフォームを運営しています。我々が旅行の中での5大消費と呼んでいる「宿泊」「移動」「遊び」「飲食」「買い物」の領域があります。これらの領域に幅広く包括的にサービスを提供していることが弊社の強みです。現在は、インバウンドに関するナレッジやデータベースを活用して地域観光DX事業やインバウンドの集客にお悩みの企業をターゲットにしたマーケティング事業にも取り組んでおり、インバウンドを軸にさまざまな事業を展開しています。

吉野さんのキャリア

──  小学生〜中学生のころはどんな子供でしたか。

子供の頃からインドアとアウトドアの両方が好きでした。例えば、アウトドアでは友達とサッカーをして遊んでいました。一方、インドアではやはりテレビゲームが大好きでした。ゲームに熱中しすぎて、親に怒られることもよくありました。

── 高校〜専門学校のころはいかがでしたか。

私が高校生の頃は、ちょうどインターネット業界が大きく変わる時期でした。幸運なことに、高校入学時にパソコンを購入してもらったので、ハードウェアやソフトウェアの進化を目の当たりにすることができました。これまでにない世界が広がっていると感じ、単純に面白いと思いました。そして、これを仕事にできたらと考えるようになりました。特に、サービスを作る側の仕事に興味を持ち、プログラミングやソフトウェアについて専門学校で本格的に学びました。

── その後、Sler/SES企業からヤフー株式会社とキャリアを歩んでおりますがそれぞれの節目のタイミングや入社の経緯を教えてください。

1社目は、実家からも近い小さなSES会社に就職しました。何社か面接を受けたのですが、社長が印象的でフィーリングで決めました。書類も準備して挑んだのですが、書類も見ずに雑談のみ行い、最終的にはその場で社長から『ウチの会社に来てよ』と内定をいただいたことは今でも記憶に残っています。入社後は、様々な現場で経験を積んでエンジニアとしてのキャリアを構築していきました。業界の中でもプロフェッショナルな方々が集まるプロジェクトに参画した時は、クオリティやスピードの違いを肌で感じ、レベルの高さを痛感しました。その反面、プロフェッショナルの方々がいる現場に身を置くことができたのは、私のキャリアの中ではとても有意義なもので非常に勉強になりました。最終的には、その現場で知り合った方に『ウチの会社に来ないか』と誘われて転職に至りました。その後、2社目の会社でも様々なプロジェクト開発に携わっていく中で、もっとたくさんの人たちと仕事をしていき、自己成長したいと考えてヤフーに転職しました。当時ヤフーは、大量採用を行っていたので、真っ先にエントリーしました。選考が進んでいく中でいくつかのサービスの開発部長の方々も面接に出てきました。その中にショッピング事業部の責任者の方もおり、最終的にショッピング事業部での採用となりました。

── どの企業での取り組みもキャリアに良い影響があったと思います。その中でも最も印象的な出来事はありますでしょうか。

全てヤフー時代の話ですが、大きく三つのターニングポイントがありました。まず一つ目は、2013年頃に中国へ行き淘宝の仕組みを研究したことです。私はヤフーショッピングのプロジェクトリーダーとして、メンバーを引き連れて半年ほど中国で学びました。淘宝の取り組みを目の当たりにすると、ヤフーショッピングが追いついていないことや、技術やビジネスのレベルの違いを痛感しました。技術的な側面は似ていたものの、その技術をどのようにサービスやビジネスに結びつけていくかにおいて、大きな差があったのです。この経験は私にとって非常に貴重なものでした。

二つ目は、アスクルに出向した時の経験です。LOHACOでの越境ECに携わり、中国に詳しいことから出向を依頼されました。エンジニアとしてジョインではなく事業責任者としてのジョインでしたので、初めは抵抗もありましたが、実際に現場に入ると多くのことを学びました。ヤフーショッピングでECモールのシステムを構築してきた経験がありましたが、商品の仕入れから在庫管理、発送といった実務を経験することで、マーチャント側の視点を深く理解することができました。これにより、ECサービス全体の仕組みや収益の仕組みを理解することができました。

三つ目は、ヤフーショッピング(ヤフートラベルも一時的に担当)のテクニカルディレクターとして3年間の経験です。実質的にはサービスのCTOであり、技術的な戦略や課題解決に携わりました。役職がない状態から一気にサービスの責任者になったため最初は戸惑いましたが、この経験により視野が広がり、経営としての視点を身に付けることができました。特に小澤さん(当時、ヤフー取締役)との仕事は、経営者としての視点や考え方を学ぶ上で大きな機会でした。

── その後、現職のWAmazing株式会社に入社されていますが、入社に至るまでの経緯を教えて下さい。

ベンチャー企業でのチャレンジを望み、当時エージェント会社を通じてたくさんの会社を紹介していただきました。これまでの転職活動の中で、一番たくさんの会社と話をすることになりましたね(笑)。その中にWAmazingも含まれていました。最終的にWAmazingを選んだ決め手は、グローバルにビジネスを展開しているため、これまで経験したことのない領域で新たなチャレンジができる点や、ヤフーで培ったECやトラベルの経験を活かせるバランス感があったからです。さらに、インバウンド業界における成長性や将来性を感じたので、こうしたところでのチャレンジは興味深いと思いました。また、一緒に話した私と年齢が近い経営層の方々も楽しそうで話しやすく、話が合いそうだったのも決め手の一つでした。

WAmazing株式会社 入社〜現在まで

── 入社後、2週間ほど経過したタイミングで代表加藤さんから「(前任者が)8月に退任するから、CTOになってなってほしい。」とお話しがあったそうですが、当時の心境はどうでしたか。

入社当時はVPoEとしてジョインしたので、最初にお話しを受けた時はとても驚きました。しかし、いつかCTOのようなポジションにもなれたら良いと思っていたので前向きに捉えていましたね。勿論、CTO就任となるとやることが山ほどあるのですが、一旦後のことは抜きにして、自分の中でご縁と捉えて取り組みますと返答しました。

── 2020年COVID-19によりインバウンド事業を展開している御社にも大きく影響を及ぼしたと思います。当時の心境やCTOとしてどのよう事態を乗り越えたか教えてください。

CTO就任後、WAmazingのモノ作りのカルチャーを言語化し、自社にどんな人材が必要かを意識して組織作りを行っていました。しかし、その半年後、COVID-19の影響で事業がストップしてしまいました。今では思い出として話せますが、その時は非常に苦しい時期でした。会社の存続のために、行政の受託事業や翻訳事業など新たな事業を立ち上げ、利益を確保をし、資金調達を行いました。一方、開発組織では、自社サービスの停止により1年以上も何も作ることができない状況が続きました。その間、従業員の雇用や給料を守るため、ベンチャー界隈の企業の方々のご協力を得てエンジニアの出向先を確保したり、出向先が見つからない場合には休業手当を支給し、副業先を探してもらうなどの支援を行いました。私自身も家族の理解を得ながら、会社を存続させるために必死になりました。今となっては、新しい事業が育ち、従業員数も当時よりも大幅に増え、300名近い組織となっていることに感慨深いです。当時は本当に大変でしたが、COVID-19の状況があったからこそ、今があると言えるほどになりました。

── 現在の吉野さんの業務内容を教えて下さい。

現在、私はCTOおよび中国事業の責任者の両方の業務を兼任しています。CTO業務が5割、中国事業の責任者業務が5割の割合で担当しています。中国事業の責任者として、主に我々の旅行商品を中国市場に展開するためのマーケティング戦略やビジネス展開に取り組んでいます。チームメンバーは、私以外は全員中国人です。一方で、CTO業務では、採用に2割の時間を割き、残りの3割は開発戦略に関する話に加えて、インフラ業務や情報システム、セキュリティなど、現場のチームが対応できない課題に一時的に対処しています。

現在のエンジニア組織について

── 現時点のエンジニアの組織体制や人数を教えて下さい。

現在、開発部全体には36名のエンジニアがいます(業務委託を含む)。弊社では、プロジェクト単位でチームが分かれており、そのチームでの作業が基本的な動き方となっています。たとえば、アプリチーム、ホテル予約チーム、ECの買い物チームなどに分かれています。チーム内には、エンジニアだけでなく、プロダクトマネージャー、ディレクター、デザイナーなども含まれ、一つのチームとして活動しています。組織全体を横断的に見る役割は、CTOである私とSREが担っています。また、兼業で複数のプロジェクトに関わるメンバーもいます。

── 現在のエンジニア組織の良い点(特徴や魅力的なところ)と課題点(ここを改善すればもっと良くなるなど)がありますか。

私たちのチーム作りの考え方は、自社のサービスを展開していることを踏まえ、サービスにコミットしてもらいたいという点が根幹にあります。各サービスごとにフェーズや課題が異なるため、チームメンバーが自分の担当するサービスの課題や今期の目標を深く理解し、課題解決や目標達成に取り組むことを期待しています。採用時には、弊社ビジョンへの共感やサービス思考があるかどうかを慎重に見極めるため、エンジニアやデザイナーは皆ビジョンへの共感やサービス思考を持っています。

例えば、サービスの今後を話し合うブレストのMTGからエンジニアやデザイナーが積極的に参加し意見を出すことを求められるため、活発な意見交換が行われています。これは、弊社の特徴の一つです。

── インバウンドに関するデータや観光に関するデータをもとに『データ活用』に向けた取り組みをされているかと思いますが、具体的にはどのように開発組織として取り組んでいますか。

現在、複数のサービスで多様な商品を提供していますが、ユーザーが自分に合った商品をより見つけやすく・探しやすくするためには、データの活用が不可欠です。現段階では、人材を含めた投資が不足していますが、データを活用してプロダクト機能を開発していく必要があります。商品数やユーザー数が増加しており、ユーザーがスムーズに商品を見つけるプロセスが長くなってしまっているため、ユーザーがプロセスを短縮できるような施策が必要です。そのため、まずは他社が実施している施策を導入し、データの活用を強化していくことを目標にしています。

今後の目標

COVID-19後のインバウンド復活の波にしっかり乗って、日本のインバウンド市場の拡大にWAmazingも貢献し、日本の経済成長、地域の活性化にも繋げていきたいと考えております。このようなビジョンに共感してくれる仲間も絶賛募集中です。