森 秀史 氏|インフラエンジニア/フリーランス
新卒でNTTデータグループに入社後、インフラ基盤エンジニアとしてキャリアをスタート。2023年に独立し、現在はサーバー設計・構築から保守運用、スクリプトによる自動化まで広く対応。月数回、出張料理人としても活動し、“選択肢の多い人生”を信条に、技術と個性を活かした働き方を実践している。
森さんのキャリアについて
── 早速ですが、エンジニア歴とフリーランスエンジニアとしてのご経験について、それぞれ簡単に教えていただけますか?
はい。システムエンジニアとしては、2019年4月に新卒で入社してから現在まで、インフラ基盤の領域に携わってきました。期間としては、6年目が終わって、今ちょうど7年目に入ったところです。
フリーランスとしては、2023年1月に正社員から独立して活動をスタートしましたので、現在は2年目が終わり、まもなく2年半が経過するタイミングになります。
── では、エンジニアとしてのキャリアに入るまでのご経歴や背景について伺えればと思います。事前情報を拝見したところ、滋賀県ご出身で、学生時代にはサッカーやテレビ局でのインターンなど、さまざまな経験をされてきたようですね。
そうですね、今振り返ると本当にいろんなことにチャレンジしてきた学生時代だったと思います。良く言えば好奇心旺盛で、いろんなものに手を出して、自分に合うものを探してきた、という感じですね。
私は滋賀県出身で、生まれてから高校まではずっと地元で過ごしてきました。中学・高校ではサッカー部に所属していて、サッカーはずっと好きで続けていました。勉強の面でも、「成績が良ければ選択肢が広がる」という意識があったので、高校はトップ校ではないですが、いわゆる進学校に進学しました。
当時は完全に文系で、特に国語や社会、歴史なんかが得意でした。大学は京都にある京都産業大学に進学し、経営学部に所属していました。プログラミングやエンジニアリングとは全然関係のない分野で、どちらかというと、会社経営や簿記、会計など、ビジネスの基礎を中心に学んでいたんです。
── そこから、地元のテレビ局でのADインターンというのも、なかなか珍しい経験ですね。
はい、大学3年の夏に、インターンシップで地元のテレビ局に行きました。ADの業務を体験させてもらったんですが、テレビの裏側を知る貴重な機会になりました。面白さもありましたが、同時に「これは大変な仕事だな」と感じたのも事実で、自分に合っているかを体感できたのは大きかったですね。
その経験もあって、「やっぱり実際にやってみないとわからないな」という気づきを得たことで、就職活動に対する視野が広がりました。
── そこからITやエンジニアの道に進まれたのは、どのようなきっかけだったのでしょうか?
就活を本格的に始めた4年生のタイミングで、「自分はどんな仕事に向いているんだろう?」と改めて考えたんです。その中で、もともとITやゲームに興味があったこともあり、IT業界やゲーム会社を中心にいろいろ調べて、説明会にも足を運びました。
その中で最終的に就職を決めたのが、NTTデータグループの東京にある企業でした。雰囲気も良く、キャリアアップのイメージも持てたことが決め手になりました。これを機に上京し、ITエンジニアとしてのキャリアをスタートすることになりました。
── エンジニアとしての就職先としてNTTデータグループを選ばれたとのことですが、他にも選択肢があったのでしょうか?
実は当時はゲーム業界や他のIT系企業など、いくつか内定をいただいていました。その中で最終的にIT業界に進もうと決めた理由は、父の存在が大きかったですね。
父も長年、定年までずっとシステムエンジニアをしていたので、私にとってはITが意外と身近な職業だったんです。興味もありましたし、身近なロールモデルがいたことでイメージもしやすく、「自分もやってみようかな」と自然に思えました。
── その中でも、インフラ基盤のエンジニアを選ばれた理由は?
私は文系出身なので、正直、当初は「エンジニア=プログラミングの専門家」「理系じゃないと厳しい」というイメージがあったんです。なので、プログラマー職には少しハードルを感じていました。
そんな中、選考が進んでいく中で「プログラミング以外にも、インフラ基盤のように幅広い領域で活躍できるエンジニア職がある」という話を知って。しかも、未経験からでもしっかり学べる環境が整っていることが分かり、自分の興味ともマッチしたので、「ここならやっていけそうだ」と思って、インフラエンジニアとしてのキャリアをスタートすることに決めました。
── お父さまの存在が、進路選びに大きな影響を与えたんですね。
そうですね。実は、テレビ局のADインターンに行ったときも、業界で実際に働いている方々の話を聞くことで、よりリアルにイメージできる部分があったんです。それもあって、就職活動の際も「自分がやりたいと思ったら、まずは実際に話を聞いてみよう」といろんな業界の人に話を聞いていました。
その中でも、やっぱり父親の話は一番身近で、一番納得感がありましたね。「エンジニアとしてやっていくイメージが持てる」と自然に思えたのが、決め手のひとつでした。
── ちなみに、上京の理由は就職がきっかけだったんでしょうか?それとも、東京に対してもともと関心があったんでしょうか?
きっかけは就職でしたが、実は学生時代から「いつかは東京に行ってみたいな」という思いはありました。趣味で旅行が好きで、国内の都道府県は40以上まわってきたんですが、その中でも東京は「選択肢が圧倒的に多い」と感じていたんです。
大学時代に東京に遊びに来たことが何度かあって、「この街は若いうちに体験しておいた方が絶対に面白いだろう」と思っていました。なので、「どうせ行くなら今だな」と思って、上京の決め手が就職だったという感じです。
── 実際にインフラエンジニアとしてキャリアをスタートされて、最初はどうでしたか?
そうですね、新卒のときはやっぱり何もかもが初めてで。特にIT業界は専門用語も多く、最初の会議では上司が何を話しているのか理解するのに精一杯でした(笑)。
学生時代は文系で経営や会計を学んでいたので、技術的なバックグラウンドが全くなかった分、ゼロからのスタートという感じでした。ITは変化が激しい分野でもあるので、「覚えたことがすぐ古くなる」という感覚もあり、継続的な学びが本当に大切だと実感しました。
── そんな中で、どのようにキャッチアップしていったのでしょうか?
最初の頃は、「まずは自分の担当する分野を極めよう」と割り切って、選択と集中を徹底しました。とにかく業務の中で触れる領域に集中して、誰よりも深く理解できるよう努めました。
私は主に、運用保守系の業務──たとえばサーバー障害時のログ調査や、障害対応のナレッジの蓄積といった仕事が中心だったんですが、そういった現場での対応を通して、少しずつ知識と経験を積み上げていきました。
特に印象に残っているのは、先輩方の仕事を「目で見て盗む」という意識です。マニュアルや資料だけでは分からない、実践的な動きや判断の仕方を、隣で見ながら吸収していきました。
── 実務を通じて学ぶスタイルだったんですね。
はい。やっぱり最初から何でもできるわけではないので、まずは「この分野は任せてください」と言える領域を一つ作ることを意識しました。そこをしっかり固めることで、チームの中でも信頼されるようになりましたし、自信にもつながりましたね。
── 実際にフリーランスとして独立された経緯や、そのときの考えを伺ってもよろしいですか?
そうですね。正直なところ、きっかけはどちらかというと“前向きな夢”というより、少し後ろ向きな理由もありました。
正社員として3〜4年ほど働いて業務にも慣れてきた頃、ちょうど主任クラスのポジションに近づいてくるタイミングだったんです。でも、そのポジションに就いている先輩たちの話を聞いていると、「責任は増えるけど報酬はそれに見合っていない」という声が多くて。組織の構造として仕方がない部分はあると思うんですが、「これが自分の将来像か?」と考えたときに、あまり魅力を感じられなかったんですよね。
それなら、リスクも責任も自分で背負うけれど、頑張った分だけリターンが返ってくる働き方の方が、自分には合っているんじゃないかと考えるようになりました。
ちょうどその頃、知人にもフリーランスのエンジニアが何人かいて、東京という場所柄、そういう働き方をしている方々のイベントや勉強会に参加する機会も多くありました。そこで実際の声を聞いて、「自分にもできるかもしれない」と感じ、独立に踏み切りました。
何か大きな決断をするときは、こうやってまず動いてみて、自分で確かめてから決めるタイプですね。
── これまで関わってきた業界やプロジェクト規模についても簡単に教えていただけますか?
はい、大きく分けてこれまで4つのプロジェクトに携わってきました。
新卒で最初に参画したのは法人向けのインフラ基盤のプロジェクトで、チームメンバーは6人ほど。私はその中の1メンバーとして運用・保守を中心に担当していました。
その次はグループ会社の親会社に常駐し、コロナ禍で需要が高まっていたテレワーク環境の構築を支援するプロジェクトに参加しました。こちらはプロジェクト全体で10人規模、自社からは2人で参画し、私はリーダーポジションとして設計から構築、運用までを担いました。
その後は、法人常駐型の案件に参画し、約10人のプロジェクトチームの中でリーダーとして動きました。また、自社チームとしては10社ほどの法人をまとめて担当していて、8人のチームの中で主任の方を補佐するサブリーダー的な立場でもありました。
現在は、フリーランスとして最初に参画した案件に引き続き携わっており、これはオンプレミス向けのインフラ基盤プロジェクトです。全体のプロジェクト規模は50人程度と比較的大きく、私はその中の1メンバーとして参画していますが、対応領域はかなり幅広いです。
具体的には、物理機器のピッキングやオペレーション対応、問い合わせ対応に加えて、最近ではAzureやAWSなどクラウドにも触れています。また、オンプレ環境の構築や端末管理も担当しており、領域横断的な経験を積ませていただいています。
ハード/ソフト面に関する質問
── 趣味や興味関心についてもお聞かせください。
趣味はいろいろあって全部話すときりがないんですが(笑)、中でも料理は自分にとって特別な存在ですね。
もともとは家で自炊して楽しむ程度だったんですが、大学時代に京都のイタリアンレストランで4年間ほど働かせていただいたことがきっかけで、本格的に料理の面白さに目覚めました。「自分の料理で誰かを喜ばせたい」と思うようになり、現在では出張料理人としても活動しています。
都内を中心に、イベントやご家庭、フェスなどさまざまな場所で料理をふるまっています。業務との兼ね合いもありますが、月に4〜5件は対応していて、特にパスタ料理は自信を持って提供しています。
── 素敵ですね。では、エンジニアとしての興味関心についても教えてください。
エンジニアとしての興味関心は、やはり日常とITのつながりを実感できる瞬間に強く惹かれますね。
ITって、学べば学ぶほど、社会のいたるところで活用されていることに気づかされるんです。たとえば、私はフェスやライブが好きで、よくチケットをネットで取るんですが、その裏側では高負荷に耐えるサーバー構成や、通信の最適化がしっかり設計されている。そういう視点で見ると、「自分がやってきたインフラの仕事って、こうやって役立ってるんだな」と実感できるんです。
また、POSレジやATM、バーコードの読み取りなど、何気ない仕組みにも技術が詰まっていて、その仕組みを知ることで、日常生活の中の“ちょっとした面白さ”を感じられるのが、技術を学ぶことの魅力ですね。
── 改めてご自身の得意領域について教えてください。
分野としてはインフラ基盤エンジニアとして活動しています。
中でも経験が豊富なのが、サーバーの設計・構築・保守運用です。直近では、Windows OS環境を中心に、オンプレ・クラウド双方でのアップデート管理やソフトウェア配信を一括で対応しています。
たとえば、Google MeetやTeamsなどのアプリケーションを、5000台規模の端末に配信・管理する業務を、1人で完結して対応していた経験もあります。MECMやWSUSなどのツールを用いて、設計から運用までの一連の流れを自律的に行えるのが、自分の強みだと思っています。
── 現場で作業するうえで、こだわっていることや注意している点があれば教えてください。
インフラ基盤は、24時間365日動かし続けなければならない重要な領域です。ひとたび障害が起きると、法人や公共サービスに大きな影響を及ぼすこともあり、「裏方でありながら責任の重い仕事」だと常に意識しています。
そのため、障害が起きたときには迅速な復旧と原因の徹底究明が求められます。また、再発防止のために、ログや事象から正確に読み解く力と経験も重要です。
日々の業務でも、一つのミスが致命的な影響につながる可能性があるため、スケジュール管理は明確に行い、タスクを確実にこなすことを常に心がけています。
── フリーランスとして現場に参画する際、チームの方針や文化はどのように把握していますか?
参画前の面談では、現場のリーダーやマネージャーの方と直接お話する機会が多く、その方の人柄や受け答えからチームの雰囲気を感じ取るようにしています。リーダーの考え方や空気感がそのまま現場に反映されていることが多いので、「この人と一緒にやっていけそうか」という視点で面談に臨んでいます。
── 新しい現場に入ったときは、具体的にどのようなアプローチで関係構築をしているのでしょうか?た。
まずは「どんな人がいるか」「誰が何に強いか*を把握することを意識しています。同じチームに所属していても、得意分野や経験年数は人によって異なるため、この人にはこの分野を相談しよう、というように役割や特徴を早く掴むことが、チームでうまくやっていくうえで大切だと思っています。
また、私は比較的年齢が若い方なので、年上のメンバーへの配慮も欠かしません。プライドが高い方や、指示されることに敏感な方もいらっしゃるので、そうした方々とも円滑にやっていけるよう、まずはこちらから歩み寄る姿勢を大切にしています。
── フリーランスになってからの現場で、特に難しさや工夫が必要だった経験はありますか?
現在の現場が、フリーランスとしての最初のプロジェクトなんですが、やはり「即戦力」を求められることの重さは強く感じました。
新卒で入社したときは、育成前提で「これから伸びていく人」として見てもらえることが多かったですが、フリーランスの場合は「できて当然」という前提で見られる部分があるため、求められる水準や期待値は一段と高くなります。
特に、今の現場では今まで触ったことのないmacOSの管理や、クラウド領域(Azure、AWS)なども求められ、前提知識を持たずに入ると淘汰されかねない厳しさもあります。
そのぶん、アウトプットでしっかりと結果を出すことが求められ、自分自身の成長にもつながっていると感じています。
── どのような環境にやりがいを感じますか?
少しリアルな話になりますが、成果が“報酬”という形でダイレクトに反映されることが、今の自分にとって一番やりがいに繋がっています。
正社員時代は、成果がボーナスなどで評価されるとはいえ、半期に1回の評価サイクルだったり、反映されるまでに時間がかかることも多く、「頑張りが見えづらい」と感じることもありました。
一方でフリーランスは、自分のスキルや成果がそのまま単価に直結するため、「やればやった分だけ返ってくる」感覚があります。それが自分にとってのモチベーションであり、成長の実感を得る指標にもなっています。
── どのような人と一緒に働きたいと感じますか?これまでの現場で「働きやすい」と感じた雰囲気があれば教えてください。うに進め方を理解しているのでしょうか?
自分がこれまでの現場を振り返って、「こういう人と一緒に働きたい」と思うポイントは、大きく分けて三つあります。
まず、上司やリーダーといった立場の人に対しては、「自分で率先して行動できる人」に信頼を感じます。指示や文句だけで現場を動かそうとするのではなく、いざという時には自ら手を動かし、責任を持ってフォローしてくれるような姿勢の人とは、とても働きやすいと感じます。
次に、横の関係──同僚や同期のような立場の人との関係性についてですが、「足の引っ張り合い」にならず、お互いの得意・不得意を補い合える関係性が理想だと思っています。ライバル関係になりやすい立場でも、案件に必要な情報を共有し合い、「これは得意だから任せて」「ここは苦手だから助けてほしい」と素直に言い合える関係性があると、チームとしても雰囲気が良く、成果にもつながると思います。
最後に、自分が今後キャリアを重ねていく中で、後輩とどう向き合っていくかも意識しています。どれだけ忙しくても、後輩の育成をないがしろにするのではなく、「育てることも業務の一つ」として捉え、誠実に関わることが大切だと考えています。
技術的に上だからといって驕らず、経験が浅い人に対しても一人のチームメンバーとして対等に接する姿勢を大切にしていきたいですね。
── 今後チャレンジしてみたい業界や分野はありますか?
はい。大きく分けて「キャリアアップ」と「キャリアチェンジ」の両面で考えています。
キャリアアップの面では、よりクラウド分野を深掘りしていきたいという思いがあります。これまでもAWSやAzureといったクラウド技術には触れてきましたが、今後はさらに専門性を高め、クラウドインフラの設計や自動化といった領域でも価値を発揮できるようになりたいです。
一方で、キャリアチェンジの観点では、Webサイトやアプリケーションの開発など、フロント寄りのコーディングにも挑戦してみたいという気持ちがあります。これまでの経験とは少し毛色の異なる分野ですが、自分の可能性を広げていく上で、技術の幅を持つことに強い関心があります。
PR・今後について
── ご自身の強みやPRしたいことがあれば教えてください。
これまで一貫してインフラ基盤エンジニアとしてキャリアを積み上げてきました。サーバーの設計・構築・保守運用はもちろんのこと、5000台規模の端末管理や、WSUSやMECMを用いたパッチ配信・アプリ配信の一括管理など、幅広い実務経験を積んできた自負があります。
また、単なる保守運用にとどまらず、業務の効率化や品質向上のためにスクリプトやAnsibleを活用した自動化にも積極的に取り組んできた点は、自分の中でも強みだと思っています。
自動化や改善提案を通じて、「どうすればもっと楽に、もっと正確に業務ができるか」を常に考え、実行に移す力が、自分のエンジニアとしての付加価値だと感じています。
── 最後に、今後の目標や大切にしていることを教えてください。
自分にとってのキーワードは「自由」です。
自由とは「選択肢を持ち、自分で選べること」だと思っています。そのためには、まずは一つの分野を極め、実力をつける。そして満足せずに次の可能性へと挑戦していく──。そんな風に、技術も人生も、幅を広げていくことを大切にしてきました。
例えば、趣味として続けてきた料理も、今では出張料理人として活動するまでになりました。これも「好きなことを形にし、さらにその先へ広げていく」プロセスが楽しくて続けてきた結果です。
今後も、エンジニアリングを軸にしながらも、自分の長所や興味を活かして、より自由度の高いキャリアと人生を築いていけるよう、柔軟に成長していきたいと思っています。そして、誰かの役に立つ価値を、自分なりの方法で提供し続けていきたいです。