溝口 健治 氏|株式会社ツクルバ 執行役員CPO プロダクト・サービス本部長
大学では情報システム分野を専攻し、卒業後はITフロンティアにてSI業務を経験。PwCでのコンサルティング業務を経て楽天に入社。シンガポールへの海外駐在を含む8年間にわたり、プロデューサーや開発マネージャーなど多様な役割を歴任。その後、鎌倉新書にて執行役員として経営に関与し、ベルフェイスではプロダクトマネジメント組織の立ち上げと事業ピボットに尽力。2023年より株式会社ツクルバに参画。執行役員CPOとして経営・プロダクト・事業の全方位からビジョン実現に挑む。
株式会社ツクルバについて
── 御社の事業内容を教えて下さい。
中古・リノベーションマンションを中心に、不動産のメディア・売買仲介・リノベーション企画設計を一気通貫で行っています。現在は「カウカモ」や「ウルカモ」といったサービスを展開しており、物件の魅力や地域の情報を独自に取材し、ストーリー性のある記事として発信しているのが大きな特徴です。
一般的な不動産情報サイトとは異なり、私たちは“住む”という体験にフォーカスしたリッチなコンテンツを重視しています。記事を通じてサービスに関心を持っていただき、そこからご相談・ご案内へとつながるケースも多くあります。
── 記事のファンも多いようですね。
はい。「更新が待ち遠しい」といった声をいただくこともあり、とてもありがたく思っています。
私自身も、これまで何度か物件の購入・売却を経験してきました。「カウカモ」の記事は入社前から読んでいましたが、実際に住む人の目線で、良い点や気になる点の両方を丁寧に伝えている点に共感していました。
「家を買ったあとも記事を読み続けています」といった声をいただくこともあり、それは本当に嬉しいですね。
溝口さんのキャリア
── 当時はどんなお子さんでしたか?
小学生から高校までは、ほぼ毎日サッカー漬けの生活でした。小学校3年生の頃に友達がサッカーを始めたのをきっかけに、自分も夢中になって、毎朝練習に行き、土日は公園でひたすらボールを追いかけていました。合間には駄菓子屋に寄ってゲームをするような、友達と遊ぶのが何よりも楽しいタイプの子どもだったと思います。
また、今振り返ると、けっこう“真面目な子”でもありました。学級代表や生徒会を任されることも多く、「ちゃんとしなきゃ」という意識はかなり強かったですね。
── 大学では情報システム分野を専攻されたそうですね。きっかけは何だったのでしょうか?
父の影響が大きいです。堺市で国際課を担当する公務員だった父は、英語やパソコンに触れる機会が多く、幼い頃から「これからの時代、ITと英語ができないと厳しいぞ」と言われ続けて育ちました。
当時はまだWindowsが出始めた頃で、父のパソコンを使わせてもらってWordのようなソフトで文章を打つうちに、自然とITに対する興味が芽生えていったんです。
── その意識が進学先の選択にもつながったのですね。
はい。ちょうどITの可能性が大きく広がり始めていたタイミングだったこともあり、「どうせ学ぶなら将来役立つ分野を」と考えて情報システム系を選びました。特別強い志があったわけではないのですが、当時は就職氷河期でもあったので、確実にニーズのある領域でスキルを身につけたいという思いは強かったです。
── 大学では具体的にどのようなことを学ばれたのですか?
数学や統計学といった基礎科目に加えて、人工知能の初期的な考え方──たとえばニューラルネットワークなどについても学びました。研究室では、障害物を認識しながら動くロボットのようなシミュレーション研究に取り組んでいて、自分はその中で既存の研究プロジェクトに加わる形で関わっていました。
── 大学卒業後はITフロンティアに入社されたと伺いましたが、研究の道などは考えなかったのでしょうか?
はい。大学院に進学するという選択肢はまったく考えていませんでした。とにかく早く社会に出て働きたいという気持ちが強くて、研究者として進むよりも、現場で実務経験を積みながら成長していきたいという思いがありました。
── ITフロンティアへの入社を決めた理由を教えてください。
当時は就職氷河期で、かなり厳しい状況でした。ただ、ITフロンティアは三菱商事とIBMの合弁で設立された新しいSIerで、親会社の安定感と扱う案件のスケール感に惹かれたのが大きかったです。
社員数は当時1,300名ほどで、新卒も100人弱。自分にとっては大きすぎず小さすぎず、ちょうどいい規模感に感じました。IBMの研修が受けられるという点も魅力のひとつでした。
── ITフロンティアではどのような業務を担当されていたのですか?
主にローソン様の案件に携わっていて、IT企画部門の一員としてポイントシステムの運用や、マーケティング部門との連携などを担当していました。お客様と直接やり取りする中で、「事業が動いている実感」を得られたことが非常に面白く、ビジネスに対する関心が一気に高まりました。
一方で、ビジネス側の方々と対等に議論していくには、自分のソフトスキルがまだまだ足りないと感じていて、その課題意識が次の転職のきっかけになりました。
── そこでコンサルティング会社への転職を考えられたのですね。
はい。事業会社に行く選択肢もありましたが、まずは自分のスキルをしっかり磨くべきだと思いました。「どこに行けば一番成長できるか」と考えたときに、PwCのようなコンサルティング会社だと判断し、挑戦を決めました。
── PwCではどのような経験をされたのでしょうか?
約2年半在籍し、ロジカルシンキングやソリューション設計といった、物事の考え方や進め方を徹底的に鍛えられました。クライアントに価値を届けるというプレッシャーの中で、思考力や実行力を磨くことができたと思います。
ただ、次第に「外から支援するのではなく、自分自身が中に入って事業を育てていきたい」という思いが強くなり、事業会社への転職を決めました。
── 転職先として楽天を選ばれた理由は?
いくつか候補があった中で、楽天のプロデューサー職に可能性を感じました。これまでのITやコンサルの経験が活かせると思いましたし、転職エージェントからの後押しもありました。
── 入社初日には印象的な出来事があったとか。
はい(笑)。ちょうど私が入社した日に、楽天が「英語を社内公用語にする」と発表したんです。何も知らずに入社式に参加したら、人事マネージャーが突然英語でスピーチを始めて、「え、今日から英語なの?」と驚きました。
ただ、もともとグローバルな分野には興味があったので、「これは運命かもしれない」と前向きに受け止められました。
── その後、シンガポールへの出向も経験されたそうですね。
はい。会社から機会をいただき、2年間シンガポールに出向しました。最初は少し迷いもありましたが、結果的には行って本当に良かったと思っています。すでに現地に入っていた同僚のあとを追う形で、チームに加わりました。
── 帰国後は楽天を離れて、鎌倉新書に移られたんですね。
楽天には約8年間在籍し、プロデューサーや開発部門のマネージャー、シンガポール駐在など、2年ごとに役割が変わるような形で、幅広い経験を積ませてもらいました。
ただ、その中で次第に「楽天というブランドがあってこその実績なのでは?」という疑問と危機感が芽生えてきたんです。たとえば採用の場面でも、楽天のネームバリューがあるからこそ応募が集まる部分もあり、「自分自身の市場価値を試したい」という気持ちが強くなっていきました。
── そのタイミングで鎌倉新書と出会われたと。
そうですね。ちょうどその頃、楽天で常務執行役員を務められた相木さんが鎌倉新書の社長に就任されていました。さらに、当時お会いした同社役員の方が、私のシンガポール時代の元同僚とつながっていたというご縁もあって、いくつかの偶然が重なり、話が進んでいきました。
「会社を大きく変えていきたい。そのために力を貸してほしい」と声をかけていただき、自分にとってもチャレンジになると感じて、入社を決めました。
── 鎌倉新書では執行役員を務められたそうですね。
はい。ここで初めて「執行役員」という立場を経験しました。上場企業ということもあり、取締役会に出席する機会も多く、経営の中枢に関わるポジションを担いました。
それまで現場に近い立場で働いていた自分が、経営責任を持つことで、経営者や社外取締役の視座、そして自分の意思決定の基準など、多くのことを学ぶことができました。3年間で、視野が大きく広がったと感じています。
── その後、ベルフェイスに転職されたのですね。
もともと「スタートアップでキャリアを築きたい」という思いがずっとありました。鎌倉新書では経営に深く関わることができた一方で、「これから上場を目指すフェーズの会社で、プロダクトと本気で向き合いたい」という気持ちが強くなっていたんです。
そんな中で出会ったのがベルフェイスでした。ちょうどプロダクト組織をゼロから立ち上げるタイミングで、「立ち上げに関わってほしい」とお声がけいただきました。
── 当時のCTO兼CPOだった山口さん(現タイミーCTO)と一緒に組織づくりをされたんですね。
そうですね。「プロダクトドリブンな組織をどう作るか?」というテーマに、山口さんとともに日々向き合っていました。整っていない環境の中で仕組みを一から考える毎日でしたが、その分、得られる学びや成長は非常に大きかったです。
── 特に苦労された場面も多かったのでは?
はい…本当に大変でした。コロナ明けという一見すると追い風のようなタイミングでしたが、実際は逆風の中にあり、会社全体が難しい局面に直面していました。
その中で、「このプロダクトの本当の価値は何か?」という問いを改めて定義し直し、顧客視点で設計を見直すところからスタートしました。単なる開発だけでなく、戦略・組織・文化も含めた再構築に取り組んだ3年間は、自分にとって非常に濃密でかけがえのない経験になりました。
── ITフロンティアからベルフェイスまで、さまざまなキャリアを積まれてきた中で、特に印象に残っている出来事や出会いはありますか?
一番印象に残っているのは、楽天在籍時に経験したシンガポールへの出向ですね。海外での生活は初めてでしたし、自分にとって非常に大きなチャレンジでした。
しかも、ひとりでの赴任ではなく、仲間と一緒に現地入りする形だったので、自分自身の生活や仕事環境だけでなく、同行したメンバーのサポートや立ち上げ全体の責任もありました。
現地オフィスは設立直後で、人事・総務・法務をすべて兼任する方が1名と、社長秘書が1名という最小限の体制。採用マネージャーもいない中で、「採用どうする?」と聞かれても、「いや、それをこっちが聞きたいんだけど……」という感じで(笑)。
最終的には、自分でLinkedInを使って候補者を探し、近所のカフェで面談をして採用につなげる──そんなゼロからの立ち上げを経験しました。
── まさに“何でも自分でやる”スタートアップ的な環境ですね。
本当にそうでした。たとえば、本社で使っていたシステムを現地でも導入したいとなれば、自分でアドミンチームに掛け合って調整する必要がある。「自分で動かなければ何も進まない」という環境でした。
それまでの自分は、大企業の整った体制の中で、与えられた役割に集中すれば良かった。でもこの経験を通して、自ら環境を整え、前に進める力や、“泥臭くやりきる力”のようなものが、自分の中に根付いたと感じています。あのときの体験は、自分にとって大きな転機でした。
── キャリアの中で「これはハードシングスだった」と思う出来事があれば教えてください。
大きく2つあります。1つ目は、今お話ししたシンガポールでの経験です。採用マネージャーもいない、エージェントも使えないという制約の中で、候補者探しから生活面のサポート、本社との交渉まで、すべてを自分でやる必要がありました。
「本当に自分にできるのか?」と悩む日々もありましたが、最終的には「とにかくやってみよう」と腹を括り、泥臭く動ききった。この経験が、自分のスタンスを大きく変えるきっかけになりました。
2つ目は、ベルフェイスでの経験です。入社当時はすでに成長フェーズを過ぎていて、組織のエネルギーもやや落ちているタイミングでした。その中で、プロダクト組織の再構築や、事業全体のピボットが求められる状況だったんです。
当然、経営の意思決定に対して、現場からの反発も出てきます。「なぜこの方針なのか」「納得できない」といった声が上がる中で、すべての意見に正面から向き合い、自分の言葉で丁寧に説明することを徹底しました。
感情的にならず、淡々と対話を続ける。その積み重ねの結果、「ここまで丁寧に説明してくれたなら、もうやるしかないよね」と、現場のメンバーが納得して前に進んでくれるような状態をつくることができたと思っています。
この2つの経験は、技術や戦略といったスキルだけでなく、“人と本気で向き合う姿勢”や“覚悟”が問われた、本当に大きな学びの時間でした。まさに自分にとってのハードシングスだったと思います。
ツクルバとの出会い
── ツクルバとの出会いのきっかけについて教えてください。
最初は本当にカジュアルな出会いでした。たまたま代表の村上とランチをご一緒する機会があったんです。当時はまったく転職を考えていなかったのですが、「代表と直接話ができるなら、何か刺激になるかもしれない」と思い、軽い気持ちで参加しました。
その場で「ちょうどプロダクト責任者を探している」という話を伺ったのですが、その時点では「自分は今、転職は考えていません」とはっきりお伝えしました。ただ、現取締役上級執行役員CSOである北原がプロダクトを兼務で見ているというお話もあったので、「壁打ち役としてならお手伝いできるかもしれません」とお返ししたんです。そこから少しずつ関係が始まりました。
── 最終的に、入社を決断された際のポイントを教えてください。
決断に至った理由は、大きく3つあります。
まず1つ目は、入社前から北原を通じてツクルバが抱えている課題やプロジェクトの構想、社内のリアルな状況をかなり高い解像度で知ることができていたことです。中途入社って、入ってみないとわからないことが多いじゃないですか。でも今回は「自分ならこう貢献できるかもしれない」というイメージが、具体的に描けたことが大きかったですね。
2つ目は、プロダクト自体への強い共感です。「カウカモ」はもともと個人的にも知っていて、記事もよく読んでいましたし、人に勧めたくなるようなプロダクトに関われるというのは、純粋に嬉しいことだと感じていました。
3つ目は、メンバーとの信頼関係です。村上をはじめ、役員の方々と何人かお会いしましたが、それぞれがしっかり自分の役割を果たしながら、互いをリスペクトしている姿勢がとても印象的でした。「このチームなら信頼して一緒に働ける」と思えたことが、最終的な決め手になりました。
株式会社ツクルバ 入社後
── 入社後はまだ執行役員CPOではなかったそうですね。まずはどのような業務から始められたのでしょうか?
はい。入社して最初の半年間は、キャッチアップ期間として動いていました。
執行役員会議にも参加させてもらいながら、組織構造や事業全体の流れを把握することが中心でした。
また、当時CPOを兼任していた北原が担当していたプロダクト組織にも伴走する形で関わり、現場メンバーと一緒に「今どのような進め方をしているのか」「どこに課題があるのか」といった点を確認しながら、ディスカッションを重ねていきました。
いわば“第三者的な視点”を持ちつつ、現場と同じ目線で課題に向き合うような関わり方だったと思います。
── その時点で、すでにCPO就任は視野に入っていたのですか?
はい。明確に決まっていたわけではありませんが、入社時点から「半年間の動きを見て問題がなければ北原からバトンタッチする」という前提で話が進んでいました。
実際、その期間で現場や組織との信頼関係も築くことができ、自然な流れで引き継ぐことになったと思います。
── 執行役員CPOに就任されてから、個人や組織にどのような変化がありましたか?
もともと北原がしっかり回してくれていたので、何かを大きく変えるというよりは、“チューニング”に近い形でした。
たとえば主力事業である「カウカモ」においては、プロジェクトのロードマップや優先順位を明確にし、それを関係者が集まる場で意思決定できるような会議体を新たに設けました。
それまでは個別に調整して進めることが多かったのですが、「この場でしっかり決めよう」とすることで、関係者同士の連携や意思決定のスピードが格段に良くなったと感じています。
基本的には、既存の良い仕組みを活かしつつ、よりスムーズに、より一体感を持てるように整えていく──そうしたアプローチで取り組んできました。
── 現在は、どのような業務を担当されていますか?
今、私の役割は大きく4つあります。
まず1つ目は、執行役員としての経営参画です。経営陣の一員として、全社的な課題に対して議論を重ねながら、日々意思決定に関わっています。
2つ目は、CPOとしてのプロダクト組織全体の運営です。既存の体制を支えつつ、「この先、どのようなチームで、どのような開発を進めていくべきか」という中長期の戦略設計も含めて見ています。
3つ目は、「ウルカモ」のプロダクトマネージャー(PdM)です。このサービスには専任のPdMがいないため、私自身が実務も含めて担当しています。いわば、1つのサービスに対してPdMとして現場にも深く関わっている状態ですね。
そして4つ目が、「居住中」領域の立ち上げ責任者としての役割です。
ツクルバでは「住まいを一生モノから、自由に変えられるものへ」というビジョンを掲げていますが、それを実現するためには、「買う」「売る」だけでなく、住んでいる間の体験や接点も非常に重要だと考えています。その価値をどう創出するかを担うのが、この領域になります。
── まさに4足のわらじですね……!
はい、正直かなり大変です(笑)。でも、それぞれがまったく別の仕事かというと、そうではないんです。
「購入」「売却」「居住中」といったお客様のライフステージすべてに関わるサービスを横断的に見られているからこそ、すごく解像度高く、全体像が見えている実感があります。
たとえば「居住中」領域の設計を考えるときも、私自身が「買う」「売る」の体験に日々関わっているからこそ、「ここの接点をこうつなげれば、より大きな価値が提供できる」といった視点で設計できるんです。
また、単なる営業施策を考えるのではなく、「プロダクト設計としてどう顧客接点をつくっていくか?」という観点も常に意識しています。これは、CPOとしての経験や視座があるからこそ取り組めている部分でもありますね。
── プロダクト・事業・経営が交差するポジションだからこそ見える景色があると。
はい、まさにその通りです。この1年で培ってきた知見や社内外のネットワーク、各プロジェクトで得た経験をすべて活かしながら、「自分だからこそできる仕事」として捉えています。
もちろん忙しさや負荷はありますが、すべての業務がつながっている感覚があるからこそ、やりがいは非常に大きいですし、今の状況を“役得”だと思って楽しめているのが正直なところです。
── ツクルバの事業の魅力について教えてください。
そうですね、一番の魅力は、プロダクトだけで完結しない面白さにあると思っています。
たとえば「カウカモ」の購入仲介の流れを例にすると、まず広告などを通じてWebメディアに集客し、サイト上でお客様がさまざまな物件情報を閲覧します。そこから「内見したい」「相談したい」といったコンバージョンが発生すると、今度はリアルなエージェントサービスへとつながっていくんです。
エージェントが実際にお客様とお会いして物件をご案内し、契約に至ったあとはリノベーションが始まり、最終的にはその家での暮らしがスタートする。つまり、デジタルとリアルの体験価値が連動して初めて、「買ってよかった」と感じていただける構造になっているんです。
だからこそ、プロダクト単体で完結させてはいけない。たとえば、プロダクト上でどうナーチャリングを設計するか、その先で営業やオペレーションがどのタイミングで、どんな形で介入するのか──そうした一連の流れを設計しながらプロダクトを構築する必要があります。
これが非常に難しくもありますが、だからこそ面白いと感じています。
── まさにリアルとデジタルの連携ですね。
はい、まさにそうです。そして、そのさらに先──今、私が取り組んでいるのが「居住中」フェーズです。
家を買ったあと、「実際に住んでみてどう感じているのか」「どんな後悔や満足があるのか」といった声を、お客様へのインタビューを通してたくさん聞いています。
私自身も、これまでに何度か家を買ったり売ったりしてきたので、ユーザーとしての視点もありますが、それに加えて他のお客様のリアルな体験からも多くの学びや気づきを得ています。
このように手触り感のあるサービスだからこそ、生の声をダイレクトに受け取れる。そして、ときには厳しいご意見をいただくこともありますが、「カウカモを使って本当によかった」と言ってくださる方も多くいて、それが何よりのやりがいになっています。
── その「買ってよかった」をどう継続していくかが、ミッションになっているんですね。
はい、まさにその通りです。
「買ってよかった」という体験をどう継続させるか。信頼関係をどう築いていくか。そして、次に住み替えのタイミングが来たときに、「またカウカモに頼みたい」と思ってもらえるような関係性をどう維持していくか──
それが、今自分が担っている一番大きなテーマだと思っています。
今あるプロジェクトをどう拡張していけば、その関係性がつくれるのか。あるいは、新しいサービスとしてどう展開していくべきか──そういったことを日々考えながら取り組んでいて、本当に楽しいですし、チャレンジしがいのある仕事だと感じています。
現在の組織について
── 現在の開発体制や人数について教えてください。
現在、開発組織は大きく分けて、「プロダクト・サービス本部」と「技術本部」の2つに分かれています。
技術本部はCTOの野沢がリードしており、主にエンジニアのマネジメントを担当しています。一方、私が管掌しているのがプロダクト・サービス本部で、プロダクトマネージャーやデザイナーに加え、一部のサービスオペレーション領域もマネジメントしています。
ざっくり言うと、「何を作るか」を私たちプロダクト側が、「どう作るか」を技術本部が担っているという形です。ただし、完全に分断されているわけではなく、日々密に連携を取りながら進めています。
── プロダクト側の人数構成について教えていただけますか?
プロダクト組織は、私自身を含めて6名体制です。人数は少ないですが、企画や仕様検討の段階から深く関わっており、非常に密な連携で動いています。
── 開発チーム側はどのような構成ですか?
エンジニアチームは、業務委託メンバーも含めておよそ10名程度で構成されています。ここ1〜2年で大きな人数の変動はなく、現在も少数精鋭で安定した体制を保っています。
── 少数精鋭のメリットを感じる場面も多いですか?
はい、まさにそうですね。一人ひとりが強いオーナーシップを持ち、いい意味で役割にとらわれず、自然と“染み出して動ける”メンバーが多いのは、ツクルバの開発組織の大きな魅力です。
特に、プロダクトとリアルな接点が密接に連動している事業なので、開発・企画・デザインが境界を越えて動ける柔軟性はとても重要な要素だと感じています。
── 少数精鋭のメリットを感じる場面も多いですか?
はい、まさにそうですね。一人ひとりが強いオーナーシップを持ち、いい意味で役割にとらわれず、自然と“染み出して動ける”メンバーが多いのは、ツクルバの開発組織の大きな魅力です。
特に、プロダクトとリアルな接点が密接に連動している事業なので、開発・企画・デザインが境界を越えて動ける柔軟性はとても重要な要素だと感じています。
── 組織の拡大に対してはどのように考えていますか?
もちろん、事業の成長に合わせて組織の拡大も必要になる場面はあります。ただ、人数が増えることで“組織のための仕事”が増えてしまうと、本来注力すべきアウトカムへの集中力が薄れてしまう可能性もあります。
そういった意味では、今のフェーズにおいては「少ない人数で多くの成果を出す強いチーム」であり続けることを大切にしています。
── 開発組織について、良い点と課題点の両方を教えてください。
良い点としては、一人ひとりが広い領域を担いながらも、それを“機会”として前向きに捉えられていることですね。責任は大きいですが、モチベーション高く取り組むメンバーが揃っていて、オーナーシップを発揮しながら成果を出せる良いサイクルが回っています。
そのため、「人が足りないから増やしてほしい」といった声が現場からあまり出てきません。むしろ、「今のリソースをどう最適化するか」は経営やマネジメントの責任だという意識が、現場にも根付いている。この点は非常に健全な状態だと感じています。
── 逆に、課題として感じている点はありますか?
やはり、属人化のリスクですね。少人数で高い生産性を保っている分、「キーマンが抜けたときどう対応するか」という懸念は常について回ります。
ただ、それを支えているのが、“いざとなれば自分が動く”というマインドです。たとえば私自身も、前任者が抜けたポジションにそのまま入り、業務委託の方と連携しながら現場を回していますし、別のメンバーが誰も拾えなかった案件を自然とカバーしていたり。必要なところに染み出すように動く姿勢が、組織全体に浸透しています。
── 属人化に対して、どのようにバランスを取っていますか?
理想はもちろん属人性の解消ですが、ツクルバでは「1人しかいないから2人にしよう」といった単純な発想ではなく、「そのリソースが本当に必要か?成果が出ているか?」という観点で判断するようにしています。
これは開発部門に限らず、全社的な文化でもあります。どこか一つのチームだけが極端に人を増やすのではなく、「各チームが工夫と責任をもって最適なリソースで成果を出す」という前提がある。
だからこそ、持続可能な形で事業として利益を出し、成長していけているのだと思います。
今後の目標・採用
── 今後の目標について教えてください。
現在は、執行役員として経営に関わりながら、CPOとしてプロダクト全体を見ていますが、正直なところ「CPOとしてこうあるべきだ」といった肩書きへのこだわりはあまり持っていません。
それよりも常に意識しているのは、「ツクルバのビジョンに、自分がどう貢献できるか」という視点です。
ツクルバが掲げる「住まいの「もつ」を自由に。「かえる」を何度でも。」というビジョン。これは私自身、心から共感している考え方です。
いまだに「家は一度買ったら一生住むもの」という価値観は社会に根強く残っていますが、現実には結婚や出産、転職などライフステージの変化に応じて、住まいに求めるものも大きく変わっていきます。
その変化に柔軟に対応し、「自分に合った暮らしを選び直せる」社会をつくっていくことこそが、これからの住まいに必要な価値だと思っています。
私が現在注力している「居住中」領域の立ち上げも、まさにこのビジョンと深くつながっています。
「購入」や「売却」だけで終わらせず、住んでいる間の体験や接点をいかに快適にし、心地よく暮らし続けられるか。お客様と長くつながる中で、「カウカモがあってよかった」「ツクルバに出会えてよかった」と思っていただけるような体験を提供していきたいと考えています。
私にとってプロダクトやプロジェクトは、「目的」ではなく「手段」です。
「このプロジェクトをやりたい」から始めるのではなく、「このビジョンを実現するために、いま何が必要か」というところから考える。常にビジョン起点で動くことが、自分の中ではすごく大切な軸になっています。
そして、ツクルバという会社が成長していくことと、お客様から『支えてもらってよかった』と思ってもらえること。この両方を同時に実現していけるよう、これからも事業成長と顧客価値の両立に取り組んでいきたいと考えています。
── 最後に、どんな人と一緒に働きたいと考えていますか?
プロダクトチームに限らず、会社全体に言えることですが、やっぱりこの事業やビジョンにワクワクできる人と働きたいですね。
「こんなことできたら素敵だよね」「それ、絶対いいよね」と自然に思えることに前向きに向き合える人。“仕事だからやる”のではなく、“本当にいいと思うからやる”というモチベーションを持っている人とは、一緒に働いていてとても楽しいです。
そしてもう一つは、“なんでもやる”マインドを持っている人。
「これは自分の専門外なのでわかりません」ではなく、「お客様のために必要なことなら、一緒に考えてやってみよう」と言える人。そういうスタンスは、ツクルバではとても大切にされています。
これは私自身もそうですし、CTOの野沢をはじめ、メンバー全員がそういったスタンスで動いています。
「セミナーは専門外だからわかりません」ではなく、「ユーザーと向き合う意味があるなら、やってみよう」という考えで、自ら動いていく。
そういった柔軟性や、専門性に閉じず、いろんな引き出しを使って働けることが、ツクルバで働く面白さでもあると思っています。