深川 真一郎氏|株式会社LegalOn Technologies 執行役員・CTO

横浜国立大学経営学部卒、TIS、Cygamesを経て、2019年5月入社。LegalForceの開発、エンジニアリング責任者、全社開発組織マネジメント業務に従事したのち、2023年4月より現職。

株式会社LegalOn Technologiesについて

── 御社の事業内容を教えて下さい。

弊社は、主にリーガルテックの領域でプロダクトを展開しています。2024年4月にリリースした、法務業務を包括的に支援する新サービス、AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」を主軸に、AIレビューサービス「LegalForce」やAI契約書管理システム「LegalForceキャビネ」などを提供しています。加えて、グローバル市場向けのプロダクトも展開しており、現在、グローバルで5,500社以上のお客様に導入いただいております。

深川さんのキャリア

──  当時はどんな子供(小学校〜高校)でしたか。

小学生の頃は、自分で考えたゲームを友達と一緒に遊んだりしていました。ポケモンのスタンプを駒にした自作ゲームで遊んだり。中学生からはネットゲームにハマり、受験シーズンを除き、高校卒業までずっとネットゲームをしていたと思います。高校時代にはネットゲームをやりたくて部活をやめたほどでした。思えば、組織運営の最初の学びはネットゲームからかもしれません。

ただ、ゲームだけをしていたわけではなく、自身で起業することにも興味を持っていました。そこで、経営を学びたいと思い、横浜国立大学経営学部に進学しました。

── 大学時代〜一社目の独立系SIerに入社するまでの経緯と業務内容を教えてください。

大学卒業後は、ユーフィットというシステムインテグレーターに入社しました。ー年目に、新人研修が終わった後すぐにTISに出向して、入社した翌年にTISに吸収合併されたので、実質TISが一社目のような状態です。最初はIaaSのクラウドサービスの開発チームに所属し、保守開発に携わった後、システムインテグレーターとして様々なプロジェクトに携わりました。

また、私が入社した2010年頃は、AWSが日本に少しずつ普及し始めていた時期で、その流れに乗って、TISでもAWSを活用したビジネスを展開する気運が高まりました。私はその初期段階から関わって、様々なAWS案件をこなす他、AWSの請求代行ビジネスのビジネススキームの整理や、AWS技術者を育成するための育成プログラムの策定などを担当しました。その他、プリセールスとして商談に同行し、お客様の課題をヒアリングして提案するなど、テクニカルだけでなくビジネススキルも伸ばすことができたと思います。

そのうち、サービス企画に興味を持ち始め、上司に訴えたところ、サービス企画を担う部署へ異動することになりました。その部署では、開発だけでなく、事業計画の作成やサービス企画の検討といった業務に携わることができました。

TISでは、本当に様々な経験をさせていただいたのですが、インフラからサーバーサイドまでできるエンジニアがたくさんいる中で、専門性が確立できていないことに危機感を感じるようになりました。結果的に、もっと自分にしかできない部分を作りたいと思い、転職を決意しました。

── その後、 2017年にゲームメガベンチャーに転職した経緯と業務内容を教えてください。

次に転職したのは、ソーシャルゲームを運営するCygamesでした。Cygamesでは「グランブルーファンタジー」などの人気タイトルを複数生み出していた点、大量のトラフィックを捌くために最先端の技術を駆使していたことに関心を抱き、入社を決めました。実際に入社してからは、大手ゲーム会社との協業タイトルのインフラも担当しました。同企業とCygamesの協業は注目度が高く、大量のトラフィックが予想されたため、あらゆる手段を用いて膨大なトラフィックを捌くシステムを作り上げました。このタイトルのインフラを開発からリリース、その後の運用までほぼ1人で任された経験が、専門性を高めることにつながったと思います。

──  これまでのキャリアの中で一番印象に残った出来事はありますでしょうか。

やはり先ほどお話しした協業タイトルのシステムを作った経験が強烈に記憶に残っています。開発チームは100人以上いる中、インフラ担当は私含めて2名のみでした。このタイトルは、日本だけでなく、米国、欧州、香港、台湾での同時リリースが予定されており、国内外からの期待値も非常に高かったです。リリース前3か月はひたすら負荷試験に費やし、負荷かけ元につかったFargateは当時の日本のFargateリソースをすべて使い果たすほどだったので、米国と欧州と日本で分散をして対応しました。大量のサーバーをプロビジョニングしてリリース当日を迎え、万全の態勢で臨みました。おかげで特にトラブルなくリリースすることができました。日本向けのタイトルでは経験できないことなので一生忘れられないです。

──  LegalOn Technologiesへの入社の決め手はありましたか?

決め手は大きく二つありました。一つはプロダクトの魅力、もう一つは優秀なメンバーが揃っていたことです。

まず、プロダクトの魅力についてですが、以前のTISやCygamesの中でも契約に携わった経験が何度かありました。その経験を通じて、契約業務に時間がかかることが非常に面倒だと感じていました。法務部に依頼しても、返答が遅れがちで、ビジネスの進行を妨げることが多かったのです。そんな中、私が転職活動をしていた時に話を伺った当時正式リリース前のファーストプロダクトであるAIレビューサービス「LegalForce」は、契約書を瞬時に自動レビューし、リスクの見落としを防いで条文の修正案を提案するものでした。前述の業務で契約に携わった経験から、これは絶対に売れると思いました。

また、メンバーについても、代表の角田を筆頭に、開発専任の弁護士や大手IT企業出身のエンジニア、法律に関する知識を持った営業など、プロフェッショナルで非常に優秀な人材が揃っていました。この二つの要素が揃っていたことが、私にとっての決め手となりました。

株式会社LegalOn Technologies 入社

── SRE、プロダクト開発責任者、エンジニア推進部部長を経てCTOに就任されました。これまでの役割の変遷や取り組まれた事について教えてください。

2019年5月にSRE(Site Reliability Engineer)として入社したのですが、やれることは何でもやるというスタンスで、VPNやネットワークの整理等、ヘルプセンターの業務も行いました。SREとしては製品の信頼性を上げることがミッションでしたが、当時はまだまだ小さな会社で信頼性とか言っている場合ではなく、お客様の要望に応えるための機能開発を行い、売上の増加に貢献することのほうが重要でした。

その後、ファーストプロダクトである「LegalForce」に加え、2020年に弊社で新しくAI契約管理システム「LegalForceキャビネ」を作るという意思決定がされました。プロダクトが2つに増えたことで、プロダクトごとに開発リーダーを置くことになり、私は「LegalForce」のリーダーを担うことになりました。そこから開発部長、さらにエンジニアリング推進部で開発組織全体のマネジメントを担当しました。

── 現在の深川さんの業務内容を教えて下さい。

現在は、CTOとしてプロダクト開発における全責任を負うとともに、円滑に開発が進むよう制度や仕組みづくり、採用や組織の環境改善に取り組んでいます。

特に、開発の仕組みづくりのところで大事にしているのは、「不条理・非合理・非効率の撲滅」です。これは、SREのプラクティスである「トイルの撲滅」を発展させたものです。詳しくは弊社が運営しているnoteに書いてあるのですが、「トイルの撲滅」とは、手作業で繰り返し行うルーティン作業を自動化するという概念です。私は、このプラクティスがとても好きで、エンジニアリングを行う際のモチベーションの源泉でもあります。私は自分自身をとても怠惰な人間だと思っていますが、だからこそ無駄な仕事を極力減らしたいと考えています。そのため、「不条理・非合理・非効率の撲滅」をモットーに、CTOとして合理的な意思決定を行いながら、従業員から見て不条理に感じられる機会を極力ゼロにすることを目指して各種業務に取り組んでいます。

── LegalOn Technologiesの事業の魅力をお聞かせください。

弊社の事業には大きく二つの魅力があると考えています。一つは「リーガル」というドメインそのものの魅力です。もう一つは、グローバルにおけるオポチュニティの大きさです。

まず、リーガルドメインについてですが、ほとんどの国では法律が社会の基盤となっており、それに従わなければならないという現実があります。法律は日常生活だけでなく、企業運営においても必ず関与してくるため、非常に大きな潜在的マーケットサイズを持っています。このマーケットには、DXが進んでいない、専門知識を持つ人材の確保が難しい、リスクの見落としによるトラブルなど多くの課題が存在しており、それを解決する余地が非常に大きいです。

さらに、リーガルドメインは日本だけでなく世界中で共通の概念です。多くのWebサービスが海外から日本に輸入される中で、リーガルテックに関しては日本が世界のトッププレーヤーと同水準であり、AIレビューにおいては日本がトップと認知されています。最近のイギリスの調査会社のレポートでも、日本のAIレビューは世界で最も進んでいると評価されています。

実際、そのレポートによると、各国のリーガルテック市場の中で日本は10.3%のシェアを持ち、USよりも高い割合を占めています。市場は今後さらに発展していくと予想されており、この成長は非常に有望です。

こうした広大なマーケットにおいて、グローバルに挑戦できるオポチュニティがあることは非常に魅力的です。

現在のエンジニア組織について

── 現時点の組織体制や人数を教えて下さい。また何故そのような組織体制にしているかその理由もご説明いただけますか。

弊社は2023年から全社的にマトリクス型の組織を取り入れています。(下図参照)マトリクス型組織は、SpotifyモデルというSpotifyで採用されていた組織モデルをベースに発展させたもので、開発では全社よりも早く2020年4月よりこの体制を取っています。

この組織体制は縦軸と横軸の構造になっており、縦軸が「プラクティスグループ」、横軸が「アチーブメントグループ」となっています。プラクティスグループには、エンジニアやプロジェクトマネージャー、デザイナーといった専門技能を持つメンバーが所属しています。横軸のアチーブメントグループには、例えば特定のプロダクトや、SMBセグメントを攻める営業チームなど、事業上のミッションに合わせたチームが構成されています。

プロダクト開発においては、エンジニアだけでなく、プロダクトマネージャー、デザイナー、SRE、機械学習エンジニアなどがクロスファンクショナルなチームを形成しています。この体制により、多様な専門知識を持つメンバーが協力し合い、効率的かつ効果的にプロジェクトを推進することが可能になっています。

── 開発組織を円滑に運営するために、どのようなことに取り組んでおりますか。

四半期に一度、CTOメッセージと題して開発チーム全体にメッセージを発信しています。それに加えてできるだけ覚えやすいフレーズを作ってメッセージの中で届けて覚えてもらうことを意識しています。その中の取り組みの一つなのですが、開発組織の基本方針として「Product Centric」という言葉を掲げています。プロダクトを中心に位置付け、開発組織の全ての活動はプロダクト(事業)の成長と、プロダクトを通じたカスタマーへの価値提供にフォーカスするという方針です。現在、開発組織は会社全体の3割ほどとなり、様々なバックグラウンドを持つメンバーがいます。頼れるメンバーが多数参画して心強く思う一方で、全員が同じ方向を向くのが難しくなってきたと感じるシーンもあります。そこで、プロダクトを中心にカスタマーに価値を提供するというメッセージを強調し、全体の方向性を揃えることを目的に、「Product Centric」を掲げるようにしました。

また、扱うプロダクトラインナップの増加に伴い、複数のプロダクトで共通する機能を効率的に高品質で提供するための基盤整備が必要な状態になってきました。そのため、品質やスピードを高めるための基盤整備に力を入れています。システムを構成するレイヤーをFeature、Platform、Foundation、Infrastructureの4段階で定義し、今年度からFeatureを除いた他三つの基盤レイヤーに投資し、整備する計画を立てています。

その他、生産性の可視化と業務効率化にも注力しています。可視化は、投資したリソースに対してどれだけリターンがあるかを測定し、効果をトラッキングしようという取り組みです。業務効率化の面では、特にAI技術を活用して、プロダクト開発の効率を高める取り組みを進めています。

さらに、直近2年間で100人ほど新たに採用し、組織が急速に拡大しました。そのため、「文化の濃度」が薄まってきていると強く感じています。ここでいう「文化」とは、明示的な指示がなくても自然に行われる習慣や行動のことを指します。そして、「濃度」というのは、組織全体でそういった行動を実行できる人が占める割合のことです。これを私は「文化の濃度」と定義しています。この「文化の濃度」を上げていくことが私が今年注力していることの一つです。

── 次に、開発組織の良いところについてお聞かせください。

まず、弊社の大きな魅力は「Product Centric」の考え方が浸透していることです。弊社では事業の先にいるユーザーのためという、プロダクト志向が強いメンバーを採用しており、全員が同じ方向を向いています。また、プロフェッショナルの採用を意識するために、採用グレードを高く設定しつつ、個人の技術や求めるキャリアパスに応じた軸をいくつか設けています。そのため、レベルの高いエンジニアが多く在籍しており、品質の高いプロダクトを提供できています。

さらに、グローバル展開していることからさまざまな国籍やバックグラウンド、それに紐づく知識や知見を持っている方が活躍しています。今いるメンバーだけでなく、これから弊社に来てくれるエンジニアの方にとっても、成長性が期待できる魅力的な環境だと思っています。

今後の目標

弊社が目指すのは、グローバルでトップのリーガルカンパニーになることです。そのためには、世界トップクラスのテクノロジーを持ち、グローバルで競争力のある企業になる必要があります。

具体的には、世界水準のテックカンパニーとして必要な要素を定義し、その目標に向かって進むための道筋を描き、実行することが重要です。これらの戦略の策定と遂行を通じて、世界水準のリーガルテックカンパニーへと成長させていきたいと思っています。

── グロースウェル社のEQ診断でいうとどのコンピテンシーに当てはまる方と一緒に働きたいですか?もしくは今の開発組織に必要なタイプはどれにあたりますでしょうか?(図の中からお選びください)もちろん、全てのタイプが必要だとは思いますが、お答えください。

おっしゃる通り、一つのタイプだけで会社は成立しませんし、組織も成り立ちません。万遍ないタイプが必要ですし、特に今後、多様性が重要だと考えています。

その中で、弊社の今の状況やカルチャーに合いそうな人について話すと、「7:デリバラー」と「3:ビジョナリー」の二つのタイプが弊社に合うと思います。

一方で、「4:ガーディアン」のタイプは弊社のカルチャーにはあまり合わないかもしれません。自らユーザーのために何が必要かを考えて行動できる方や、そうした開発をしたい方はぜひ、弊社を見てみてほしいですね。

── 最後にどのような人と一緒に働きたいか教えてください。

まず、会社として求める人材についてですが、弊社には「バリュー」という価値観があります。このバリューに共感してくれる人と働きたいと考えています。特に「We think big. We aim high.(思い切り大きな未来図を描く。)」というバリューが弊社のカルチャーを色濃く表しており、これに共感してもらえる人を歓迎しています。

次に、開発組織として求める人材についてですが、「Product Centric」という考え方に強い共感を持ってくれる人が理想です。プロダクトを中心に据え、その価値を最大化するために尽力できる人を求めています。

最後に、プロフェッショナル意識を高く持ち、与えられた条件や制約の中で最大の成果を出すために実行できる人が理想です。高度なプロフェッショナリズムを持ち、チームの一員として協力しながら目標を達成できる人を歓迎します。