CTOが語る!クウゼン誕生秘話と開発組織

白倉 弘太 氏|株式会社クウゼン 共同創業者 取締役CTO

アクセンチュアでITコンサルタントとして大手企業のシステム開発に従事した後、ピクスタ株式会社に入社。開発部長としてIPOを経験。2016年に株式会社クウゼンを共同創業し、取締役CTOに就任。

株式会社クウゼンについて

弊社の主力製品は、LINEを活用したマーケティングに特化した対話デザインプラットフォーム「クウゼン(KUZEN)」です。お客様はこの製品を通じて、LINE上での配信やエンドユーザーからの質問に対する自動応答を効率的に行えます。これにより、LINEを通じたコミュニケーションやマーケティング活動をより効果的に運用できるようサポートしています。

弊社の製品の強みは、まずカスタマイズ性の高さです。他社製品と比較して、お客様の個別のニーズに合わせた柔軟な対応が可能です。また、もう一つの大きな特徴は、カスタマーサクセスチームによる手厚いサポートです。単にツールを提供するだけでなく、お客様の目標達成を共に目指し、ツールと人が一体となって包括的なサポートを行っています。

白倉さんのキャリア

小学生の頃は、割と真面目で、成績も良かったんじゃないかなと思います。ただ、中学・高校に入ると、学校にあまり行かなくなってしまって、赤点を取ることもしばしばありましたね。正直、高校をちゃんと卒業できるか心配になるくらいでした。特に何かに夢中になることもなく、ただ学校があまり好きじゃなかったんです。でも、家にあった親のパソコンをいじり始めて、そこからゲームやプログラミングに少し興味を持つようになりました。高校3年の後半になってからは、ちょっと頑張り始めて、一浪して何とか早稲田大学に進学できました。

早稲田では、もともと化学が好きだったので、研究者になりたくて応用化学科に進学しました。最初の半年くらいは真剣に勉強してたんですが、早い段階で「なんか違うな」と感じるようになりました。その後、プログラミングやITに興味が出てきて、もっとそれを専門的に学びたいと思い始め、情報系の大学院を目指すことにしたんです。それで東京大学大学院に進むことになりました。

大学院では、生命工学の研究室に所属していましたが、実際にやっていたのは情報系の研究が多かったですね。具体的には、タンパク質の構造を予測する研究をしていました。例えば、DNAの設計図から、どういう形のタンパク質ができるかを予測するんです。これがうまく予測できるようになると、がん治療薬の開発とかで、効率がぐっと上がって、コストもかなり削減できる可能性があるんです。

そうですね、研究職に進むのは少し自分には敷居が高いと感じていました。研究を通じてプログラミングに触れる機会が増えて、それでIT業界への興味がどんどん強くなっていったんです。そして就職活動を経て、アクセンチュアに入社することに決めました。

アクセンチュアには、技術系のコンサルタントとして入社しました。インフラ関連の技術に携わって、データセンターや基盤系のフレームワーク選定など、いろんな技術導入を支援していましたね。顧客先に常駐して業務を理解しながら、システムの設計や運用にも関わっていました。

アクセンチュアを辞めたのは、自分でアプリケーションを作って起業したいという思いが強くなったからです。とはいえ、ビジネスに関する知識はあまりなかったので、パートナーを探していました。そんなとき、あるイベントで出会った人と3人でサービスを立ち上げることになりました。システムはすべて私一人で作りましたが、完全に無給でやっていたので、半年ほどで貯金が底をついてしまって…。結局、そのサービスも全然使われず、撤退することになりました。

ピクスタにエンジニアとして入社しました。その後、海外展開のアプリケーション開発の話が出てきて、事業責任者として関わることになりました。さらに、新規事業を立ち上げる機会もあって、サブスクリプションモデルの開発を任されました。ピクスタは、画像や動画、音楽の素材を提供する会社で、それまでは1枚ずつ写真を販売していましたが、月額制のサブスクリプションモデルを導入することになり、その事業部長を任されました。結果として、リリース後は事業も順調に伸び、最終的には開発部門の責任者も務め、20~30人ほどのチームを率いていました。

一番印象に残っているのは、ピクスタで新規事業を立ち上げたときの経験です。実は、リリース直前にシステム全体を深夜に止めて、本番環境への切り替え作業をしていたんです。そこでなんとバグが見つかってしまい、リリースができないという緊急事態に。深夜、エンジニア10人ほどが集まって、みんなでバグを探しました。非常に緊迫した状況でしたが、奇跡的に朝5時ごろにバグを発見し、無事に修正してリリースできました。あのときのチームの一体感は今でも忘れられないですね。

そうですね。太田が私のことを知ってくれていて、メッセンジャーで声をかけてきたのがきっかけです。当時は起業の話ではなく「LP(ランディングページ)を作ってほしい」と相談されたんですが、その時期はちょっと忙しかったので自分では手が回らず…。ただ、対応できる人を紹介するといった形で関わり始めたんです。そこから話が進んで、気づけば一緒に事業を立ち上げることになりました。

一つ前に立ち上げた会社は失敗してしまい、約半年で撤退しました。お金がなくなってしまったことと、パートナーとの相性が良くなかったことが大きな要因でした。パートナーが他の事業にも半分くらいコミットしていて、イライラする場面が多かったんです。その経験があったので、次に事業を立ち上げるときは、全力でコミットするパートナーが必要だと強く感じました。太田はまさにその「全力でコミットする姿勢」を持っている人でしたし、話し合いもできる相手でした。お互いにしっかり意見を述べながら話し合える人だと感じたのが大きかったですね。

株式会社クウゼン 創業後

はい、最初は特許調査に特化したクラウドソーシング事業をやっていました。世界中から特許調査員を集めて、日本企業からの依頼に応えるという形でしたね。でも、1年ほどでうまくいかなくなり、その後、チャットボットの事業にシフトしました。

ちょうど1年くらい経って、「このままじゃ厳しいね。次どうする?」って話になったんです。その時期にFacebookがチャットボットのAPIを公開して、少し後にはLINEも同じように公開したので、世の中にチャットボットブームみたいな流れが来ていました。アメリカでは有名なスタートアップがチャットボットに注目していて、Web上でも「こんなことができるよ」って情報がどんどん出てきてましたね。たとえば、チャットボット上でサングラスを買えるとか、そういう未来が見えてきたので、「これは面白い」と感じて本格的にチャットボットのビジネスを始めました。

創業当初は、私と太田以外は全員インターンの学生で、本当にカオスでした(笑)。もちろん楽しい面もたくさんありましたが、やっぱり大変なことも多かったですね。その時のインターンの数名は、今でもウチで働いてくれていて、卒業後に一旦別の企業で経験を積んでから戻ってきてくれました。その他には、資金面でもかなり苦労しました。2016年の7月にシード資金を調達したんですが、それでも資金がすぐに減ってしまい、事業をどうやって軌道に乗せるかすごく不安でした。でも、新しいことに挑戦している感覚は楽しかったです。

ベータ版を出し始めた頃は、まだインターン生が中心の体制でしたが、徐々に体制を整えていきました。途中からはインターン生だけでなく、海外のエンジニアも取り入れるようになりました。特にベトナム人のインターンが1人いて、その繋がりでベトナム系のエンジニアが増えていったんです。今の体制は40人くらいで、ベトナムのエンジニアも多くて、リファラルでどんどん増えました。今でもそのネットワークは続いていますね。

そうですね。当時のベトナム人インターンは日本語が話せなかったので、私が全てのやりとりを担当していました。言語の壁は大きかったですが、今ではだいぶ慣れました。

今は開発部門全体の統括をしています。VPoEもいるので、私は技術的な意思決定やプロジェクトの計画・設計を中心に関わっています。それに加えて、生成AIを活用した新規事業の立ち上げにも関与していて、こちらも私が統括しています。

まず、SaaSとして1つのプロダクトをお客様に提供しているという点が非常に魅力的です。自分たちのプロダクトで世の中を変えたり、顧客に価値を提供することに純粋にコミットできるところが大きいですね。プロダクトに関する意思決定も自分たちでできるので、愛着を持って仕事に取り組めます。

さらに、生成AIをはじめとする最先端の技術を使って仕事ができることも非常に魅力的です。IT業界でも、使いたい技術が必ずしも自由に使えるわけではないことが多いですが、私たちはプロダクトのオーナーとして、最先端の技術を活用できる環境があります。

現在のエンジニア組織について

現状、開発部門は40名ほどで、そのうち23名がエンジニア、9名がQA、PMが6名です。エンジニアのうち19名はベトナムにいて、昔は私が全部ブリッジ役をしていたんですが、今では日本語が話せるエンジニアが何名かいて、彼らが間に入っています。ちなみにQAにもベトナムメンバーがいますね。

これもよく聞かれる質問なんですが、特に問題はないです。今はリモートワークが主流ですし、場所に関係なく仕事が進められています。確かに言語の壁はありますが、Slackで英語を使ってやり取りしているので、コミュニケーションに困ることはないですね。

ビジネス側との連携はPMがしっかりと調整してくれています。PMが顧客からの要望を受け取り、それを開発チームに伝えるという流れですね。PMのスキルが高くて、要望を細かく分解してエンジニアに落とし込んでくれるので、非常にスムーズにコミュニケーションが取れています。

今は主に、LINEを使ったマーケティング用途の配信システムやチャットボット構築システムの改善や機能拡張に力を入れています。それが全体の7割くらいを占めていて、残りの3割は生成AIを使った新規プロジェクトの立ち上げに取り組んでいます。

良い点は、シニアレベルの優秀なエンジニアが多く揃っているので、技術的に難しいプロダクトの開発にも積極的に挑戦できるところですね。

改善点としては、コミュニケーションは上手くいっているとはいえ、国をまたいで2拠点で開発している特殊な状況なので、その運用をもっと成熟させる必要があると思っています。たとえば、隣にエンジニアがいるわけではないので、コミュニケーションの齟齬が起こらないようにドキュメントをしっかり整備することが大事です。今も改善は進んでいますが、まだまだ改善の余地があると感じています。

ベトナムのエンジニアを採用する際には、すでに高いスキルを持っているかどうかを重視しています。リファラルを大事にしていて、紹介者からどんな人物かを確認していますね。紹介者が「この人は一緒に働きやすい」と言うなら、安心して採用しています。

リファラル採用は、日本人の採用でも同じで、性格やスキルのレベルが担保されているので非常に効果的です。紹介する側も、自分と合わない人を紹介しないので、安心して信頼できる採用方法ですね。

今後の目標

私たちの最終的な目標は、世界中にサービスを提供できる企業になることです。日本だけでなく、グローバルに「クウゼン(KUZEN)」というサービスが認知されて、たとえば「対話プラットフォームといえばクウゼン」と言われるような存在を目指しています。

そうですね、インベンター、スーパーヒーロー、デリバラーのタイプが必要かなと思います。常に新しい技術やアイデアに挑戦する姿勢がないと、我々のサービスを提供していくのは難しいです。それに加えて、チームで協力しながら成果を出せる人が大切です。一方で、上司の指示に従うガーディアンタイプの人は、うちの組織にはあまりフィットしないかもしれません。もちろん指示に従うことは大事ですが、指示待ちではなく、自分で考えて動ける人を求めています。

まず、一番大事なのは、仕事に情熱を持って全力でコミットできる人です。これは創業当初から一貫して大切にしていることですね。会社に対する忠誠心ももちろん大事かもしれませんが、それよりも自分が与えられた仕事に対して責任を持ち、全力で取り組んで軌道に乗せる力を持っている人が必要です。