徳永 岳史氏|株式会社COUNTERWORKS CTO

京都大学卒業、東京大学大学院博士課程にて免疫学を研究後、エンジニアに転身。SIベンチャーからオールアバウトを経てオークファンにて4年間、執行役員CTOとして経営に参画。その後、LIXILにてソーシャルビジネス事業の新規事業開発チームリーダー、OYO Japanにてオンライン販売部門責任者として勤務。2021年にCOUNTERWORKSに参画、2022年4月CTOに就任。

株式会社COUNTERWORKSについて

── 御社の事業内容を教えて下さい。

弊社は、「すべての商業不動産をデジタル化し、商いの新たなインフラを作る。」をミッションにし、ポップアップストアやイベントなど短期出店用の商業スペースを簡単に発見、利用できる日本最大級のオンラインプラットフォーム「SHOPCOUNTER 」と商業施設のオンラインリーシング支援SaaS「SHOPCOUNTER Enterprise」を展開しております。

徳永さんのキャリア

──  当時はどんな子供(小学校〜高校)でしたか。

割とちゃんと勉強もできる子で意思も強く友達とよく喧嘩してた子供でしたね。小学校の高学年ぐらいから周りに自分よりも優秀な人がいるなと気づき、多少柔らかくなってきました。高校生の頃は全力で研究者を目指していましたね。化学が好きで研究者になるんだと強い思いを持って取り組んでいました。

── 京都大学進学〜東京大学大学院に進学し、博士課程にて免疫学を研究した経緯を教えてください。

大学に進学してからも化学を学んでいたのですが、生物に興味が移ったんです。生物の中でも高次機能に興味を持ち免疫学の研究に進みました。

── 博士課程にて免疫学を研究した後にエンジニアに転身し、1社目のSIベンチャーに入社するまでの経緯を教えてください。

分野にもよりますが、研究は非常に孤独な仕事でした。支え合いが全く無いわけではないのですが、より共通の目的を一緒にやっていきたいと思いました。また研究成果は基本的に99.9%正しさを証明して発表をしていくのですが、対するビジネスは、状況に応じて確信を持って選択をし、変化を楽しむみたいなところがあると思い、私はそっちの方が向いているのではないかと博士までやって気づきました。

── なぜエンジニアに?

実は大学時代に1年ぐらい、Visual Basicでプログラミングを作るアルバイトをしていたのですが、すごく楽しくて熱中してたんですよ。ただ博士まで行って就職活動もしていなくてどうしようかなと思っていた時に、友人が『ウチの会社に来ないか』と誘ってくれたのがキッカケで1社目の会社に入社しました。実は入社当日までは何をやるのかわかっていなかったのですが、入社後にエンジニアとしてプログラミング書いてと言われてエンジニアとしてのキャリアがスタートしました。なので明確にエンジニアになると決めていたわけではなく、色々なものが回りまわってなった感じですね。

── その後、オールアバウト社、オークファン社、LIXIL社、OYO Japan社に入社した経緯や各社での取り組みを教えてください。

自社開発で大きなプロジェクトに挑戦したいと思い、オールアバウトに転職しました。オールアバウトでは主力事業の一つであるサンプル百貨店を買収したタイミングで技術責任者として出向し、様々なグロース施策やシステム改修を進めていきました。

オークファンは、友人に誘われて入社しました。上場後の環境変化もあり、CTO就任の打診を受けCTOになりました。インフラからアプリケーションまでかなりレガシーな環境だったので、一つ一つをプロジェクト化して改修し、モダンな環境に移行しました。オークファンではエンジニアとして多くの経験を積みやり切ったと感じたので、40代手前で新しいチャレンジをしようと思い、LIXILに入りました。

オークファンの元上司がLIXIL内で社会事業を担当しており、それが非常に面白そうだったので、その部署にジョインさせてもらいました。ジョイン後は、スラム街向けのトイレを作るプロジェクトの責任者を務めました。全くのゼロベースからフィールドとなる国の選定を始め、インドネシアに決めて現地のコネクション作りから実際のパイロット製品の開発を行いました。同じエンジニアリングでも、物として製品を作ることは非常に多くの学びがありました。

LIXILに勤めていたとき、インドや東南アジアに頻繁に出張していました。その際にOYOというホテルグループを知りました。OYOが日本でもビジネスを展開するというニュースを見て、ちょうどそのタイミングでOYOからダイレクトリクルーティングのメッセージが届きました。興味を持ち話を聞き、会社の事業に非常に関心を持ち、入社を決意しました。

入社後はオンライン販売チャネルの責任者をしていました。コロナ禍に入り、宿泊業界を襲った大きな変化の波を真っ只中で経験できたのは非常に貴重でした。また、それとは別にOYO Japan (現 Tabist) がインド本社からスピンオフするプロジェクトにも深く関わりました。当時、全て本社で開発されたシステムを使用しており、スピンオフするためにはJapanのシステム戦略策定がマスト、元CTO経験者として未来のシステムビジョンを描くことを頼まれました。大胆な決断の一歩を経営陣と踏み出した日のことを、今でも鮮明に思い出します。

──  株式会社COUNTERWORKSに入社するまでの経緯を教えて下さい。

いくつかの選択肢があったのですが、様々な会社の話を聞く中でCOUNTERWORKSの事業ドメイン、事業内容、そして目指しているビジョンに非常に魅力を感じました。また、COUNTERWORKSは非常に真面目でしっかりとした会社だったので、この会社に入りたいと思いました。

株式会社COUNTERWORKS 入社

── 入社後、どのようなことに取り組みましたか。苦労したことや良かったことなどもありますか?

そうですね、オークファン時のCTOとCOUNTERWORKSでのCTOではかなり違いがあります。オークファンの頃は、私が「こうした方がいい」とか「これはやってはいけない」といった大きな変化を計画し、具体的に指示を出していました。しかし、COUNTERWORKSでは、そこまでの指示をしなくても、皆が自分たちで考えて自走してくれます。これは時代の変化もあり、以前よりも圧倒的にいろいろな情報が溢れ、自分たちで選択できる環境が整っているからだと思います。

それでも、明らかに効果が大きそうな施策や、絶対に取り組むべきプロジェクトは私からも提案しています。また、長期的にシステムをどう変えていくべきかという計画を立案したり、明らかに問題がありそうな施策にストップをかけることもあります。

このストップは特に難しいです。チームで推進している考え方ややり方を否定する形にもなるため健全な議論が必要で、摩擦を生むことを覚悟でとことん向き合う、そんな気持ちでコミュニケーションを取っています。

── 障壁になったことはありますか?

そうですね、一時的に皆がざわついたり、「そうなんですか?」という反応があったりしますが、最終的には皆の理解を得ることができています。しっかりとコミュニケーションを取り、「こうした方が良かったよね」と納得できるように持っていくことが重要です。

実際、今の段階でそれが正しいかどうかはわかりませんが、その時点ではおそらく正しかったのだろうと考えています。

── 現在の徳永さんの業務内容を教えて下さい。

時期によって変動しますが、採用や中長期的なコミュニケーション、各種分析などに費やす時間が全体の8割くらいを占めていると思います。

実装に関しては、自分で時間を作って行うという感じです。採用関連の業務にはどうしても一定の時間を取られることが多いと感じています。

── COUNTERWORKSの事業の魅力をお聞かせください。

まず、プラットフォーム事業のSHOPCOUNTERについてですが、この事業は非常にユニークだと思っています。商業用不動産を探す人々が、その不動産を見つけられなかったり、どこにあるか比較できなかったりといった問題が多く存在します。この問題を解決するために、どのようにイネーブルメントやサービスを実現していくかが重要です。今はまだやりたいことが多くある一方で、実現できていないこともたくさんあります。しかし、それらを実現したときに、新しい未来 (商いの新たなインフラ) があると信じています。

一方、エンタープライズ事業のSHOPCOUNTER Enterpriseについてですが、すでに複数社の大手企業に導入されています。しっかりとしたプロダクトを提供し、それが大手企業に受け入れられていることは大変誇らしいです。同じSaaSを各社にご利用いただくことで、より普遍的な価値が見えてくると思いますし、周辺業務など、その裾野の広がりも大いに感じています。

このように、プラットフォーム事業とエンタープライズ事業の両方が、それぞれのユニークな特徴を持ちながらも、新しい可能性を秘めていると考えています。

現在のエンジニア組織について

── 現時点の組織体制や人数を教えて下さい。

業務委託の方も含めて、チームは約30人います。現在はエンタープライズ向けSaaSの開発により多くのメンバーが参画し力を入れて開発しています。

開発チームは、機能を作るチームとそれ以外の作業を担当するチームに分かれています。それ以外の中には、インフラのやQA、データ分析、デザインを行うチームがあります。これまで、機能開発のチームは少しずつ人員を増やしながら組織を整えてきました。採用基準は厳しく、CDOの山本と私で面接をしっかり行い、本当に来てほしいと思う人だけを採用しています。

インフラ面にも力を入れ、基盤を整備してきましたが、QAの強化はまだ十分ではありません。今後はQAのレベルをもう一段階上げることが課題です。また、マネジメント体制についても課題があります。これまでは階層化を意識せず、山本と私でほぼすべてを見てきたため、非常にフラットな組織となっています。スクラムを回すリーダーはいますが、人数が増えてきたこともあり、さらなる内外のコミュニケーションを強化するためにも、エンジニアリングマネージャーを採用する必要があると感じています。

── 現在のエンジニア組織の良い点(特徴や魅力的なところ)と課題点(ここを改善すればもっと良くなるなど)がありますか。

そうですね、開発組織の特徴として、会社のバリューを非常に大事にしています。採用の際には、そのバリューに沿っているかどうかを徹底的に確認し、感じ取るようにしています。

また、横のコミュニケーションが非常に活発で、みんながコミュニケーションを取りやすい環境が整っています。意見交換も活発で、例えば「これはこうした方が良くないか?」といった突っ込んだ話も気軽にできる環境があります。こうしたコミュニケーションのしやすさと、協力し合う姿勢が魅力的だと感じています。

課題点についてですが、今までフラットな組織で頑張ってきましたが、メンバーが増えてきたこともあり、エンジニアの採用や計画などをほぼ山本と私の二人でやっている現状には限界を感じています。このままでは拘束される時間が多くなりすぎるため、人員を増やして役割を分担する必要があります。例えば、エンジニアマネージャーのような役職を設けて、管理業務を切り離すことが重要です。

また、品質の担保に関しても課題があります。現在、エンジニアリングチーム全体でテストを徹底していますが、品質保証は専門的なスキルを要する部分があります。すべてのエンジニアがこのスキルを持っているわけではないため、専門的に品質保証を強みとする人材を確保することが必要です。そうすることで、より高い品質の製品を効率的にデリバリーできるようになります。この点は、今後の目指すべき課題として取り組んでいきたいと考えています。

今後の目標

会社として目指していくべき方向性としては、商業不動産のデジタル化を推進することが重要だと思っています。具体的には、商業不動産のデジタルサービスを提供する会社として、「SHOPCOUNTER」が出店先探しの最初に思い浮かぶような存在になることが目標です。この分野は市場が大きく、その中でどれだけのシェアを獲得できるかが重要な指標となります。業界全体でのプレゼンスを高めたいと考えています。

我々は商業不動産領域、特に店舗に集中していますが、それ以外の商業不動産にも進出できる可能性があると考えています。より大きなピクチャーを描き、商業不動産全体をカバーすることができればと思っています。

ミッションとしては、商いの新たなインフラをつくることです。そのために、愚直にやるべきことを実行していくことが我々の目指す姿だと思っています。

── グロースウェル社のEQ診断でいうとどのコンピテンシーに当てはまる方と一緒に働きたいですか?もしくは今の開発組織に必要なタイプはどれにあたりますでしょうか?(図の中からお選びください)

個人的には『3:インベンター』と『7:デリバラー』がキーだと思っています。反対に『8:セージ』はちょっと難しいかなと思います。また『4:ガーディアン』のような人もあんまり採用はしていません。

── 最後にどのような人と一緒に働きたいか教えてください。

そうですね、一番重要なのはミッション・バリューに共感してくれる方です。

例えば、CDOの山本と私は経験してきたバックグラウンドも異なり、時折、意見が対立することもあります。しかし、採用に関しては驚くほど意見が一致します。これは、どんな人を採用したいか、つまり我々が大切にしているバリューに合致するのはどんな人かを具体的に言語化しているからです。このプロセスを通じて、候補者の内面や考え方をしっかりと理解し、メッセージを共有しています。

一緒に働きたい人に求めるのは、我々のミッションに共感し、そのミッションに向かって共に進んでいけるかどうかです。また、会社として大切にしているバリューを体現できる人であることも重要です。

特に、失敗を恐れずにチャレンジする姿勢、やり遂げる力、チームメンバーへのリスペクトなど、基本的なことですが非常に重要だと思ってます。