エネルギーテック企業のVPoEが語る『社会インフラ構築の魅力』とは?

亀田 大輔 氏|ENECHANGE株式会社  執行役員VPoE

東京理科大学大学院を卒業後、SIerを経てピクスタ株式会社でリードエンジニア・運用責任者、株式会社FiNC Technologiesで開発責任者、ユニオンテック株式会社(現クラフトバンク株式会社)でCTOを務め2021年7月にENECHANGE株式会社に入社。VPoEとして全社のエンジニア組織のマネジメントをすると共に、プラットフォーム事業部開発責任者兼CTO室長を務める。

ENECHANGE株式会社 について

先ず、会社の設立についてお話しします。創業者の城口は、東日本大震災と福島原発事故で、日本の電力業界の現状に課題感を持ったことをきっかけに、日本におけるエネルギーの未来について事業を展開することを考え、イギリスのケンブリッジ大学大学院に留学しました。2013年に「ケンブリッジ・エナジー・データ・ラボ」という研究機関を設立し、電力のデータ解析についての研究を始めました。このようなストーリーもあり、ENECHANGEは『エネルギーの未来をつくる』というミッションを掲げています。

現在は、家庭・法人向けの電力切り替えプラットフォーム「エネチェンジ」「エネチェンジBiz」を提供するエネルギープラットフォーム事業、脱炭素社会の実現に不可欠な電気自動車(EV)の標準化に必要なEV充電インフラを普及拡大するEV充電事業、エネルギー業界に特化した垂直型SaaS事業を展開するエネルギーデータ事業の三つの事業を展開しています。

亀田さんのキャリア

実は、大学受験に2年間浪人した経験があります。当初は物理や相対性理論に興味があり、その分野の学部に進学するつもりでしたが、浪人中にLinux系のコンピューター雑誌を読む機会があり、「これからすごい世の中が変わっていく」と感じ、大学進学の方針を情報系に変更することにしました。大学2,3年次には、オープンソースまつりをきっかけにオープンソース活動に熱中し、学生時代を通じてOSS活動に取り組んでいました。また、その流れの中でいくつかのアルバイトも経験しました。

大学研究領域がソフトウェア開発ソフトウェア工学を専攻していたのでそれを活かし尚且つOSSも活用できる企業を探しており、中小規模のSierに入社しました。

中小企業のSIerに入社したものの、大手SIerからの仕事を受けることが多く、実際に作ったものを使って頂く方のために仕事をしたいと感じ、自社サービスを提供する企業であるピクスタに入社しました。当時、ピクスタは資金調達を控え、事業も軌道に乗り始めた段階であり、社員数も20名程度で急成長を目指すタイミングでの入社でした。リードエンジニアとして、PerlからRuby on Railsへの移行やAWSへのインフラ移行プロジェクトに携わりました。その後、自社開発の経験を通じて市場規模にも意識を向けるようになり、転職を決意しました。その際、CTOとしてのキャリアも考慮に入れ、いくつかの会社と話を進めた結果、賃貸情報にCTO候補として入社することになりました。(賃貸情報社は後に事業譲渡されました)

しかし、入社直後に腰を痛め、業務に支障をきたす状態となりました。会社との協議の末、辞職することになりました。その後、腰のリハビリ期間中は、フリーランスとして仕事を行いました。その間、Wantedlyを通じてFiNC Technologiesの人事から連絡を受け、フリーランスとして関わることになりました。腰の回復後は正社員として働くことも視野に入れていましたが、FiNC Technologiesの事業領域がトレーナーを抱えていたため、現状(腰のリハビリ期間中)でも入社してほしいとのオファーを受け、正式に入社することになりました。リードエンジニアやアプリ開発統括マネージャーとして、約4年間チームを率いた後、建設領域に興味を持ち、クラフトバンクにCTOとして入社しました。CTOとして、コア部分の開発をリードするとともに、組織作りに携わりました。

FiNC Technologies時代は、当初は腰の状態もあり、主にイチプレイヤーとしての仕事に従事していました。元々私は組織が上手く機能していない状況を放置できないタイプでしたので、社内の業務がうまく回っていないことに対して関わり、さまざまな問題を解決した結果、アプリ開発統括マネージャーの役割を任されることとなりました。この経験は、開発責任者のキャリアを歩んでいく中で成功体験となりました。

クラフトバンクでの経験中に、COVID-19による事業環境の変化と戦略の変更に伴い、CTOからイチプレイヤーに役割が変わり、時間に余裕が生まれました。その状況の中で、サイトビジット(現在はfreeeサイン株式会社)に勤務している友人から、技術的な負債や課題があるため、副業として協力してほしいとの話をいただきました。ちょうど時間に余裕があったので、その申し出に応じることにしました。その後、有難いことに正社員としてのオファーもいただきましたが、サイトビジットがfreee株式会社のグループになるタイミングでもあり、大規模企業の子会社での勤務は私には合わないと考え、その話は断りましたね。

当時、41歳から42歳の時期にコロナ禍における環境変化で新たなるチャレンジを探すことにし、30〜40社ほどのカジュアル面談を受け、自分に合った企業を探すことにしました。最終的には、10社ほどに絞り、その中にENECHANGEも含まれていました。ENECHANGEを選んだ理由は、最終面接の直前に急遽カジュアル面談の機会があり、CMOの曽我野、当時のCOO社長である有田、そして当時のCTOの田中と面談する機会が与えられたことがきっかけです。この面談で、会社の可能性について話を聞かせていただきました。特に、スマートメーターの第三者開放の活用に取り組み始めるという話に興味を持ちました。スマートメーターの第三者開放の活用によって各家庭における実際の電気の使用状況にあわせた提案や節電支援のアドバイスができることの魅力に惹かれました。また、事業全体として社会インフラとして環境問題や社会問題にも関われることも魅力的だと感じ、入社を決意しました。またENECHANGEは、通常の選考の途中で最終選考の前にカジュアル面談を行うことはないので、そのような機会を与えていただいたことから、大変熱心に評価していただいていると感じ、入社を決める決め手となりました。

ENECHANGE株式会社 入社〜現在まで

最初に感じた課題は採用でした。例えば、採用ページが募集要項のみ表示され、それ以外の情報が載っていなかったり、エンジニアのインタビュー記事がほとんどなかったりしていました。客観的に見て、スカウトメールを送ったとしても興味を持ってもらいにくい状況でした。開発責任者としての立場では全社としての採用改善は管轄外でしたが、会社全体としてこの課題に取り組まなければ事業部の採用にも支障があると考え、積極的に行動しました。

具体的には、FiNC Technologies時代から繋がりのある採用コンサルの方に相談し、手伝ってもらいました。採用コンサルの方からの助言で採用サイトの刷新の他にエントランスブックも作成しましたね。また、他事業部で新規事業が立ち上がる際にアプリの開発言語がFlutterでしたが、社内にFlutterエンジニアやアプリエンジニアがいない状況でした。そこで、私自身のネットワークを活用し、アプリエンジニアを業務委託で採用することができました。後日談ですが、そのジョインした方は相当な活躍をされているようです(笑)。

既に辞任されていますが、当時CTOを担っていた田中さんがCTOを降りるという話がありました。CTOの役割を分解して、さらに足りていない部分を補うためにはどのような体制でやっていくのがいいかという話を曽我野も含めた四人で話し合いましたね。私自身は事業に関わっていきたい気持ちが大きかったので最終的に兼任という形でVPoEとして採用やキャリア育成の役割を担うことになりました。

現在、私はCTO室のVPoEと事業部の副事業部長の2つの役割を担っています。このうち、約7割の時間を事業部の副事業部長としての業務に費やし、約3割の時間をCTO室のVPoEとしての業務に充てています。

副事業部長としての業務では、事業の成長戦略に関する議論に参加し、計画を策定し、どのような開発組織を構築し、どのようなサービスを展開していくかについて意思決定を行っています。

一方、VPoEとしての業務では、採用プロセスの改善や採用戦略の構築をはじめ、ENECHANGEに長く関わっていく社員のキャリアや人生に関する支援を行っています。1on1の形式で行う面談を通じて、個々の社員のキャリアパスや成長について話し合い、その方向性を構築しています。頻度としては、1ヶ月半ごとに1回、四半期ごとに1回のペースで行っています。

現在のエンジニア組織について

先ず、ENECHANGEはエンジニアも含めて事業部制です。事業に対してちゃんとコミットしてくださいという意図で事業部制としています。横断的な業務については、CTO室が担っています。正社員エンジニアだと全体で35名ほど、業務委託のエンジニアも同数程度います。

当社のエンジニアは、真面目で勉強熱心な人が多く、またミッションである『エネルギーの未来をつくる』について想いを持って取り組んでいるところも特徴です。

評価制度としても、会社のブランディングへの貢献度を重視しています。ブログの執筆は個人の興味関心に基づいて行われている傾向がありますが、外部向けのイベントに関しては、会社のブランディングに対する課題もあったため、外部のブランディング支援を行っている専門家を招き、積極的に取り組むメンバーを中心に他社事例を学びました。

この経験を通じて、会社のイメージを明確に伝えるための情報発信が重要であることが認識され、企画ミーティングを通じてテーマを設定し、ブランドイメージに合ったアプローチを取ることが行われています。同様のアプローチをブログにも適用したいと考えており、一方で個人が自主的に執筆している点も尊重しています。そのため、バランスを取りながら活動を進めていくことが必要です。

現在は、積極的なメンバーによる活動が中心となっていますが、今後はさらに多くのメンバーがブランディングに貢献できるように個々のブランディングにも寄与できる形も取り組んでいきたいと考えています。

今後の目標

当社の魅力は、社会インフラを構築し、技術的にもビッグデータやトランザクションの多い領域に取り組んでいることです。このような会社は中々珍しい存在であり、そのような環境で活躍することは貴重です。私は、そのような土台をしっかりと築くことが私の役割であり、また会社全体の目標でもあると考えています。

技術的な側面では、ビッグデータの領域で経験を積んだ方や、多様性を重視し、新たなアプローチやアイデアを持ち込んでくれる方を歓迎しています。