山田仁太氏|株式会社PoliPoli COO
灘高校、慶應義塾大学卒。在学中に現代表の伊藤氏・倉田氏とともに株式会社PoliPoliを共同創業し、政治と市民をつなぐプロダクトの立ち上げに携わる。現在はCOOとして、国会議員・行政・企業・NPOなど多様なステークホルダーをつなぐ「政策プラットフォーム」事業や、BtoBの新規プロダクトなど企業向け事業を管掌。政治・行政と経済のあいだにある「空白領域」をテクノロジーとプロダクトで埋めることをテーマに、事業開発と組織づくりをリードしている。
株式会社PoliPoli

政治と社会をつなぐ「政策プラットフォーム」とは
── 御社の事業内容から伺ってもよろしいでしょうか。
私たちは「新しい政治・行政の仕組みをつくり続けることで、世界中の人々の幸せな暮らしに貢献する。」をミッションに掲げています。もともとは国会議員と国民をつなぐサービスからスタートしましたが、政治・行政は関わるステークホルダーが多様です。
現在は、国会議員に限らず、行政・企業・NPOの方々など、より幅広い主体に向けて「政策プラットフォーム」を提供するかたちに発展してきました。

── 現在いちばん注力されているプロジェクトはどれになりますか。
現在は、「行政向け」と「企業向け」の2つに注力しています。
祖業である政治家・政党向け事業は、社会的なインパクトにつながるケースも多いのですが、事業としてはスケールしづらい側面があります。そのため現在は、自治体や省庁を対象とした行政向け事業と、企業の経営・事業開発を支援する事業に特に注力しています。
行政向けでは、住民の意見を収集・分析し、政策立案に反映しやすくするプロダクト「PoliPoli Gov」を軸に、政策カンファレンスの企画・運営や総合政策策定などの「自治体経営」の支援を展開しています。現場の声の収集から、有識者を交えた議論、政策設計・実行の支援まで、プロセス全体を包括的に支えるイメージです。

もう一つの柱が企業向けの「政策経営活動」の支援です。政策情報や行政アプローチを、企業の中期経営計画や新規事業開発など経営環境や事業環境の向上に活かしていただくための支援を行っています。大手企業の経営企画・渉外・行政向け営業やスタートアップの方々とご一緒することが多いですね。

関連記事:https://newspicks.com/news/14017207/body/
業界や市場の情報に比べ、政策の方向性や将来の注目ポイントはどうしても見えにくい領域です。そこで政策側の解像度を上げ、中長期の意思決定に活かしていただくこと、政治・行政側の議論状況を把握し、ルール形成や規制のあり方について建設的な対話ができるようにすることを重視しています。
行政や地域との連携が前提となる新規事業では、どの地域で実現しやすいか、関係構築にどれくらい時間・工数がかかるか、そもそも行政経由で進めるべきかなどを整理し、事業の難易度や障壁を可視化することで、経営判断の材料にしていただいています。
現在は、省庁や行政の動きをよりタイムリーに把握できるよう、AIを活用したプロダクト開発も進めています。行政が「今何を考え、どの方向へ向かおうとしているのか」をリアルタイムに捉え、企業の政策経営を支える基盤づくりを行っているところです。
キャリアの原点

── 幼少期からキャリアの原点まで伺えますか。
両親ともに地元で事業を営む経営者でした。父は不動産業、母はブティック経営で、どちらもいわゆるサラリーマン的な働き方とは違う環境でした。小さい頃から「自分で事業をする」という選択肢が自然と身近だったと思います。
中学高校はとても自由な校風で、多様性を受け入れる文化が強い学校でした。周囲の目を気にするというより、それぞれが好きなことをやる空気があって、「人と違うことをする」ことへの抵抗はほとんどありませんでした。
そのため、大学時代に、多くの同級生は医療・研究・大企業に進む一方で、私の場合は「自分の好きなことを選んでいきたい」という想いが強く、結果としてスタートアップ創業に至りました。
スタートアップとの出会い
── 実際に大学に入られてからはいかがでしたか。
大学入学後は、有給インターンでスタートアップのカンファレンスなどに関わるようになり、起業家の空気感に触れる機会が増えました。
その流れの中で、後の共同創業者となる伊藤(現・代表取締役 CEO)と倉田(現・取締役執行役員)に出会います。二人とも同じ学部でしたが、大学内では接点がなく、スタートアップイベントを通じて知り合いました。
伊藤を中心に学生コミュニティが自然とつくられ、その延長で、千葉県市川市長選を題材に「候補者の公約を比較できる」「候補者に質問を投げかけて回答してもらえる」仕組みをつくるプロジェクトが生まれました。これが後のPoliPoliにつながる“原点”のプロジェクトでした。
その後、伊藤から改めて「スタートアップをやろうと思っているんだけど、一緒にやる?」と声をかけられました。学生であれば、一、二年チャレンジして失敗しても就職はできるだろう、と考えていました。大きなリスクはほとんどない。であれば挑戦しない理由はない、という感覚でした。
お金というより、「社会的インパクトのあることがしたい」という気持ちがずっと強かったです。そんな挑戦ができるならやってみたいと思い、2018年2月に学生起業という形でPoliPoliを立ち上げました。
学生生活との両立と、国会議員向けアプリの立ち上げ
── 学業との両立はどのようにされていたのでしょうか。
私は大学を休学することなく、ストレートで卒業し基本的には学業と両立できたと思います。周りの学生が部活動やサークル活動に充てている時間を、私たちは「事業活動」に充てていました。
政治・行政領域は変革に時間がかかるドメインです。いわゆるスタートアップ的に一、二年で急成長を狙うというより、タイミングが来るまでしっかり仕込み、PMFを目指し続けるイメージでした。
創業直後は、国民の声を集めて国会議員とインタラクティブにコミュニケーションできるiOSアプリの開発から始めました。学生起業ということもあり注目していただき、ダウンロード数は伸びたものの、リテンションはあまり良くありませんでした。
振り返ると、「誰の、どんな課題に向き合うのか」という設計や仮説検証が不足していた部分も多かったと思います。本来であれば、最初から大々的にリリースするのではなく、まずはクローズドな環境で少人数のユーザーと一緒に改善していく方が良かったと感じています。
ピボットの決断と、「政治と国民の間」にこだわる軸
── ピボットの決断について教えてください。
正式リリースから二、三週間ほどで、「このままでいいのか」と創業メンバーで議論しました。領域自体を変えるのか、政治・行政から離れるのかまで含めて話し合ったのを覚えています。
その中で、政治と行政の間には既に多くのプレイヤーがいる一方、「政治と国民の間」は空白に近い領域だと再認識しました。ここを埋める存在はほとんどいない。だからこそ「政治と国民をつなぐ」という軸はぶらさない方がいい、という結論に至りました。
結果的に、ミッションに近いこの軸だけは変えず、その中でプロダクトをピボットし続ける方針を決めました。2019年頃は、アドバイザーの方と週次で検証テーマを決め、仮説検証と自分たちのスキルアップをひたすら繰り返していた時期でした。
その一方で、「ニーズはあるが、事業としてスケールしない」パターンも多く、次の一手に悩む期間が続きました。
行き詰まりの中で、「自分たちのつくりたい世界観やビジョンをもっと前面に出した方がいいのではないか」と方向転換し、現在のWebサービスとしてのPoliPoliにつながるプロダクトを展開し始めました。代表の伊藤が国会議員の秘書を経験するなど、現場の解像度を上げながら「本当に使われるサービスとは何か」を考え続けた結果、国会議員の方々にも継続的に使っていただけるプロダクトへと育ってきた感覚があります。
そうした試行錯誤を重ねる中で迎えた大きな転機が、2021〜22年頃に行政向けサービス「PoliPoli Gov」を立ち上げ、デジタル庁に利用いただいたことでした。
この出来事をきっかけに、政治家だけでなく行政にもプロダクトを提供していく方向へと舵を切り、PoliPoliは「社会実装フェーズ」へと本格的に移行していきます。
同時に正社員採用も本格化し、それまで業務委託やインターン中心だった組織から、一段階ステージが変わった実感がありました。
組織づくりで直面した「当たり前」の不在
── 組織づくりで苦労された点はどこでしょうか。
他社で社会人経験を積んでから起業したわけではないので、最初は「一般的な会社の基準値」が分からない状態で組織づくりをしていました。
新しく人が入ってきたときに、マネジメントはどこまでやるべきか、何を求めていいのか。創業メンバー三人のスタイルも少しずつ違うので、自分たちなりのスタンダードが当初は曖昧でした。
報酬設計や人事制度も、どのタイミングでどこまで整備すべきかが分からず、適切な優先度をうまくつけられなかった反省もあります。
こうした経験や外部からの採用も経て、創業期の手探りの状態を抜け、事業成長を加速させるための組織の土台が整ったフェーズにあると感じています。
── 現在、山田さんご自身はどのような業務を担当されているのでしょうか。
大きく「企業向け事業」と「人事・採用」の二つです。
企業向け事業では、サポートサービス「PoliPoli Enterprise」と、BtoBの新規プロダクトがあり、私の時間の八〜九割はこの事業をどう大きくしていくかに使っています。
お客様との対話の中で業務解像度を上げながら、新規プロダクトの開発を進めています。開発では、「スクラップ&ビルドを前提とした柔軟性と、たしかなユーザー体験の両立」を重視しています。ToCプロダクトのようにUIに過度にこだわるのではなく、大枠のラインを決め、その範囲内はエンジニア側の判断で進めてもらうスタイルです。
特徴を一言で言うなら「奇をてらわないプロダクトづくり」です。プロダクトにしないと検証できない部分はしっかり形にしますが、その前段階でCSや営業が丁寧にニーズを拾い切ることで、「本当に刺さるものだけをプロダクト化する」方針で進めています。
一方で、お客様が増加するにつれて組織拡大も必要になっているため、採用や人事的な業務にも真剣に向き合っています。
── 改めて、事業の魅力について教えてください。
私たちは「政策プラットフォーム」を、多様なステークホルダーのニーズに合った形で提供しています。経済的な価値はもちろん重要ですが、それ以上に、社会課題の解決や公共領域のアップデートに関われる点に大きな魅力を感じています。
公共の役割が再定義される中で、政治や行政のリソース不足、そして多様化する課題に対し、既存の仕組みだけでは限界が見え始めています。一方で企業側にも官民連携で関わりたいニーズはあるものの、「どう関わればいいのか」が見えていないケースが多い。
そこを私たちがうまくつなぐことで、社会課題の解決と企業の成長の両方を実現できる。政治・行政と企業の間の「空白」にアプローチしていくことで、日本の経済を大きくしていくことにも貢献できると考えています。
政策は、教育、住宅、インフラなど、私たちの生活に関わっています。こうした部分を面で支えられる事業であるという点は、大きなインパクトを持ち得ると感じています。
現在の組織体制と開発体制
── 現時点での組織体制や人数感、体制の意図を教えてください。
全体では業務委託メンバーも含めておよそ50名で、そのうち正社員が30名ほどです。
ビジネスサイドは、政策プラットフォームとして国会議員、行政・企業・NPOの方々などお客様ごとにチームが分かれ、それぞれの政策課題に向き合いながら、あらゆる解決方法を提案しています。
開発組織は、「PoliPoli(国会議員向け)」、「PoliPoli Gov(行政向け)」新規プロダクト(企業向け)の三つのプロダクトがあるため、それぞれCSや営業と密に連携しながら開発を進めています。

今後は個別の開発を進めるだけでなく、横断的なデータ統合にも取り組んでいく予定です。また、政治・行政領域でもAIを活用できる範囲が広がっているので、データの利活用やプロダクトを軸にした事業開発機能を強化していきたいと考えています。
BtoBの新規プロダクトで解決したい課題
── 開発組織で大きく取り組んでいることを、あらためて教えてください。
メインはBtoBの新規プロダクトの開発です。企業・団体で政策動向に関わる仕事をしている方々に提供しており、彼らの日々の業務における政策情報の調査・整理と、行政とのコミュニケーション設計を支援するプロダクトです。
従来のプロセスでは、政策の動向を把握し、自社への示唆を分析するまでに非効率なオペレーションや属人的な対応が発生しているケースが少なくありませんでした。
弊社のサービスは、膨大な政策情報を集約し、必要な情報を横断的かつタイムリーにキャッチアップできる仕組みを提供することで、この非効率性を解消します。
これにより、お客様は自社に関連する重要なテーマについて本当に見るべき情報だけを見ることが可能になり、中長期的な経営・事業の意思決定に必要な示唆を出しやすくして、政策経営活動を実践しやすくすることを目指しています。
── 開発組織としての良いところを教えてください。
今取り組んでいる新規プロダクトも含め、基本的にほぼゼロイチのフェーズで事業をつくっている点で、このフェーズならではの面白さがあります。
その中での強みは、「ディストリビューションチャネルを持った状態で開発ができていること」です。すでに「PoliPoli Enterprise」を導入いただいている企業とパートナー企業のように一緒にプロダクトを作っていく活動を継続的に行ってきました。行政向けでも、ユーザーの解像度を高く維持できている感覚があります。
社内にはカスタマーサクセスとしてお客様をサポートしているメンバーもいて、その人たちがドメインエキスパートとして機能しているのも大きいです。なかなか接点を持ちづらい方々と継続的にコミュニケーションを取りながら、ニーズを探り、プロダクト検証まで行える環境は、ものづくりにおいて非常にありがたい環境をいただいていると思います。そして何より、ミッションに強く共感しているメンバーが集まっていることです。政治・行政の仕組み自体をアップデートしていきたい、社会をより良くしたいという思いを本気で持っている人たちが集まっているので、とても気持ちの良い組織だと感じています。
── 一方で、課題だと感じている点があれば教えてください。
一つは、現時点では「突出したシニアエンジニアが複数いる」ような開発組織にはまだなりきれていないことです。今後スケールさせていくにあたり、大手企業のセキュリティ基準への対応や、機能を広げる際の設計など、スピードと同じくらい設計の質も重視しなければなりません。
どこまでがスピード優先で、どこからは時間をかけてでも設計すべきか。その線引きを十分に整理できているかというと、まだやり切れていない部分があると感じています。
もう一つは、AI活用の全社展開です。開発メンバーはもちろんAIを使っていますが、プロダクト価値は今後平準化していく中で、「AIをどれだけ業務の奥深くまで組み込めるか」が重要になると見ています。PoliPoliは、2026年を迎えてビジョンの改訂を行いました。新しいビジョンでも、テクノロジーやAIの利活用に取り組んでいく方針を明確に打ち出しています。
プロダクト起点で「ここはAIを使えばうまくいきそうだ」という発想もできますが、日々の業務の中で自然とAIを使いこなしているからこそ、「だったらプロダクトにもこう組み込もう」というアイデアが生まれてくるはずです。コーポレートやビジネス側も含めて、そこまでのレベルに引き上げていくために試行錯誤していますが、だからこそ今の組織には大きな伸びしろがあると思っています。
また、AIの精度が飛躍的に向上する一方で、「すべてをAIに任せればよい」と考えているお客様はほとんどいません。だからこそ、「どの機能の、どのレイヤーに、どのようにAIを組み込むか」という設計が重要です。たとえば、将来AIが読むことを前提に、今のうちからAIが参照しやすいデータ構造を仕込んでおく、といった発想です。
こうしたデータ設計や構造の部分をどこまで深く精査できているかというと、まだ道半ばですし、それらを高速にPDCAを回していくためのリソースも足りていません。AIも活用しながらですが、人をしっかり増やしていきたいというのが率直な課題認識です。
今後の目標──AI時代の「次の政治インフラ」をつくる
── 今後の目標についてお聞かせください。
短期的には、これまでと同様に「倍々成長」を維持していくことが必要だと考えています。そのためには、何よりもまず「お客様の課題を解決できるプロダクト」をしっかりつくり、導入企業を増やしながらスケールさせていくことが最優先です。
一方で、政策という観点でも今は大きな転換期にあります。直近では自民党と公明党の連立解消など、日本の政治体制や政策決定プロセスが変わりつつある局面です。
私たちは「新しい政治・行政の仕組みをつくり続ける」ことを掲げているので、「次の時代に本当に必要とされる仕組みは何か」をきちんと定義していく必要があります。
そのために、AIを含むさまざまな技術を活用しながら、R&D的に試行錯誤を繰り返し、社会にフィットする形でプロダクトや仕組みを形にしていく。会社全体として、そうした「次のあるべき姿」を自分たちで描き、実装していける体制をつくることが、大きな目標です。
どんな人と働きたいか──ニッチな領域を「面白がれる」人
── 最後に、採用の観点で「どんな人と一緒に働きたいか」を教えてください。
スキル面の要件はいろいろありますが、それ以上に大事だと感じているのはマインドやカルチャーの部分です。
私たちの事業は、お客様と会って話し、現場に足を運んで課題を理解することが多い領域です。それは、技術職であっても同様です。最短で仮説検証を行うために一次情報を自ら取りに行くことを厭わず、ビジネスサイドと共に「サービスの形」を考えていけるかどうかを重視しています。
プロダクトづくりの過程では、「こうした方が良いのではないか」というアイデアが日々生まれます。それをチーム内で、時にはお客様も巻き込みながらディスカッションし、楽しみながら前に進めていける人と働きたいですね。
人柄の面では、「素直で、いい人」と一緒に働くのが一番だと思っています。お互いの専門性を尊重し、素直にフィードバックを受け止め合いながら成長していける関係性を大事にしたいです。
この領域はある意味ニッチで、分かりやすくはないかもしれません。それでも、政治や行政、政策というテーマに「面白さ」や「楽しさ」を見いだし、そこにしっかり向き合いながら一緒に進んでいける方と、ぜひご一緒したいと思っています。



